東京五輪と波物語
東京五輪、パラ終わって少し経ちます。
私は東京五輪が終わった直後は「開催してよかった」と考えてたんですよ。
理由は日本が金メダルをいっぱい取ったからでも、感動したからでもなく、ただ単純に、昨年猛威を振るった「自粛警察」が表向き消えたように感じられたからです。
おかげで大型イベントやコンサートを開いてもいい空気になったし、ありがとう東京五輪、という気持ちでいっぱいでした。
しかし、また気が変わりました。
理由は先日行われた愛知県のフェス「波物語」にて、密な行為や飲酒が目撃され、あっという間に炎上し、またイベントやコンサートが開けない空気になったから。
確かに波物語の主催者については褒められたもんじゃありません。
自治体の指示や要請を無視し、公式サイトで虚偽の釈明を行い、批判されると逃亡する、イベント運営の資格が問われることは間違いないわけですし。
結果的にクラスターを発生させてもいます。
しかしそれは東京五輪も同じなんですよ。
東京五輪、パラのコロナ感染者数は863人、これは判明している波物語の感染者の20倍以上。
五輪終盤には選手村でクラスターも発生させています。
またマラソンでは路上に密を発生させ、行動ルールにある禁止行為で処分を受けた人も30人以上。
政府筋を含めた、そこらへんに対するごまかしだらけの弁解も問題です。
ここだけ見れば、波物語と質的には変わりません。
もちろんこのへんの事実はきちんと報道もされているのに、なぜかそこまで大騒ぎにならなかったんですよ。
それはなぜか。
客観的事実よりも気分や世間の空気が重視され、叩くべき対象は無限に叩いていい、そうしたコロナ渦の世相に波物語は飲み込まれてしまった、そういうことだと思います。
東京五輪は日本人が金メダルを取った、感動した、だから何があっても許す。
波物語は許さん。ヒップホップはいけ好かないし、主催者の素性も気にくわん。だから叩く。
こういう人が多いんだと思います。
お前はいったい誰の味方なんだよ、と思われそうですが。
私は自粛派でも経済回せ派でもなく、東京五輪は競技自体をいっさい見ておらず、ヒップホップにも興味はないし大型フェスの類にも行きません。
波物語の存在自体騒動になってから初めて知ったし、ぶっちゃけ出演者も一部除いてまったく知りません。
簡単に言うと「スポーツだけえこひいきすんな」派です。
スポーツは正しく立派な行為と教育的に定義づけられ、子供のころからその価値観で育つ。
学校ではスポーツ部活が推奨され、企業でもスポーツ経験者は優先的に採用され、実業団は企業の広告塔になる。
同じエンタメでも音楽や演劇や文学はこうはいきません。
基本音楽や演劇や文学の従事者なんて世間的にはアウトローです。ヒップホップなんてその最たるもの。
故にスポーツにまつわることはどんな問題が起きていても「正しいことに違いない」というバイアスがかかってしまうんですよ。
体育会系に代表される間違った根性論や、ブラック部活の問題も見て見ぬふりをされています。
特に「勝てば官軍」とばかりに、勝利で問題をなかったことにする風潮は問題です。
暴力事件を起こしても新天地でホームラン打ったら美談にしてしまう。
そういう変なローカルルールがスポーツ界を覆っています。
五輪が許されたのも、結果的に日本が勝ったからでしょう。
しかし考えてみてください。
「勝てば何でも許す。感動したから許す」てんなら、波物語だって許されないといけないはずなんですよ。
動画見る限り、ステージは盛り上がってたし観客も楽しんでたじゃないですか。
「問題もあったけど、ステージは感動した」ぐらいの意見も出てきてもいいはずなんです。
それが許されないってことは、まだまだスポーツだけえこひいきする風潮が残ってるってことです。
スポーツの価値が相対的に、演劇や音楽や文学と同等のものになってほしい。
何も波物語並に五輪が叩かれろ、と言ってるんじゃなく、全部が適度な敬意を社会から向けられるようになってほしいと思います。
まあこれは「スポーツしか(エンタメを)理解できない大人」が多すぎるからだと思われますが。
少なくともいろんなエンタメに子供のころから触れている若い階層は、スポーツえこひいきの風潮に飲まれないでいてほしい。
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