共同音楽出版社の吹奏楽譜
共同音楽出版社は、1950年(昭和25)に創業の出版社で、当時の吹奏楽団のレパートリーとなる楽曲を数多く出版していました。
1957年(昭和32)に共同音楽出版社から出版されたキングコットン*1 (J.P.スーザ作曲、三戸知章編)、旧友*2(タイケ作曲、三戸知章*3編)の楽器編成を見ると現在販売されている国内出版社吹奏楽曲の編成とは大きく異なります。
・ 同じ年度に出版されている三戸知章編曲の作品だが、編成の標準化がなされていない。
・ 指揮譜はフルスコアではなくコンデンススコア(ピアノ譜)である。
・ ピッコロD♭とピッコロC両楽器に対応できるように楽譜が用意されている。
・ 「サキソフォーン」と「サキソフォン」、「トロンボーン」と「トロムボーン」と表記の統一がなされていない。
・ コルネットが使用されることを想定している。
・ 「旧友」では「ソロ・クラリネット」「ソロ・コルネット」があり、クラリットは4パート、コルネットは5パートとなっている。
・ 「アルト」パートはinE♭記譜だと思われる。「アルトホルン(テナーホルン)」のことで今の「ホルン」パート
・ 「バリトン」パートが用意されている。おそらく高音部記号inB♭記譜
・ 「小バス」は今の「ユーフォニアム」パートで、低音部記号inCと低音部記号inB♭の楽譜が用意されている。
・ 「バス」パートは低音部記号inCと低音部記号inE♭低音部記号inB♭という3種の楽譜が用意されている。
・ 「ドラム」パートはおそらく小太鼓・大太鼓・シンバルが記譜されていると思われる。
・ 「ベルリラ」(行進時用縦型鉄琴)の楽譜が用意されている。なお興部中学校にはベルリラがありましたが使用されていませんでした。
・ 「シムバル」「チムパニあるいはチムバニ」「トラムペット」「トロムボーン」等、現在「ン」と表記される音が「ム」と表記されている
12年後の1969年(昭和44)に共同音楽出版社から販売された「三百六十五歩のマーチ」では、「ホルン」は引き続きinE♭の楽譜のみ、(おそらく高音部記号の)「バリトン」はあるが「小バスC」(低音部記号)が無く、「バス」には低音部記号in B♭・in E♭の楽譜がin Cの楽譜と共に用意されています。
ちなみに「偉大(Big March) 」(作曲者不詳、三戸知章編)演奏時に「バスC」の楽譜が紛失していて「バスB♭」の楽譜を使用したという曖昧な記憶があります。
なお、これら共同音楽出版社の楽譜に関する事柄は、国立国会図書館デシタルコレクション*4で86曲を確認することができます。
現在、共同音楽出版社では吹奏楽曲の出版をしていないのですが、1990年(平成2)頃までに出版された楽譜を見ると、1970年(昭和45)頃までinE♭ホルン・バスinE♭inB♭、そして1990年頃までコルネット譜とバリトン高音部記号譜を提供していたことがわかります。
*1 綿花博覧会のために1895年に作曲された行進曲
*2 ドイツを代表する1889年に作曲された行進曲
*3 三戸知章(1900-1987)は共同音楽出版社で極めて多数の吹奏楽曲を編曲 その人物像は明らかにされていないが東京大学オーケストラ出身、東大吹奏楽部の指揮にあたった。全日本吹奏楽連盟から表彰を受けたことがわかっている。月間吹奏楽研究 編集長・全日本吹奏楽連盟理事・千葉県吹奏楽連盟理事
*4 国立国会図書館デジタルコレクション
writer Hiraide Hisashi
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