ロスト! 忘れられない女性の思い出 #心灯杯
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◇
さっき離陸したと思ったら、早くも機体が下を向く。
あっという間にターコーイズブルーの珊瑚礁が眼下に近づいてくる。機体の影が映る、魚影まで見えそうだ。
双発のプロペラをつけた機体。定員は50名ほどだろうか、アイランドホッピングする飛行機の機内は慌ただしい。着陸(着島)したと思ったら、降りてゆく人々、そして、代わりに乗り込んでくる人々。自由席の機内は、離着陸する度にさざめきたつ。
くそー寝られやしない。
初めての二人きりの海外旅行だ。どのみち緊張で寝られやしないだろう? 自分で自分に問いかける。隣でスヤスヤ眠る彼女が羨ましい。
◇
結局寝られず、目的の島に到着だ。
タラップを降りると、南の島特有のねっとりした風が顔を撫でる。ティアレの香りだろうか、リゾート気分が盛り上がる。
スーツケースを受け取り、ホテルの送迎車を待つ。
あっ!
あの、女性も同じホテルなんだ。
南の島は、カップルの天国だ。そこにひとりで佇む美女は、とりわけ耳目を集める。ツンとした冷たい表情、反対に私はデレっとしてしまう。
女性の感は鋭い、私の視線の先に気づいて、彼女はすぐに不機嫌になる。
「いやいや、独りって珍しいなと思って・・・」
何も言われていないのにオロオロと言い訳が出てくる。
◇
送迎車が到着、車に乗り込むと、そのボブカットの金髪女性は、我々の前のシートに陣取った。席に座ると、キラキラと髪が揺れ、うなじがのぞく。
Oops!
突然、その金髪美女が後ろを見返り、、
オイラ? 視線は合わない、はるか後ろ、空港の建物を見ているのだ。
女性が立ち上り、送迎車の運転手に一言告げると降りていった。どうやらスーツケースを空港に忘れてきたらしい。
◇
しばらくすると、女性が建物から現れた。
どうやら「バゲージロスト」のようだ、手ぶらで車に戻ってきた。席につく前に、我々に向かっていわゆる「shrug」態度をとる。わお。
それを見て、またデレデレしてしまう、車内の男性陣(と、皆仲間にしてしまおう!)、それを見てツンツンが増殖するカップルの片割れ女性陣。
やっと出発する送迎車。バゲージロストのおかげで、タイムロストだ。
南の島にじわじわと夕暮れが近づいてくる。車内にも日差しが差し込み始め、女性の顔にも光が差す。またツンとした何かを考えている表情に戻っている。欧米人なのに、どこか日本人っぽく、過去に会ったことがある女性に似ている。誰だっけな〜
◇
OH!!!!!!!!!!!
女性が大きな声を上げた、ムンクの叫びのようなポーズだ。
なんだなんだ? 今度は・・・
送迎車が、Uターンする。
空港に戻るのだ。
◇
どうやら
「降りる島を間違えた」
らしい
バゲージロスト じゃなかったのだ
あんたが、迷子 あんたが、ロスト かい!!
過去に出会った、女性、1度出会ったきりの女性で
未だに忘れられない、女性の思い出でした。
◇◆◇◆
今回は、「さや香」さんの企画に乗っかりました。(^^♪
「三題噺」には、ほど遠いですが。。
「三題噺」と言えば、若かりし頃、残業をして帰宅、家に帰ってテレビをつけると放送されていた番組、『ざこば・鶴瓶らくごのご』を思い出します。古い話題ですいません。。
(おしまい)
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