平日の朝にアルバムなんか見るんじゃなかった。
金曜日の朝、布団を畳んだときに見つけた保育園の記念アルバム。
本棚のいちばん端に、他の本に紛れてひっそりと立てられていた。
大学で乳幼児の発達についての授業を受けたのを思い出した。その授業では、子供の発達について説明するときに、ちいさい子どもがいきいきと遊ぶ写真を見せてくれたので、週に一度の癒やされタイムでもあった。
私にもこんな時期があったんだなぁ、とアルバムを開いた。
卒園してから何十年も経ち、保育園の頃の記憶なんて殆ど残っていなかったので、懐かしさはあまり感じなかった。「こんな服持ってたっけ」、「この写真の私、すっごい歯抜けだなぁ」と面白がってページをめくっていた。
最後のページ。そのページには、保育園の先生たちが私に向けてメッセージを書いてくれたものが、寄せ書きのように貼り付けてあった。
「そつえん おめでとう。」
「おしゃべりたのしかったよ。ありがとう。」
「げんきでしょうがっこうにかよってね。」
「また遊びにきてね。」
「あなたのえ、すごく すてきで いつも ちゅうもくしていました。すきなことをきわめて、ゆめをもって あるいてくださいね。」
「おおらかに、のびのびと育っていって欲しいと思います。いつも笑顔ですてきでした。」
「ちいさい子たちのおせわ、てつだってくれてありがとう。とってもじょうずだったよ。」
「自分を大切に。そして友達を大切に。」
クラスを担当してくれていた先生だけではなく、給食室の先生、園長先生、ほかのクラスの先生たちのメッセージもあった。よくおしゃべりしていた先生、あまり関わりがないと思っていた先生、、
それぞれの先生たちが、じぶんの文字で、それぞれの目で見た私の姿をおしえてくれていた。
やさしい字で、卒業したばかりの6歳児でも読めるように、ひらがなで書かれているメッセージが多かったが、漢字を使って書かれているメッセージもあった。この先生は私が大きくなってこのアルバムを見返して、メッセージを読むことも考えてくれているのかな、と思うとなんだか嬉しくなった。
『..私はあんなに小さいときから、こんなにたくさんの人に見守ってもらえていたんだなあ。』
そう思うと、涙が出てきた。
保育園の先生って本当にすごい仕事だ。
どうしよう。もうすぐ出かけないといけないのに。
目から涙が止まらない。
結局その日は泣いたまんまの目で外に出た。
はぁ、平日の朝にアルバムなんか見るんじゃなかった。
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