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ヤマハの楽譜と兼田敏 ・ 保科洋そして岩井直溥

 ヤマハは1967年(昭和42)に兼田敏*1氏の編曲で「YBSシリーズ」というクラシックの曲や当時のヒット曲、そして教科書教材曲等の様々な楽曲を出版しました。15人(海・サモア島の歌・トロイカ・可愛いアウグスティン・ともし灯・行進曲黄色いリボン・ピクニック 等)から24人 (赤とんぼ・悲しき歌・ロンドン橋・草競馬・スワニー河・行進曲乾杯の時 等)で演奏可能な、当時の多くのスクールバンドの実態にあった編成の楽譜を発刊しました。兼田敏氏と保科洋*2氏は共に吹奏楽作品の発表や啓蒙活動に大きな役割を果たされているのですが、保科洋氏は「僕が編曲しても兼田敏の名前で出版する」*3条件で半年で60曲編曲するという兼田敏の仕事のアシスタントを務めました。

海と草競馬の編成表

 ヤマハYBSシリーズでは、フルスコア*4が標準となり、共同音楽出版社やバンドジャーナル付録がピアノ譜(コンデンス・スコア)であったのに比べ全てのパートの動きが記されているため、指導上の利便性が向上しています。なお、現在これらの作品の一部が保科洋の補筆により標準的な編成に編曲されCAFUAから「兼田 敏 小品アレンジ作品集」として3集まで出版されています。
 1972年(昭和47)にヤマハはポップスや映画音楽等を岩井直溥*5氏等*6が編曲し、楽譜と音源*7を同時に発売する「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズ*8を開始しました。第48集(2020)までに469曲が出版されました。また、ニュー・サウンズ・イン・クリスマス(1988年)9曲、ユーミン・ブラス(1991年)12曲、サザン・ブラス(1992年)12曲を合わせると502曲がニュー・サウンズ・シリーズとして日本の吹奏楽レパートリー拡大に大きく寄与しました。
 岩井直溥(158曲)、真島俊夫(52曲)、星出尚志(51曲)、森田一浩(26曲)、天野正道(23曲)、鈴木英史(15曲)の各氏を含む59人が編曲者として名を連ねています。

1972年発刊

*1 兼田 敏(1935-2002)は、作曲家であり吹奏楽指導者
*2 保科 洋(1936- ) は、作曲家であり吹奏楽指導者 
*3 保科洋 CD掲載インタビュー全文
*4 全てのパートがまとめて書かれている指揮用の楽譜
*5 岩井直溥(1923-2014)は、作編曲家および指揮者であり「吹奏楽ポップスの父」
*6 久石譲、小野崎輔、東海林修、宮川彬良、三枝成章、服部克久、服部隆之、長生淳 他
*7 ヤマハ音楽振興会と東芝EMI(第1集のみCBSソニー)
*8 第1集(オブラディ・オブラダ、イエスタディ、ヘイ・ジュード等)から2020年の第48集(ベートーヴェン・ポップス・シンフォニー、Official髭男dismメドレー等)があります。

                        writer Hiraide Hisashi

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