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森はウェブで会話している。
あんなにうだるような暑さが続いていた真夏な毎日も、あっという間に時は流れて、最近はぐっと秋めいた空気を感じるようになってきました。
いつもこの時期になると、つくつくぼうしの声を聴きながら、どこか名残惜しいような、切ない気分になります…。
夏は特に外で過ごすのが気持ちよくって楽しい季節なので(涼しい場所や時間帯に限る。笑)、毎年この時期は登山に行ったり、キャンプをしたり、自然と森の中で過ごすことが多くなるのですが、最近森についての面白い動画に出会ったので、今日はそちらについて書いてみようと思います。
コロナにあたふたしていたのは、人間だけだった。
少しずつ当たり前になりつつあるコロナのある生活も、改めて思い返してみると、特に都会にいる人ほど辛く、難しい思いをしていたように思います。
今回のこのパンデミックは、誰にとっての脅威だったのか。よくよく考えてみると、実は人間のものだけだったことに気付きました。犬も猫も、鳥も魚も、森も海も、何事も無いように、いつも通りの顔でケロッとしている。
特に、ほとんどのものが人間のために設計され、作られ、維持されている都会の環境では、全てがコロナの影響を受けてしまって、会社も学校も、お店も美術館も映画館も、全部が閉ざされてしまうと本当に行き場がなくなってしまった結果、狭い自宅にじっと引きこもることになりました。
そしてそんな生活に耐えられなくなった多くの人が、都会を離れ、移住することを選択した。私たちのライフスタイルの歴史においては、1つの大きなムーブメントと言えるかもしれません。
行き着いた先は、森だった。
移住まで行かなくとも、自宅引きこもり期間が長引くにつれ、キャンプやグランピングなど、「アウトドア」という形で森へ向かう人が圧倒的に増えました。私自身は元々アウトドア好きだったので、よりそれを肌で感じることになりました。特にソロキャン人口がなんと多いことか…!
そんな流れもあり、今までより、ほんの少しだけ人間にとって森との距離感は縮まりつつあるのかも知れません。でも、改めて森と対峙することで、森と人間の世界には大きな隔たりが存在することもありありと実感しています。
人間中心的目線。
普段都会で暮らしたり過ごしていると、どうしてもほとんどのものが人間のためだけに存在する人工物に囲まれている状態になります。
ある意味、今の暮らし方に慣れている私たちにとっては、それはとても心地よくって、便利で、安心できる環境。でも、よくよく考えてみると、それってものすごく偏った、限定的な世界なのでは?そういう世界で長く暮らしていると、どうしてもあらゆる発想や、考え方、ものの見方なんかが人間中心主義になっていきます。
人間を中心に据えてものごとを見ていると、知らず知らずのうちに偏った見方をしていたり、固定概念にとらわれていることに気付きにくくなるような気がします。デザイナーとしては思考に様々なバイアスがかかっていると自由に発想しづらくなるので、極力普段からそういうバイアスをリリースできるように意識していたりはする(つもり。できているか否かは別。難しいよね…)。
最近、ある動画との出会いで、またひとつ、森や植物に対する自分のバイアスの存在を痛感させられました。
それがこちら。
WWW = ウッド・ワイド・ウェブ!
簡単にざっくり内容を解説すると…
木はそれぞれが一本ずつ独立しているように見えますが、地下では実は別の物語が繰り広げられています。
木々は互いにこっそりと会話をしたり、取引したり、戦ったりしているのです。
それは根の周辺や内部に棲む菌類のネットワークを使って行われています。
今まで、菌類が木々に栄養を提供し、その見返りに糖分を受け取っていることは知られていました。
しかし最近、その関係は当初考えられていたよりもずっと深いものであることが、科学者によって発見されました。
この菌類のネットワークに接続すると、木々はお互いに資源を共有できるのです。
このシステムは「ワールドウッド・ワイド・ウェブ」と名付けられました。
マザー・ツリーと呼ばれるような年長の大きな樹木は、日陰に生えている幼木の生存率を上げるため、このネットワークを介して糖分を分け与えたりします。
病気になったり枯れつつある木が、周囲の健康的な木々が自身の資源を利用できるように、このネットワークに放出することもあります。
植物たちは、お互いにメッセージを送るときにも菌類を利用します。
自分が昆虫などから攻撃を受けると、化学信号を発して近くの仲間たちに防御力を上げるよう警告することもできます。
しかし、私たちのインターネットの世界と同様に、このウッド・ワイド・ウェブにはダークサイドも存在します。
ランの中には、このネットワークをハッキングして、近くの木々から資源を奪い取るものがいます。
あるいはクロクルミのように、有毒な化学物質をネットワーク上に撒き散らし、ライバルの樹木に対して破壊工作を行うものもいます。
こうした樹木のサイバー犯罪はさておき、なぜ植物たちが利他的ともとれるこのような振る舞いをするのか、科学者たちの議論は続いています。
この隠れたネットワークは植物の個体間に豊かなコミュニティを作り出しています。
次に森を訪れるときは、森を巨大な超有機体の一部として捉えてみてください。
私たちの足元でおしゃべりをしたり、情報や食料を交換したりしている彼らに思いを馳せてみてはどうでしょうか。
まさか地下にこんな世界があるとは…。
普段から、仕事でもそれ以外でも植物に関わる時間が多いので、植物の持つ能力や知性にはよく驚かされるのですが、今まで何となく持っていたイメージを遥かに超えた世界観でした。
我ながら、本当に目に見えるものしか見ていない(見ようとしていない)。。。
人間は、自分たちが唯一思考できる生物だと考えていますが、実はそうでは無いのかも知れません。ただ、思考する方法が違うというだけで、植物に限らず、あらゆる生物はそれぞれ独自の方法で思考しているのかも?人間が知らないだけで。
私たちは、脳という臓器があって初めて、思考したり、自身の行動を決定できたりすると思っていますが、もしかしたらそれも思い込みなのかも。そう考えると、急に自身にとっての植物の存在が違うものにダイナミックに変容していくのを感じています。まだ、それが何なのかはうまく説明できないけど。
WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)、WEBの世界は現代の中心的な存在であり、コミュニケーションツールであり、これからの社会設計にも大きく影響をもたらすことは間違いのないものです。私たちはこれをゼロから自分たちが構築してきた、完全なる人間の創造物だと考えていますが、もしかしたらそれは違うのかも知れません。
太古の昔から地球上に存在していた、森の創造物「ウッド・ワイド・ウェブ」から無意識の内にアイデアを受け取り、模倣し、植物のコミュニケーションを人間の世界にもインストールしたに過ぎないのかも。そう想像していくと、ますます植物の織りなす世界への好奇心は止みません。
それにしても、普段鉢植えの植物を多く扱っているのですが、鉢に植えることによって、この壮大なネットワークからその植物を切り離してしまっているということですよね。土の中に菌糸を見つけたら、殺菌剤を入れて駆除したり。なんだかすごく罪悪感…。笑