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小説「黒猫館の黒電話」 ※コンテスト入賞作品
【あらすじ】
雑誌出版社に勤める黒井良樹は十年前のある失踪事件について、調べていた。
それは彼の大学時代、黒猫館と呼ばれたある建物にまつわるもので「黒猫館にある黒電話を使うと亡くなった人と話すことができる」そんな噂話が当時あった。
それを使って肝試ししようと、サークル仲間の安斉誠一郎が提案し、仲の良かった六人の男女で、夏のある夜、その館に侵入する。
しかしその内の一人が失踪してしまったのだった。
【備考】
・本作はエブリスタの執筆応援キャンペーン「オカルトホラー」の応募作品です。
・作品はコンテスト期間終了後に非公開になる場合があります。
【コンテスト】
・本作はエブリスタの執筆応援キャンペーン「オカルトホラー」で入賞しました。
【作品データ】
文字数:約5万3千字
バージョン:v1.0
公開日:2022.08.07
更新日:2022.09.23
【リンク】
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【作品冒頭】
あの世というものの存在について、一体どれくらいの人がそれなりに信じているのだろうか。
黒井良樹は自身の前にある二十二インチのモニタで流れている、名も知らぬVチューバーが騒ぎながら廃墟探索をしている映像をぼんやりと眺めつつ考え事をしていた。良樹自身は幽霊や妖怪、オバケといったものに対して、特別な関心がない。仕事でなければ、おそらく一生縁遠い世界だっただろう。
「ねえ黒井君。あなたは学生時代にあまり良い思い出がなかったタイプでしょう」
顔の右側からぬめっとスライドするように覗き込み、山科光恵はそう言って含み笑いをする。眼鏡の奥でいつも何を考えているか分からないこの先輩社員は、暇になるとこうして良樹をからかいにやってくるのだ。