「理由なき衝動に突き動かされた旅」与那国島最終回 電動自転車の旅を人生に例えてみた+与那国島を訪れる人たちの特徴
いよいよ今日で与那国旅が終わる。
今朝も、「シロガシラ」の「キュッコロキュー」と言う鳴き声で目が覚めた。
時間はやっぱり6時だった。
与那国最後の朝。飛行機は11:25発。空港までは電動自転車で20分くらいだろう。そう思ったら、朝陽を見たくなって自転車で2分くらいの「ナンタ浜」に行ってみた。
そこには、先客がいて若いカップルが手をつないで朝陽が昇る様を見ていた。
私は、邪魔をしないようにそっと後ろから、彼女たちから離れた海辺に向かう。
海は透明で、砂は白く、雲はあるものの朝陽が昇っている。
聞こえるのは、波の音だけ。なんてロマンチックなんだ。なんて美しいんだ。
カップルもきっとそう思っていただろうが、1人でも同じことを感じる。
そして思った。
こんな景色をしばらく眺めていたら、自分の悩みなんてどっかに消える。
消えなくても、なんとかなるような気がしてくるし、なんとかしようという気持ちになる。
朝陽はやっぱり前向きにしてくれる力があるように思えた。
夕陽はなんとなくもの悲しい気がする。ああ、1日が終わってしまう、と思い、実際に太陽が沈んだ後は闇だ。
1日を人生に例えた人がいた。
朝は新しく生まれ変わっている。昼が最も若く、活動的な時間で、夜は一生の終わり。眠りは=死である、と。
ただ、本物の死と違うのは、生まれ変わるために眠るらしい。
そんな文章を思い出すくらい、朝陽の美しさから力をもらった。ああ帰りたくない。
たった3泊4日の旅だったのに、果たして帰って日常生活に戻れるんだろうか、という不安さえも感じている。
思えば与那国で出会った観光客の人達に、一つの特徴があったことに気づいたので、最後にそれを記しておこう。
それは、
「圧倒的に男性観光客が多いこと」
だ。
男性は、1人できている人が案外多い。
石垣に泊まって、日帰りで与那国にきている人もいるらしい、と、親切に車に乗せてくれた人の話で知った。
その人もそうだったが、与那国に来る目的が、「最西端」の証を手に入れることなのかもしれない。
断崖が好きなのかもしれない。
理由はわからないが、女性は大抵中年の夫婦、せいぜい30代のカップルくらいだった。
女性一人旅の人には、一度も出会っていない。
2日目にバスに乗った時、途中から乗ってきた30代カップルが私の隣に座った。「どちらからですか」と声をかけたかったのだが、私の隣にいる女性はリュックを自分の膝に抱え、私の方を一切見ずに、向かい合わせの長い椅子座席から見える車窓を、頑なに見続けていたたため、声をかけることができなかった。
しばらく黙ったままの2人だったが、ポツンと男性が言った。
「この辺を車で一日回っていたら、与那国の地理がわかったんだろうけどね」と。
それに対して女性は「ふーん」と言ったきり、何も返事をしなかった。
おそらく男性が与那国旅を提案したのだろう。女性は連れてこられたが、こんなに何もなくて、こんなに断崖ばかりの景色で、ビーチはあるけど、ビーチハウスがあるわけでもない、おしゃれなカフェがあるわけでもない、観光客もあまりいないこの島に、なんで連れてきたんだろう、と思っているんじゃないか、と感じた。
完全に私の勝手な推測だが、その後立神岩で出会ったカップルも、女性には笑顔はなく、喜んでいるようには見えなかった。
もしかすると、与那国島は男性に人気がある島なのかもしれない。
私は、大好きな島だけど、私は女性だ。笑
いよいよ荷物を詰め、民泊を出発した。
空港まで2.4キロの道乗りを電動自転車で走る。
せっかく被った黒のキャップも飛びそうなくらいの湿気を含んだ風を受けながら、坂道のアップダウンは続く。
上りはチャレンジ
下りは上りを収穫する
そんな気持ちで、電動自転車に乗ってきた。
実際、上りはきついけど下りは驚くくらいにスピードが出て、本当に気持ちがいい。
これを、人生に例えれば「チャレンジしている時はきついけど、必ず収穫はある」ってことかな。
または、「上るのはきついから体力があるうちにやれ。下りは必ず来るから、コントロールできるようにしとけ」ってことなのかもしれない。
車だったらこんな例えは絶対にできなかっただろう。
最初は「こんなに坂があるなら、借りなきゃよかった」と後悔したが、電動自転車に乗ったからこそ、与那国の空気と風を感じながら走ることができたのは、経験してよかったと思う。
「空気が美味しい」と言う言葉が、ピッタリな場所だったとわかったのだから。
電動自転車3泊4日のレンタル代、9,000円の元は取れた。
空港到着後与那国の泡盛のミニボトルを一本、自分へのお土産に買う。
小さな売店が、小さな空港に四店もあるのは、それぞれの店で扱う品物が少しづつ違うからだ。
酒中心
Tシャツなど中心
塩中心
と棲み分けができている。
いくら小さな街でも、そこにビジネスが一旦入ってくると、都会と同じような原理が働いているのを見て、ビジネスこそ世界共通の言語ではないかと思えてくる。
先日「比川」という「ドクターコトー診療所」(ロケ地)に行った際、バス停前の売店で既にお土産を買っているので、もうこれ以上買うものはない。
与那国を離れる寂しさは、徐々に増していくばかりだけど。
冷たいお茶を一本買い、イヤホンで音楽を聴きながらボーディングを待つ。
出発時にはなぜ与那国にこれほど行きたいのか全くわかっていかったが、デジャヴで与那国に来ていたことを思い出した時、「来るべくして来たんだな」と、旅の理由が初めてわかった。
理由がないから行かない、のではなく、行きたいから行ってみようと思って動いてよかった。
理由がわからなくても行ってみれば、旅先で答えが見つかるものなのかもしれない。「呼ばれた」と思えばいいのだ。
次はどこに呼ばれるのだろうか。
私はまだその答えを知らないが、きっと私の「心」は知っているのだろう。
さあ、寂しいけど来たときと同じくリュック一つを背負って、現実世界へ戻る時間が来たようだ。
与那国島、私は大好きだ。
終