【ネタバレ】"FILM RED"は「哀しき早とちり」【感想】
どうも、前回ぶりです。ヨフアルと申します。
遅ればせながらようやく見ることが出来たワンピースの映画「FILM RED」の感想noteとなります。
結論から言うと今作のストーリーは
「外の世界を知らな過ぎた少女が起こしてしまった盛大な哀しき早とちり」です。
ひとつひとつ話していきましょう。
・世界的な歌姫「プリンセス・ウタ」
予告編からがっつりと言われていたシャンクスの娘という触れ込みでしたが、大方の予想通り義理の娘でした。
話の展開としては世界的な歌姫である彼女にルフィたちが招待され、そのライブを観覧するというところから始まります。
ライブが始まるとウタの不思議な能力で次々と現れるお菓子やオモチャ。
何かの悪魔の実の能力か?と訝しがる麦わらの一味。
その途中、海賊が乱入したり、ビッグマムの子供らがウタを誘拐しようと目論むがこれまたウタが不思議な能力で彼らを磔に。
ここから少しずつ不穏な気配が出てきます。
ライブをあらかた見て満足したルフィはもう帰ると言うが、ウタは帰さないという。
ここで初報の時から散々目にしていたこの画像の台詞ですね。
彼女がライブしていた音楽の島国「エレジア」はウタが子供の頃にある海賊によって滅ぼされたことを知る。
その海賊とはあの"赤髪のシャンクス"であった。
ここからは物語の核心である話です。
エレジアが滅んだのは赤髪海賊団の略奪によるもの…ではなく、
幼いウタを利用した「トットムジカ」という世界を滅ぼせる力を持つ怪物(作中では「魔王」と呼ばれていた)が起こした事件です。
それをウタに伝えるにはあまりに酷だということで、シャンクスはその罪を全て被ります。
ゴードンもそれを受けて根回ししたことでウタはエレジアを滅ぼしたのはシャンクスだと思ってしまいました。
ですが、この一件は事件の引き金ではありません。
なぜなら、ウタはそれを全てわかっていたからです。
シャンクスの真意を最初から理解しつつも今回の「新時代」を起こそうとした理由。
それは、民衆の何気ない言葉でした。
「海賊嫌い! いなくなってほしい!」
「ウタちゃんの歌をずっと聞いていられる世界に行きたい!」
…そんな言葉でした。
「ONE PIECE」を見ている人なら今更話すまでもないことですが、
ワンピースの世界は北斗の拳もビックリな世紀末な世界観です。
世界政府に納税できなければ人権がない。
殺されても奴隷にされても文句が言えない。
そんな世界です。
フィクションなので現実の価値観に当てはめるのも難しいですが、
そんな世界でもたくましく生きているのがあの世界の住民です。
なので、この辺りの言葉も切実な叫びというわけではなく、
「あー、仕事だるいな」
「学校行きたくねー」
「一生、ゲームしてたい」
「永遠に遊んでいたいわ~」
…など、私たちが現実でもよく言ってしまう愚痴や冗談などと同じような人もいたのだと思います。
それは、ウタワールドに隔離された
「外の世界にやり残したことがある」
「学校行くの楽しいし」
「ずっとここに居させられるのは困る」
…という、住民の言葉からもわかります。
ですが、ウタはその言葉を全て真に受けてしまいました。
ウタが世間知らずなのは最初から丁寧に描写されていました。
5番目の皇帝のルフィの存在を全く知らず、ロッキーポート事件の英雄のコビーも知らず、ローの悪魔の実の能力にも「外の世界には色んな能力があるんだね」と激しく驚いていました。
海賊も仕事も世界も何もない、理想郷に連れて行ってあげようという純粋な気持ちから外の世界を知らな過ぎたゆえに起こってしまった「自分の命」をもかけた盛大な早とちりだったというわけです。
哀しきすれ違いとしか言いようがありません。
シャンクスが差し出した薬を飲まなかったのはこれに気づいたウタが贖罪として死を受け入れたからということでしょう。
しんみりしすぎるのはワンピースらしくないのはわかるのですが、ルフィがチラリとシャンクス(とウタの亡骸)を見て何かを察したように海賊王に俺はなる!の一言で〆てENDですが、あまりに救いがなさすぎてお辛い…
……と、言ったところで本作の核心の迫る話は終わりです。
ここからは細かい感想をぽつぽつと。
・サンジがネズキノコを捨てる
これは見たときは気づかなかったのだけど感想ツイートを漁ってて気づいた。見てる時は「キノコだから捨てたのかな?」としか思わなかったけど考えてみればサンジの性格からして食えるものを捨てるわけがない。
「ネズキノコがやばいものである」という伏線だったのだろうか?
