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ツバメを見送って秋分を待ち名月を愛でる(テキスト)


9月第2週の「食とココロの処方箋」

昨日、散歩の途中で、金木犀が咲いているのを見つけました。

今年は季節が進むのが早いのでしょうか、ずいぶん早く咲いたような気がします。

姿が見えないのに、どこからともなく漂ってくる金木犀の香り。

こんなに遠くまで香る花というのもなかなかないのではないでしょうか。

この香り、中国では、「千里先まで届く香り」という意味で、「千里香」と呼ばれていたそうです。

花言葉は、「謙虚」「気高い人」「真実」「陶酔」。

「気高い人」「陶酔」は、あの芳しい香りにぴったりのイメージですし、「謙虚」というのも、香りからは想像できないくらい控えめで小さい花を咲かせるところが、なるほどと思いますね。

ちょっと風流に、秋の夜長とお月見の話題をお届けします。


今週の暦です。

一年を24に分けた二十四節気と、さらに三分割して72に分けた「七十二候」をご紹介しています。

二十四節気は、9月22日まで「白露(はくろ)」。

七十二候は、9月12日から17日まで「鶺鴒鳴(せきれい なく)」、セキレイが鳴き始める頃、18日から22日までは「玄鳥去(つばめ さる)」、渡り鳥である燕が南の国に飛び去って行く頃です。

セキレイ、ツバメ、鶏、ウグイス、スズメ、雁(がん)、鷹…、七十二候には鳥がたくさん出てきます。

今回の「玄鳥去」は、4月の始め、「清明」の頃の「玄鳥至(つばめ きたる)」と対になっています。

春は、ツバメがやってくる「玄鳥至」の少し後に、冬鳥である雁(がん・かり)が北へ帰る「鴻雁北(こうがん かえる)」。

秋になると、ツバメが南へ去って行く「玄鳥去」、その後に雁がやってくる「鴻雁来(こうがん きたる)」。

ツバメと雁が入れ替わりにやってくる、春と秋の風物詩です。

ツバメの別名は、玄米の「玄」に「鳥」と書いて「玄鳥(げんちょう)」と言いますが、玄は「黒」のことで、「黒い鳥」という意味です。

ツバメの尻尾のように裾が長く二つに分かれた上着を、燕の尾と書いて「燕尾服」と呼びますね。

ツバメの尾の羽はオスの方が長く、長いほどメスにモテるらしいです。

飛んでいるツバメを見ても、速すぎてどれがオスかメスかも見分けがつきませんが、そういう目で見てみると面白いかもしれませんね。



二十四節気、「白露」の次は9月23日から「秋分」。

「秋分の日」で広く知られている、二十四節気の中でも最もメジャーなものの1つです。

昼と夜の長さがほぼ同じになるという秋分の日、今年2021年は9月23日です。

東京での日の出は朝5時29分、日の入りは午後5時37分。

ほんの少しだけ昼の時間が長くなっています。

秋分の日は毎年決まった日付ではなく、国立天文台の算出した秋分日を基に、正式には前の年の2月に決められるそうです。

地球から見た空を「天球」という1つの球体に見立てると、地球から見たときの太陽の通り道が「黄道」。

実際には、地球が太陽の周りを回る通り道のことです。

この黄道と、赤道を天球上に延長した「天の赤道」が交わる点が2つあって、その1つが「秋分点」です。

この点を通過する瞬間が「秋分」で、暦ではこれを含む日を秋分の日としています。
(もう1つが「春分」ですね。)

実際に昼と夜の差が一番小さいのは、秋分の日よりも4日ほど後。

ここからはだんだん日が短くなり、夜の時間が長くなってきます。

秋の夜長、昔の人のように月を見てゆっくり過ごす夜はいかがでしょうか。


次のコーナーです。

今週は、十五夜にちなんで月の話題をお届けします。

旧暦の8月15日は「中秋の名月」「十五夜」、2021年は9月21日。

俳句の中で「月」といえば、秋の月のことを表すように、秋は月が一番きれいに見えるといいます。

空気が澄んで、月がいちだんと美しく輝いて見える秋。

空に登ったときにも、見上げるのにちょうどいい高さなのだとか。

暑くも寒くもなく、外で月を見て過ごすにもいい季節ですね。

松尾芭蕉が詠んだ「名月や池をめぐりて夜もすがら」という句がありますが、美しい満月を見ていると、時間が経つのも忘れてしまうようです。


お月見といえば、ススキと丸い月見団子のお供え物がありますね。

ススキは秋の七草にもなっており、昔から魔除けにもされてきました。

お月見にススキをお供えするのは、月の神様を招くための依り代と考えられています。

月見団子は満月を模っていて、豊作と健康への願いと感謝をこめて供えられます。

この頃は里芋の収穫の時期でもあるので、里芋も供えられ、「芋名月」とも呼ばれています。


昔から月を愛でてきた日本人。

曇ったり雨が降ったりして、月が見えないこともありますよね。

それにさえ、「無月(むげつ)」「雨月(うげつ)」という名前がついていて、雲の向こうにある見えない月に思いを寄せる昔の人の気持ちが感じられます。
十五夜の後はだんだん月が昇ってくる時間が遅くなってくるのですが、それにも名前がついているのをご存じでしょうか。

十五夜の翌日は、十六夜とかいて「いざよい」

「いざよう」はためらうというような意味で、十五夜より少し遅れて、ためらうように出てくる月のことです。

翌日の17日の月は、立ち話をしているうちに登ってくる「立待月(たちまちづき)」。

18日はゆっくり座って待つ「居待月(いまちづき)」

19日は寝室に入って寝ながら待つ「臥待月(ふしまちづき)」

20日になると夜が更けるのを待って昇ってくる「更待月(ふけまちづき)」。

だんだん昇るのが遅くなる月の出を待つ感じが伝わってきます。

お月見といえば満月に近い十五夜が有名ですが、古来日本では、旧暦9月13日の「十三夜」も美しい月として大切にされてきました。

中秋の名月の後なので、「後(のち)の月」、豆をお供えするので「豆名月」とも呼ばれます。

中秋の名月は中国から伝わった風習ですが、十三夜は日本独自のものだそう。

まん丸ではないところに美しさを見出すあたり、日本らしいような気もしますね。

2021年の十三夜は、10月18日です。

中秋の名月と併せて見る「二夜(ふたよ)の月」。

ひととき電気やテレビを消して、空を見上げてみるのもいいのではないでしょうか。

晴れるといいですね。




産業医 櫻庭千穂 食とココロの処方箋はレインボータウンFMにてオンエア中です。

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