寅さんが、どこからか帰ってくるらしい
「寅は、死んだら、地蔵になるんじゃないかな」
あの時、山田洋次監督はそう言っていた。
学生の時、豊橋市公会堂の講演で聞いた言葉。
今、渥美さんはもういない。寅さんはもういない。はたして地蔵になったのかどうかは知らない。どこかでなってるんじゃないかと思ったりする。そうだったらいいなとも。
なんて思ってたら、
寅さんの新作映画が公開されるという。
えっ、もういないんだけど・・・
やっぱり、ほんとに公開されるらしい。
誕生50周年を迎え“50作目”となる新作映画。
『男はつらいよ お帰り 寅さん』
どんな映画になっているのか。
寅さん出てくるの。
そっくりさん?
楽しみと不安が行ったりきたり。
思えば、
学生の時、寅さんが公開されると欠かさず映画館で観ていた。映画館に寅さんを観に行くのは本当に楽しみだったし。
そして、今となっては映画館で寅さんを観られたことってかなり貴重な経験。
その頃を思い返すと、寅さんを映画館に観にくる人は、みんなそうだった。
「スキあらば、笑ってやろう」
「場合によっちゃ、ほろりとしちゃうぞ」
そんな人たちばかりだ。そんな人たちが集まるんだから、上映中は、笑いが絶えない。
泣き笑いの人だっている。
家で観てはこうはいかない。まさに映画館マジック。
そう、みんな知っている。
そろそろ、きたきた、ほらね、やっぱり。
寅さんよくぞ言ってくれた。
そして、 待ってましたと笑う。笑う。
そこが面白い、嬉しい。
もはや伝統芸能のよう。
そして、マドンナはこの人か、寅さんにこんな事件が起きたか、そしておらが街を旅してくれるぞ、なんて楽しむ。
絶叫上映とか声出し上映とか、今 多いけど、本質は同じなんじゃないかな。
見ず知らずの他人が、わざわざ勝手に決められた同じ時間に集まり、同じ映画を観るって、考えてみると、かなり変な空間だ。そんな場所での共有性を高めることも映画館には、もっと必要なのかもしれない。
ほらそのセリフ。この演技。この場面。おおっ危ない!とか。そんなことを映画館中 皆んなで楽しむ。映画の興行としての方向のひとつじゃないかな。
ひょっとすると「男はつらいよ」は、時代を先取りした映画だったのかも。
さて、寅さん。
寅さん50周年イベントで、倍賞千恵子さんに向かって、山田監督からこんな言葉が
「僕らは50年かけて長い長い映画を撮っていたのかもしれないね」。
これほど感慨深い言葉があるだろうか。
これを聞いただけで涙がでそう。(YouTubeで見ただけなんだけど)
もう全員が観ておくべき。
50年かけて撮った映画の(たぶん)ラストを観ておかない手はない。
新作公開(12/27)までにはもう少し時間があるけど、公開になったら、わざわざ決められた時間に映画館へ出向いて観てこようと思う。
地蔵じゃない寅さんを。
(地蔵で出てきたらごめん)
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