アカツキ電光日記_230830

『2001年宇宙の旅』を読んだ 映画で有名な作品ではあるが僕は映画を観ることができないので小説版 映画と小説は同時並行で作られていたようで映画化でもノベライズでもないらしい

もう50年ほど前の小説になるから『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』みたいに登場する未来技術は古臭いおもちゃみたいになっている……のかと思いきや全然そんなことはなく、時代設定が僕の生まれた2001年ということを除けばまだまだ未来小説として読める 作中で数年経過しているから実際のところ何年なのかはよく分かんないけど 妹も生まれてそう

人類の宇宙進出がここ50年であんまり進んでないということもあるだろうが、前書き曰くこの点にアーサー・C・クラ―クは相当気を遣って書いたという話であった 読んだ感想は「スタンダードな物語だな」というものだった、時代が変化しても不朽の輝きを誇るスタンダードを作るのはただ事ではない この手の作品の例に漏れずインターネットとiPadの誕生は予見できていないからニュースパッドとテレビ電話が別物だったりするけど

ここから先はネタバレを含むので知らない方は留意していただきたい とはいえ未読・未視聴でもあらすじぐらい知っている人が多い作品の部類であろうが 結局この話は「上位存在(スター・ゲート)」みたいなのがいて、ヒトがまだサルだった頃にそいつらが道具の使い方を実験的に教えたことで急速に進化しついに月や土星に至るようになった、そしてその「上位存在」が置いたセンサーを人類が掘り当てたので色々が起こって……というものである もちろん超自然的な存在を仮定している時点でSFではあるのだが、現代の科学観念と照らし合わせても大きく矛盾している点はない気がする この辺も50年間名作として語り継がれる由縁であると思う その間に細胞生物学の教科書は5回改訂されているというのに

映画版はよく「難解だ」「ラスト意味分からん」という感想があるらしいが、小説を読んだ限りではそんな印象はなかった いやまあ最後にポッドが土星から亜空間に行って知らん恒星にたどり着いたあたりで想像力が限界を迎えて情景が一切想像できなくなったけど 映画版とは違って冒頭とラスト両方に詳細な地の文があってそこの対比構造がわかりやすいから、サルがヒトになったようにヒトがさらに上の知性に進化したんだなあ、ということがふんわりわかる さっきから「映画版は」とか言ってるけどこれはWikipediaとテレビ番組の特集で培った知識です

実験的に地球からピックアップした存在の時間を巻き戻して胎児にし、そしてそこから元のヒトとは異なる、さらに可能性のある存在を作る……という描写からiPS細胞を想像してしまった スケールは全然違うけどやってることは同じ そう考えるとやっぱりバイオロジーって夢あるな 宇宙に行くのは怖いから自分が進むとしたらそっちの道かな

涙もろいので冒頭でヒトザルが初めて道具を使ったシーンで泣いてしまった こういう「歴史上重大な意義を持つ瞬間」みたいな描写にめちゃくちゃ弱い 俺を泣かせたかったら歴史の厚みに文脈を付けて殴ればいい ソラ参戦とか

時代を遡るとどっかに「全てのヒトの祖先」と「全てのチンパンジーの祖先」の兄弟がいるはずで、そう考えるとすごい話だなあと思う

宇宙SFというものにあんまり触れてきていなかったけど、これぐらいの温度感なら結構読みやすいですね 1作目を読んでだいぶワクワクしたけど実はこの作品には映画化されてないものを含めてあと3つの続編がある 是非読みたい

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