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センチメンタルな月曜日には、あたしが電話してあげるから。

 ズルくてぬるくてだらしない人。君が猫で私が犬。君はいつもすごい寝癖だらけで起きてきて30分は動かない。いいから早くその左耳に私があげたかわいいピアスをつけて、髪も直して着替えてほしい。そうじゃないと、次の土曜も午前3時が朝になっちゃいそうで。

 人と人と人と人がまだ出会わないことで生きているこの街で、出会ってる?で、合ってる?そんなふうにそっと近寄ってきたのは君のほうだった。

 私はそのとき、寂しい寂しい寂しい寂しいって言ってぼんやり生きていた。誰かに「わかる同じ気持ち」って言って欲しかったのだと思う。だから君に気づかれて近づかれると、私はすごく嬉しくなって尻尾を振った。すると、壊れた宇宙船に乗った無力な寂しい私を君は抱きしめてくれた。君はいつも猫みたいに自由だけど、それもまたそれで寂しい自由に見えた。君はどこか、触るな!と大きな声で言いながら、ただ寂しいってことを誰かに見抜かれたいと願っているような感じだった。だから君は寂しそうな私を拾ったのだと思う。
「こんなところに居たのか」
「やっと見つけてくれたね」
 そんな恋人に出会ったとき、なんだかクリープハイプに出会ったときと似てるなと思った。

 あと5秒。数える広告は全部スキップして、もうめんどくさいからプレミアムサブスクに入った。今二人が可愛い家に一緒にいるということはただの安定した日々の退屈の共有で、ここにあるうちはAメロにも昼ドラにもならないものかもしれないけれど、好きなバンドの新しいアルバムを流しながらメイクをしていたら、それでいいような気もした。

 だからね、それなりにね、幸せに暮らしていよう。

 その夜やけにしらじらしいキラキラ星が願われすぎて困るくらいに空を見上げて、こんな日々がずっと続くようにおねがいごとをしながらスーパーの帰り道を歩いた。

 「いただきます。」

 お茶の間なんて大それた名前では呼べない、しょぼくて可愛い六畳一間の真ん中で、家族になるかもしれない君と晩御飯。
二人で作ると味見ばかりしていつも少し少ないね。でも結局、そばにいてくれたらそれで腹が膨れる。このままそのまま二人でいよう?センチメンタルな月曜日にはあたしが電話してあげるから。

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