健全果でワインを造る、の例外
ワインの生産者がほぼ全員、口を揃えて言うことがあります。それが、健全なブドウだけを使ってワインを造っている、というものです。ある程度以上の価格帯のワインであれば必ずといっていいほどよく聞くフレーズですし、生産者のこだわりのポイントでもあるので、この記事を読んでくださっているみなさんも耳にされた回数は少なくないのではないでしょうか。
それだけ頻繁に聞くと、むしろ多くの方がこう思われると思います。
「ワインは健全果のみで造るのが当たり前である (らしい)」。
これは基本的には正しい考えです。特に「健全果」の対義語を「腐敗果」として捉えてしまえば、腐敗したものを食品の原料にするなんてとんでもない、となります。健全であることが当然の視点からは、健全であることは特別なことではなくなります。つまり、健全であることが当たり前になります。
でもこの当たり前、意外に当たり前ではないかもしれません。
ここから先は
2,393字
ありがとうございます。皆様からの暖かい応援に支えられています。いただいたサポートは、醸造関係の参考書籍代に充てさせていただきます。