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【2000字のドラマ】Youtubeをはじめた。
Youtubeを始めた。
料理が好きだったから、自分なりに作った料理のレシピを書き起こして、動画にとって、編集して、投稿していた。ずいぶん雑な仕上がりだったと思うけれど、それでも一定数見てくれるフォロワーはいて、週1は必ず上げるという習慣がついた。
インスタを開設した。
カメラを新調して、画素数高く自分の料理を撮影した。youtubeのURLをプロフィールにのっけて、youtubeの再生数が稼げるように、工夫した。その頃にはフォロワーは100を超えていた。
ツイッターの別垢を作った。
チャンネル用のアカウントは完全に広告用だった。個人のアカウントはよっぽどでないと開かなくなった。
ツイッターの個人垢にDMが来た。
アンチがつくようになったので、ネットストーキング野郎でも来たのかと思ったけど、大学の友人からだった。ラインは知らなかったけど、ツイッターは相互フォローしていた奴だった。そういえば一人暮らしをしていた時、そいつと他のやつを家に招いて、鍋パしたことを思い出した。
チャンネル用の垢に案件DMが来た。
そろそろかなって思っていたから、受けることにしたけど、そのDMを送ってきたやつ、高校時代に付き合っていた元カレからだった。翌日食事をすることにした。
Youtubeから銀の盾をもらった。
自分のレシピは底をついてきた。大学の友人に愚痴をこぼしたら、彼女はにやりと笑って「味の素に頼れよ」って言ってきた。自分が自然派として売っていることをわかったうえで言ってきていることは明らかだった。最高だよ、お前。
書籍を出すことになった。
名刺を出してきた出版社の女は元カレの元カノだった。元カレに連絡したら、「お前の本楽しみにしてるよ」なんて言ってきやがった。電話の後ろから「ご飯できたよ」なんて声が聞こえてきた。結婚おめでとう。自分のテーブルの上は調味料ばかりでごみごみしていた。
仕事を辞めた。
副業としてやってきた料理関係の仕事に腰を据えることにした。最近は料理関係でもなく、自分の情報を切り売りすることが多くなってきた。そのほうが、受けがいい。
友人と一緒に住むことになった。
体を壊した自分に寄り添ってくれたのは、「味の素に頼れ」と言ってきたあいつだった。「お前のことは、友人としてしか見てないよ」というと、彼女は「わかってんだよ、バカめ」と悪態をついてきた。その悪態に、甘えていることはわかっていた。
元カレと鍋をした。
嫌がらせみたいに「お前の嫁に元カレっていったらどうなるかな?」なんて言ってみた。元カレは笑いながら「そういうのには寛容なんだ、うちは」とあっけらかんと言ってきた。「お前、すごいよな」なんて、自分の顔が乗った雑誌を見せてきた。ジェンダーってなんだ? 雑誌のタイトルがキャッチーに踊っていた。「逃した魚はでかいだろ」そういうと、元カレは「お互いにな」と出汁をすすった。
Youtubeの更新を止めた。
「料理なら私がするよ」と友人が言ってきた。もう自分は料理の人ではなかった。「お前さ」「おん」「俺のこと好きでしょ?」わざと、言ってやった。友人はいつもみたい「知ってるだろ、バカめ」と笑っていた。きっと自分の顔も笑っていた。