・トットムジカの最後の攻撃で出たルフィの形態
恐らく「ニカ」の覚醒能力かな? これには驚いた。
この映画が発表されたのはヒトヒトの実・モデル「ニカ」の話が出た直後くらいだったからです。
だから、映画を見てる時も「あー、この映画はバウンドマンしか出ないんだろうな…ニカ見たかったなー」って気分を一気にひっくり返されて良い意味で予想を裏切ってくれました。
・ウタの歌声
公開直後に「Adoの歌ばかりで内容薄い!」って感想が多く見受けられたけど、まぁ、気持ちはわかる…ってくらいには多かった。
ただでさえ、女史の声は人を選ぶ歌声なので余計に。
ただ、個人的にはほとんど気にならなかったかな。
展開が目まぐるしく動いて飽きさせない工夫がされてた。
「逆光」が流れるところは戦闘シーンの作画の良さも相まってもっと聴いてたいと思ったくらい。
序盤の過去編くらいまでは退屈に思うところもあったけど、ウタが本性表してゲス顔してくれるところは最高だった。
女の子のゲス顔大好き。
非常に楽しんだ本作だけど引っかかる部分がないと言えば、そんなこともありません。
・ネズキノコの都合の良さ
トットムジカの楽譜に並ぶ本作の重要アイテム。
「食べた者は眠れなくなり、(作中の描写から考えて)数時間後には絶命する」という恐ろしい毒キノコです。
サンジの話によれば他にも麻薬中毒的な症状もあるらしい。
豪水といいエネルギーステロイドといい、あの世界はこんなんばっかか…
ウタワールドは使用者本人が寝てしまうと解除され、使用者が死ぬと閉じ込められるという設定があるのでウタは昏睡など眠らずに自殺することでルフィたちを理想郷へ隔離しようと企んでいました。
ネズキノコはそれを一挙に解決してくれるアイテムというわけです。
…いささか都合良すぎないか?
このアイテムが登場すること自体は別に構わないのですが、死ぬ副作用は最終的にウタを退場させるためにつけたとしか思えない設定です。
それなら最初からウタを「病弱で長く生きられない」とかそういう方が悲劇的な要素も強くなって良かったのではないかと思ってしまった。
長く生きられないからこの辛い世界を生きる住民を理想郷に連れて行ってあげようという流れも思い浮かぶわけで。
もっとも、病弱設定にしてしまうと今作のような快活なウタが見れないのでそれはそれで…とも思う。
尾田先生は暗い女より明るい子が好きなのでこのような形になったことには納得がいく。
・総評
前回レビューした
「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」に並ぶ傑作だと思います。
ただ、それと同時に人を選ぶ作品です。
「RED」を楽しむにはある程度のワンピースの知識とウタが好きになれることが必要です。
逆に言えば「ウタ」のキャラが好きになれるならめちゃくちゃ楽しめると思います。
ワンピースの映画を劇場に見に行ったのは「呪われた聖剣」以来でしたが本当に楽しめました。
まだ見てない人は劇場へ急げ! プリンセス・ウタ可愛いぞ!!
前回の映画レビューはこちら↓
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