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小説「ブルーアワーの君」
【あらすじ】
明け方のブルーアワーにだけその交差点で出会う不思議な女性がいた。彼女に出会ってから高校生のタツヤの時間は不思議な歪みを見せ始める
【備考】
・本作は魔法のiらんどで開催されている「第3回ボカコレ×魔法のiらんど 小説コンテスト」応募作です。
【作品データ】
総文字数:約13000文字
バージョン:v1.0.1
更新日:2020.08.19
公開日:2023.02.06
【リンク】
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【作品冒頭】
二百三十軒分の新聞を全て配り終え、自転車のハンドルもペダルも驚くほど軽くなっていた。それなのに息を切らせてタツヤがわざわざ遠回りになる丘の上の交差点へとやってくるのは欠かせない日課があったからだ。前夜に雨がさっと降り、空気中の細かな塵ちりが洗い流された後の朝は絶好の機会だった。
約十四%の坂道を百メートルもぶっ続けでペダルを漕こぎ、小さな一戸建てが並ぶ住宅街の狭い路地を抜けていく。坂は最後の十メートルが一番きつくて、それを何とか乗り越えて振り返ると街の東を囲む山の稜線がシルエットになって見える。ほとんど黒といっていい濃紺の山の上が僅わずかにオレンジになり、空との境界線はぼんやりと淡いピンクに染まっていく。その上はブルーだ。青が世界を包んでいる。