ブラスバンド・ニュースを読む -その4
創刊号の内容 -２-
フランス音楽祭
1881年頃のイギリス南部の地域ではブラスバンドが盛んではありませんでした。1861年創刊の週刊誌ブライトン・ヘラルド(BRIGHTON HERALD) によるとイギリス南部のブライトンでフランス音楽祭が開催されフランスのバンドが参加してバンドコンテストが行われたとのことです。
参加バンド
フォントネ・スー・ボワ(仏Fontenay-sous-Bois)
マント(仏Mantes)
シャルトル(仏Chartres)
レ・エイドス(仏Les Aydcs)
ミュイズ(仏Muids)
ウルタルヴィル(仏Outarville)
モンテリ(仏Montlhery)
マッセイ(Massey)
サン・シル・シュル・モラン(仏St. Cyr-sur-Morin)
リスル・アダム(L'Isle Adam)
キャリエール(仏Carrieres)
サン・ドニ(仏St. Denis)
シュヴルーズ(仏Chevreuse)
クルイ・シュル・オレク(仏Crouy-sur-Oureq)
シャンブールシー(仏Chambourey)
ブージヴァル(仏Bougival)
これらのバンドのメンバーは農民でしたので、イギリスのバンドメンバーが工場で働く人々が中心であったのと大きく異なっていました。
観客が入場券で投票審査するコンテスト
賞金は1等賞20ポンド、2等賞10ポンドで課題曲は設定されずにバンドは好きな曲を演奏しました。審査員は選任されていなく、観客が優れたバンドに投票することになっていました。チケットには出場バンドの名前が印刷されており、各自が好きなバンドに×印をつけることになっていて、コンテスト終了後にチケットは箱に入れられ、最も多くの印を獲得したバンドがベストバンドと判定されるシステムのコンテストです。
知り合いが多く入場していたバンドが1等賞を得たようで、それを批判的に記述する記事となっています。
ブラスバンド関連の情報
バンド運営に係る情報やコンテスト結果情報、コンサート情報が数多く記されています。
その内のいくつかの妙訳です。
「ロッチデール・バンドは46のコンテストに出場し、4 つの賞を獲得しました。 今年受け取った賞金の総額は107ポンド 9シリングです。」
「ペンドルトン・バンドは、現在の約6つの異なるメーカーの楽器セットを同一メーカーを揃えるために資金調達しようとしています」
「マトロックで9 月 17 日に第 6 回ブラスバンドとコルネットのコンテストがここで開催され、1 位ストックブリッジ(12 ポンド)、2 位サットン(8 ポンド)、3 位ノッティンガム(5ポンド)、4位シルクストーン(2ポンド)、コルネット・コンテスト1位バーキンショー氏(12ギニー相当のコルネット)」
「クリスタルパレスで開催されたレイト・テンペランス・バンド・コンテストでは、開催の6週間前にメンバー全員が禁酒誓約書に署名しなければコンテストに参加できないと突然「変更」されました。勝者は今も禁酒を続けているとは思えません。」
「ノットンガムでチャールズ・ゴドフリー氏の指揮のロイヤルホースガードバンドの演奏会が開催されました。「アラジン」からのセレクションの演奏は最高でした。」
新譜紹介
ファンタジー リンター作曲
歌劇アブ・ハッサン・セレクション ウェーバー作曲
ロマンス H. ラウンド作曲 ユーフォニアム・ソロ。
セレナーデ H. ラウンド作曲 コルネット・ソロ
ポルカ E.ラウンド作曲
スコティッシュ T. H. ライト作曲
F.ベッソン・ロンドン社の宣伝
ポリス・ガーディアンの推薦文
ベッソン社は世界的に有名なメーカーであり、その楽器は世界の主要都市の博覧会で賞を得るだけでなく、称賛されています。 ユーストンロードの製造工場は広々としていて、非常に多くの熟練労働者を雇用しています。 私たちは工場を見学し、無地の金属板から楽器が完成するまで、製造過程のあらゆる詳細を見ました。 最近の訪問では、文字通り何千ポンドもの価値のある楽器が完成していく、さまざまな製造段階にあるのを見ました。 これに加えて、ユーストン通りには板金、原材料など「プロトタイプ」に関わる重要な会社があり、それらはベッソン社のすべての楽器が作られていくために必要です。 長年の経験と実験にもとづくこれらの「試作品」は、ベッソン社の成功の秘密です。 すでにバンドを持っている、またはバンドを結成しようと考えている人は、ネルソン・バンドやメルサムなどが使用している楽器を製造しているベッソン社製を強くお勧めします。 ミルズ・バンドはさまざまなバンド・コンテストで賞を獲得し、ネルソンは 1870 年から 1876 年にかけて 902 ポンド以上を獲得し、メルサム・ミルズ・バンドは 22,339 ポンドを獲得しました。 このバンドの成績は使用している楽器がベッソン社製だと言えるかもしれません。
ブリティッシュ・トレード・ジャーナルの推薦文
