#12 酩酊記 其の弍
※注意※
この記事は、少なくとも1年以上前に書いたものだが、公開する前に見返すとなんだか恥ずかしくなってしまい下書きに留めておいた物である。
少し手を加えてあるが、いずれにしてもいつも通り粗末な文章であることをご容赦願いたい。
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俺は高校卒業後、福岡の専門学校に通っていた。
今までに無いくらい沢山の友達が出来て、
その愉快な仲間たちと、面白い先生達と、都会の環境とに囲まれ、それはそれは楽しい2年間を過ごした。
(俺は「研究生」という制度でもう1年その環境へ身を置いたので、正確には3年、かな。)
今でもバンドをやってるやつ。
音楽関係の仕事に就いてるやつ。
趣味で音楽を嗜んだりといったやつらもいれば、全く別の世界で戦ってるやつもいたり、連絡先が消滅したやつもいたり。
それぞれバラバラだが、今も連絡出来る距離感の友達は、共通して「周りに流されず、自分の世界で人生を楽しもうとしている」みたいな感じがして、皆大好きだ。
悪く言えば、環境が変わっても大人になれず時が止まったままの社会不適合……予備軍…みたいなものかもしれない。
今でも福岡に住んでる奴がほとんどで、ちょこちょこ顔をだしては、遊んでもらっている。
感謝。
俺のバンドSleeping Girlsに「DEER」という曲がある。
タイトルの意味はずばり「鹿」である。
鹿は基本奥手だが、慣れるとめちゃくちゃ馴れ馴れしいらしい。
“動物性格診断”なるものをやった時、俺がそれに該当し、そこから作った曲だ。
その曲の歌詞にもあるが、俺の性格上、仲がいいからと言って頻繁に連絡を取る訳では無いし、友達側もそういった奴が多い。
別に線引きは無いが、「親友」と言えるくらい大切な人でも、年1回、会えればいい方…みたいな。
ただ、どっかしらで繋がってるんだろうなーと、思っている。
そういう形なのだ。
専門時代、同じボーカル学科に所属していたとても仲のいい友達がいる。
仮にY君としよう。
先日、酔った時に何気なく久しぶりにY君に連絡を取り、そのまますぐ日取りを決めて飲みに行った。
在学中ずっと一緒にいた、という訳じゃないけど、
趣味嗜好、ノリ、物事に対する感覚が近くて、多分お互い居心地が良く当時から仲が良かった。
今ふと思い出した、我々の関係性を分かりやすく説明するエピソードを1つあげよう。
専門1年生の夏休み、俺はMCバトル番組「フリースタイルダンジョン」に激ハマリしていた。
まるで格闘ゲームの様に、様々なラッパー達がそれぞれの持ち味を武器に、マイクを通してお互いを罵り、自分を主張し、対決する。
こんな映画みたいな世界が本当にあるのか、と俺は目を輝かせていた。
そこから、日本語ラップが好きになり、バトルの動画を見ては音源を聴き漁った。
ボーカリストとしても、リズムを生み出しながら歌うラップのスタイルはたいへん勉強になる。
中でも私の心を撃ち抜いたのは、名古屋のラッパー「呂布カルマ」氏だった。
出会いはMCバトルではなく、「俺の勝手」という楽曲で、それに喰らった。
https://youtu.be/onTKv0A44PA?si=eVCHO5KdyewEpGRX
圧倒的強者、でもどこか切なさも感じるリリカルな言葉で構成された歌詞、理路整然としたスタイル、枠に囚われないオリジナリティ、まさに孤高の王者の風格、SICKMAN共のカリスマ。
ビートも不穏でアングラな匂いが漂う。
どの曲もめっちゃカッコイイ。
今では多方面で大活躍されているが、当時まだメディアの露出は今程では無かった。
当時、何も知らない俺の「ラッパー」に対するイメージといえばやはり、
「おいスプレー持ってこい商店街の壁にグラフィックアート書こうぜ俺たちストリート出身悪いやつは大体友達!地元レペゼン!YO!卍卍ィ!」
みたいな感じだったので、呂布カルマ氏に出会った時のミナギは、そのイメージとはかけ離れなんともインテリジェンスで整然としたシニカルなスタイルに、
「なっ…なんじゃこりゃあ!」
と目を輝かせた。
しかも、呂布さんが代表を務めるレーベル「JET CITY PEOPLE」の名前は、俺がバンドを始めたキッカケとも言えるバンド「BLANKEY JET CITY」に由来しているのだ。
好きな物は、不思議と繋がっていく。
俺はハマりにハマった。
当然、今もめちゃくちゃにファンである。
影響を受けやすい俺は、それまで基本Tシャツを着ることが多かったが、呂布さんの真似をして柄シャツを着るようになった。
古着屋を巡っては、安物の柄シャツをひたすら買い集めていた。
そして夏休み明けた登校初日。
俺はとびきりお気に入りの柄シャツで登校した。
皆久しぶりに会う気がするな。
そうだ、Y君にも呂布さんを教えてやろう。彼の事だ、きっと好きになり一緒にハマるはずだ!
