楽屋で、幕の内。|チェック、ダブルチェック Nov.18

前回の「ガク幕」(と愛称をつけて呼んでいただいている方もいるそうで…ありがたや!)で陽子さんが映画の話を書かれていたので、私も編集者として観た印象的な映画「クライマーズ・ハイ」の話を。


2008年の邦画で、主演は堤真一さん。御巣鷹山日航機墜落事故をめぐる地元新聞社の葛藤を描いた作品だ。日航機墜落事故については、高校の先生がこの飛行機に乗る予定だったという話を聞いたことがあり知ってはいたが、事故の具体的な内容はこの映画で初めて知った。

ちなみに、今や国民的俳優となってしまった堺雅人さんが準主役。この時は売れかけくらいの時期で、話題作にどんどん出演していた。私もファンになって少し経った頃だったかな。ちょうど勤めていた会社を辞めて夫がいる沖縄へ行き、さあこれからフリーランスでやっていかねばと思っていた時に観た映画だった。

私は雑誌(その頃は教育系の編集でしたが)畑なので、新聞社とはまた少し違うが同じく「情報を読者に伝える」という立場で、共感することや考えることが多い作品だった。

(ネタバレになるが…)中でも印象的だったのが、全権デスクを任命された悠木(堤真一さん)のセリフ「チェック、ダブルチェック」。スクープになりそうなネタを得た編集部だったが、ギリギリまでその裏が取れず。裏が取れないまま、そのネタをスクープとして掲載するかどうか。出せば、一大スクープとして地方新聞社が注目を浴びるのは間違いない。葛藤する悠木が発したのが、この言葉だった。

結局「ダブルチェック」できない(つまり裏が取れない)ネタを見送るという結論を出した悠木。翌日そのネタは、別の新聞に掲載されていた…という結末を迎える。

「あのまま、掲載すればよかったのに」と思う人もいただろうなと思ったけれど、当時の私は「自分も悠木の立場だったら掲載は見送っただろうな」と共感した。

編集者の仕事は、企画を立てたり取材に行ったりという一見華やかでクリエイティブな仕事に見えるが(実際そう思って、編集者になった 笑)、実は事務的な仕事や雑用的な仕事も多い。記事の内容によっては、「事実かどうか確認を取る」のも大切な仕事だ。それを怠り、「事実でなかった」ときの媒体が受けるダメージを考えるのも編集者の仕事だと思う。「情報」を扱う新聞、雑誌どちらも「確認」はとても大事なことだ。

そして、この「確認」を意外とおろそかにする編集者が多いということも、事実。私の経験上、ミスの大半はこの「確認不足」だ。

私は今でもチェックする時、いつもこの悠木の言葉を思い出す。

「チェック、ダブルチェック」。


これからも、大事なことを忘れないための自分なりの“おまじない”として、心の中でつぶやき続けていきたいと思う。

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