「プロトタイプ」システムで製造された楽器が、ベッソン社製品の主力となっています。 とりわけ、最近のシドニー万博博覧会(1879年～1880年)ではテナー・ホルン、バリトン、ユーフォニアム、フルート、ドラムなどの楽器が最高賞を受賞しました。 「プロトタイプ」製造システムは非常に高く評価されており、発明者はすでに 33 個の名誉メダルを受賞しています。また、世界の主要なバンドやミュージシャンの支持も得ています。 これらの「プロトタイプ」システムによって、大量の優れた楽器を製造することの難しさは完全に克服され、優れた品質の楽器は偶然の努力の結果ではなく、健全な科学的および機械的原理に基づいて製造されることになりました。 ベッソン社によって行われた改善には、非常に多くの重要な利点があり、この文章ではそれらの全てを伝えることはできません。 ベッソン社の楽器からは、すべての不都合が取り除かれていて唇と肺に負荷をかけないので、プロミュージシャンとアマチュアは、演奏した後でもほとんど疲労しません。 展示品は何千人もの来場者が明らかに関心を持って閲覧し、ベッソン社が「新たな出発」をしたことを認識しなければなりません。
ロンドンのフィガロ紙の推薦文
F. ベッソン社の楽器に関する名声は世界共通です。 素人目には、どのように製造したのか見当もつかない品です。 しかし実際には、これらは F. ベッソン社の有名な「プロトタイプ・システム」と呼ばれる鋼鉄模型を使う技術で作られ、これは数学的に計算されているため、それらを使用することで楽器の複製をいくつでも作ることができ、その形や調性はすべて完全に一致します。 これらの「プロトタイプ」はベッソン社の特許であり、完成までに何年も費やされました。発明者は多くの著名なメダルを獲得しています。
シドニーのモーニング・ヘラルド紙の推薦文
ブリティッシュ コート ギャラリーで、F.ベッソン社がブラスバンド用の楽器一式を展示しています。この会社は世界的に有名であり、プロトタイプ製造法の特許権者であり、唯一の所有者です。この「デュプレックス・スライド＆バルブ*1」は、トロンボーン奏者にとって正真正銘の恩恵をもたらすことになるでしょう。
全ての推薦文が「プロトタイプ製造システム」について述べています。
金属型を使って真鍮板を管状に変形させ楽器を作る方法がベッソン社が言う「プロトタイプ製造システム」だと思われます。
R. J. ワード & ソン社の中古楽器販売カタログ
リバプール・ブラスバンド(吹奏楽)ジャーナルの宣伝
ハイランド・ショティッシュ(HIGHLAND SCHOTTISCHE)
・故郷の空(COMING THRO’ THE RYE ) T.H.ライト
・夜明け(DAYBREAK) H.ラウド
・ラブリーメイ(LOVELY MAY ) リンター
・コキジバト(TURTLE DOVES) H.ラウド
ミストレル・ボーイ(THE MINSTREL BOY) H.ラウド
クイック・ステップ・マーチで、「Long, Long, Ago」(アメリカのメロディー)が使われています。バスソロもあります。
スコットランドの釣鐘草(BLUE BELLS OF SCOTLAND) H.ラウンド
赤十字(THE RED CROSS) H.ラウンド
小序曲は、3/4のスタッカート・ピアノの動きで始まり、最初の8小節の後、ソプラノが美しい対主題を取り上げる。バンドが元の主題を続けている間に、非常に効果的な動きあり、2/4の快活で刺激的なものに変化する。そしてバスのソロによって再現され、ffで終わる。 価格 - フルブラスバンド, 1ポンド2シリング(1万2千円); スモールブラスバンド, 1ポンド(1万円); ミリタリーバンド, 1ポンド8シリング(1万8千円).
クリスマス用楽譜の宣伝広告
クリスマス ナンバー 1881 年
価格 – 吹奏楽譜 : 1シリング 8ペンス(40 セント) 、
ブラスバンド譜 : 1シリング 2ペンス(30セント)
グリー(GLEE) - 「ハイ、スマイルモーン」 – スポフォース
キャロル(CAROL)(新) - 「汚れなき聖母」 - H.ラウンド
賛美歌(HYMN) - 「ジャススのもう一日の仕事」 - サンキー
賛美歌(HYMN) - 「子羊の血で洗われた」 - クックマン
キャロル - 「天使の歌」 - リンター
キャロル - 「招待状」 - ブリス
アンセム(ANTHEM)(新) - 「ホサナ」 - H.Round
ライト・ヒューム社の帽子宣伝
ミリタリー＆ネイバルハット＆キャップ
バスビー、チャコス、ヘルメット、フォレッジキャップ、バンドキャップなど、あらゆる種類の帽子がオーダーメイドで作られます。
創刊号については、ここまでで紹介終了です。
*1 duplex slide and valveについては、どのようなものか現段階では見つけられていません。
ブラスバンド・ニュースを読む -その5 いつになるかな
writer Hiraide Hisashi