そう思いながらルンルンと教室へ向かった。
Y君は、俺より先に学校に着いていた。
一際派手な柄シャツに身を包み、髪型はオールバック、真っ黒なグラサンをつけ、1人ポツネンと教室の椅子に座っていた。
よう、お久、と挨拶するやいなや、
お互いを見合って、一言。
「お前も?」
Y君は色々あって途中から学校に来たり来なかったりな状態になり、あまり頻繁に会わなくなった。
でも、その「色々」をお互い別に聞こうとも言おうともしなかった。
会えば、久々やねー、最近どう?くらいの感じだ。
その距離感が、ちょうどいいのだ。
(ちなみに、Y君は結局単位が足りず一緒に卒業する事が出来なかったが、堂々と卒業式と謝恩会に出席し我々と教師陣の度肝を抜いた。
あまりの納得感に、Y君が実は卒業してない事に誰も気づいてなかったが、謝恩会の途中で気づいた担任の先生が軽く焦りだしたものの、「…まあいいか。もう呑んじゃってるし。」と酒を片手に諦めたのも、印象深い思い出である。)
まあこんな具合で、感覚が似ていて話していると楽しい、なかよぴズッ友なのだ。
自然とお互いがお互いに寄せあっていた気もするが、音楽や本は勿論、好きな芸人、好きなグラドルまで、共通してる物が多い。
多分あいつは鉄拳でもヨシミツかデビル仁を使うし、ほねほねザウルスなら8種類中1つ入ってる「ほねほね忍者」とかの人型のやつを毎回狙って買うに決まっているのだ。
さて、飲み会当日。
いくら仲が良かったと言えど、我々の性格だ。
久々に会うとなると、妙に緊張する。
在学中「学科飲み会」みたいなイベントがたまにあったが、『学校以外の場所でクラスめゐとの皆と会って酒を一緒に飲む』という行為が妙に落ち着かず俺もY君も何故か緊張してしまい、
結果「早めに2人で集まって居酒屋で事前に数杯引っ掛け気を紛らわしてから向かう」といった行動を良くとっていた程の、人見知りちゃんコンビなのだ。
この距離感でも、会ってなかったブランクを埋めるにはある程度アイドリングが必要なのである。
駅で合流、「久しぶり」等とぎこち無く言いつつ、お互いギクシャクしながら逃げ込む様に馴染みの居酒屋へ入り、そそくさと注文してからゆっくりと飲み始めた。
なにしろちゃんと会うのは数年ぶり?くらいだったので、お互い環境もそこそこ変わっている。
もつ鍋をつつきながら、最近どう?とお互いの身の上を話したり、聴いたりした。
当然の事なのだけどY君は会わないうちに色々な経験をしていた。
あの頃よりもクールで落ち着き払っていて、なんだろう、なんだかとてもめちゃくちゃ色っぽかった。
ちなみにY君はかなり美形で、俺の周りにいる人間の中ではトップレベルにイケメンの部類の人間である。
しかしここで感じた「色っぽい」は、どちらかというと人間的な魅力の方の「色っぽい」であった。
お互い当然、生きてる分歳を重ねたのである。
あの頃とは色々変わってしまった事が、少し寂しい様な、でも歳を重ねてこうしてまた会えた事の嬉しさの裏返しのような、絶妙な温かさをつまみに酒を飲んだ。
実に在り来りな感想なのだけど、
「なんだか大人っぽくなったな。」
と、思った。
まあわざわざ言うことでもないか、と少し恥ずかしくなりつつもつ鍋に気を戻した直後、Y君から
「君、なんだか大人っぽくなったねぇ~」
と言われた。
お互い実に在り来りな
「久しぶりに会う友達」なのだな。
ガハハ!そういうお前こそ!と笑ってしまった。
2件目からは他の友達も合流した。
同じ大分出身の、当時ベース学科にいた奴。
常識人だが少し(かなり)癖のある奴で、音楽がすごく好きでとても詳しく、いつも色々と教えて貰っている。
とてもフッ軽で、連絡すると余程のことが無い限りすぐ逢いに来てくれるので、なんだかんだ1番会っている。
あとは、鹿児島出身のボーカル科の男。
こいつは見た目があまりにイケイケなので入学当時は絶対に仲良くなれない、と思っていたが、中身は見た目ほどイケイケではなく、同じ学科であるしよく遊んだ。
イケメンなのだが、なんというか、所謂「九州男児」って感じのやつである。もし次会った時一人称が「おいどん」に変わっていたとしても、特に突っ込まない様な気がする。
こいつも会うのはかなり久々であった。今は音楽と別の世界で戦っている。
激安の居酒屋で4人ケラケラと笑いながら酒を飲んだ。
小1時間程滞在し、鹿児島のおいどんは帰宅。
3人で次の店へ。
激安の居酒屋の酒は、ほぼ水である。
そのせいでそこまで酔ってはいなかったが、3件目ともなるとテンションは高い。
お通しのきんぴらごぼうがあまりに美味い、という話題で前半は持ち切りだった。
そこそこ飲んだ一同は、最後に「酔っ払って誰かに電話をかける」という最低最悪の行為に手を染め、結果それに引っかかってしまった久留米に住むフッ軽の友達(こいつはギター科であった)を呼び出し、店を出た後最後はそいつの運転で海に行った。
朝までとことん!という飲み会も好きな人となら実に楽しいが、こういうのも悪くないなー、と男3人で糸島のインスタ映え(ばえ)スポットを散策した。
真っ暗なので当然映えない(ばえない)し、恐らく明るくても我々では映えない(ばえない)。
日が昇る頃に解散、帰路へ着いた。
いやー、久しぶりに遊んだ!と言う感覚であった。
別れ際「またすぐ会おう!定期的にやろう!」と皆言ったが、多分暫くまた会わないんだろうな、と思った。
海に行くまでの車内で、Y君とずっと音楽の話をしていた。
最近新たに聴いているものや、共通して好きなバンドをとことん語っていた。
ふと途中で、Y君が
「いつも2人で飲む時こんな話ばっかしよったけど、久しぶりに会ったらもうこんな話にもならんかなーって思いよった。全然んな事なかったね」
みたいなことを言った。
良くも悪くも、変わんないとこは変わんない、変われないし変わりたくないのである。
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追記
また暫く会わないのだろうと思われたが、
この日を境に、ホントにちゃんとちょこちょこと会うようになった。
見出しの化け物みたいなブレ写真も去年末飲んだときのもので、左が記事中に出てくる大分のベーシストの友達、真ん中は不明、右側の鬼ころしフレッシュを咥える男性が俺だ。
俺が福岡にライブに行けば皆見に来てくれるし、
仲良くしてもらってる九州外のバンドが福岡に来る時などに、ライブへ会いに行きがてらそのまま数日滞在して皆と会う、という事もよくある。
当時の俺は文中に俺たちの事を「社会不適合」と書いているが、実はそんな事もないのだ。
あれから就職したやつもいるし、俺含め皆意外と「普通にしろ!」と言われたら案外普通に生活出来る気もする。(多分)
それでも、まだ若い時分であるし、やりたい事がある内はソイツを優先させて欲しい、ってな心持ちの奴の集まりだ、と書きたかったのだと思う。
それぞれ風当たりは年々強くなるが、1度きりの人生である。
「社会不適当」くらいで、許してはくれないだろうか。
呂布カルマ氏の「眉唾」という楽曲のリリックに
という節がある。
適合できるか、ちゃんとしてるかどうか、
本当はそんな次元の話ではなく、
自分のやってる事に自信が持ててるかどうかだな、簡単なようでむつかしいよなぁ、と思う。
そもそも「社会不適合」なんて、簡単に口走るもんじゃない。
ちょっと出来ないってだけの自分に、わざわざ名前を付けて言い訳するのはみっともないぞ、と、この時の俺やウジのように沸くZ世代の野郎共に言ってやりたいものだ。
なんて事を考えながら、
今日も一日適度な出来の仕事をテキパキこなし、敵を作りながらも適応して生きてるのである。
上手く締まったな……え?無理矢理?適当?
テッキリ的確で適切なうまいこと言ったかと。
手厳しいなあ。
テキーラでも持ってきーや!
…ここまでくるとダジャレである。
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Sleeping Girls 「歩道橋」最新MV!⬇
https://youtu.be/A5o0JYa_4Vw
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https://youtube.com/playlist?list=PLV2-Ef0QpSn-N7VD7qbfPaP9L7hlXbvAk
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