ミラーレス + レフレックス の相性の良さ 【α7 + TAMRON SP 500mm F/8 (55BB)】
レフレックスレンズは、ミラーレンズとも呼ばれ、小型・軽量な望遠レンズに使われる方式です。これは、ガラスの屈折のみで光を導くレンズではなく、鏡の反射を使った構造になっており、いわゆる「反射望遠鏡(の中の一部のもの)」と同じような構造をしています。この構造のため、この記事のヘッダ画像のように、ボケた部分が中空の(円周状の)“リングボケ” とよばれる独特の形状になります。この方式のレンズは、昔は Nikon や MINOLTA、PENTAX など、各社から供給されていましたが、2022年現在でカメラ用として新品で手に入るのは、国内メーカーでは Kenko のものくらいでしょうか。
手元にも TAMRON の 55BB(SP 500mm F/8)というレフレックスレンズがあるのですが、実はこれまで天体撮影用にしか使っていませんでした。しかし、よく考えたら、これをミラーレス一眼と組み合わせると最強なのではないかと思い至り、少し試してみましたので記録を残しておきます。
(※この記事では、反射鏡を用いた光学系も、広義の写真撮影のための結像装置という意味合いで “レンズ” という用語で記述します。)
レフレックスレンズの特徴
レフレックスレンズの特徴としては、おそらく以下のようなものが挙げられるでしょう。
同一スペックのレンズとしては非常に軽くて小さい(短い)
ピント合わせが非常に難しい
焦点距離の長さに対して暗いのでブレやすい
強烈なリングボケが出る
そもそもレフレックスレンズはおそらく一眼”レフ” で利用することを前提に開発されたレンズだと思うのですが、実はこれらの特徴を考えると、現代のミラーレス一眼カメラにこそ最適だと思うのです。
まず一つ目の特徴である軽さとコンパクトさは、一眼レフよりも小型軽量なミラーレスと組み合わせることでその真価を発揮します。
二つ目のピント合わせについては、拡大してのピント合わせあるいはピーキングを併用することで、一眼レフよりも格段に精度よくピントを合わせることができるようになります。(正直なところ、一眼レフでは、三脚に載せた状態で止まっている物体を狙ったとしても確実なピント合わせは至難の業です。)
三つ目のブレについては、そもそも最近のカメラは高感度特性が格段に良くなっていることに加え、センサーシフトによる手振れ補正を併用すれば、少なくとも屋外であればほぼ手振れとは無縁の撮影が行えるようになります。また、手振れ補正によってファインダー像も安定するので手持ち撮影であっても一眼レフよりもフレーミングがしやすいです。
そして四つ目のリングボケについては、暗いレンズでありながら、ミラーレスの明るいファインダーと手振れ補正によって、どういうボケが出ているのかを隅々までクリアに視認しながら撮影することができますので、表現として非常に使いやすくなっているでしょう。加えて、まぁこれはミラーレスとは関係ない単なる好みではありますが、最近のオールドレンズブームによって、とろけるようなボケこそが理想という風潮が変わってきており、リングボケがプラス要素として捉えられる比率も上がっていることでしょう。
レフレックスレンズの外観
手元のレフレックスレンズをミラーレスに装着した様子です。(フードを外した状態です。)
レフレックスレンズ(ミラーレンズ)というのは、その名の通り「鏡」が入っています。ですから、正面から見ると、このように本当に鏡が見えます。
上から見るとこんな感じ。カメラは SONY α7R II で、Nikon F マウントのアダプトールから SONY E マウントへのマウントアダプターを介して本体に装着しています。このレンズは 500mm F8 ですので、そのスペックを考えると相当にコンパクト(短い)なのがわかると思います(Nikon F マウントの状態でマウント面から 91.5mm、SONY E マウントに変換しても 120mm)。なお、基本的には単なる「鏡」ですから中は空洞(空気)なので、重量も見た目より軽いです(595g)。例えば、SONY から ZEISS ブランドで出ている 50mm F1.4 (SEL50F14Z) は全長が 108mm で重さが 778g ですから、この 500mm レフレックスは現行の 50mm レンズよりも少し長くて少し軽い、ということになります。コンパクトな一眼レフ用のオールドレンズなどを利用する場合にマウントアダプターを使うと長さが1.5倍とか2倍くらいになってしまってせっかくのサイズ感を損なう場合がありますが、このレンズの場合はもともとがそこまで小型というわけでもありませんので、ミラーレス用にマウントアダプターを介しても全体のバランスをあまり損なわないのもプラス要因です。
現代の 500mm レンズなんて巨大すぎてなかなか気軽には持ち歩けませんが、これならサブとして持ち歩くことも可能でしょう。例えば、メインのカメラを右肩に掛け、サブとしてレフレックスを左肩に掛ける、みたいなスタイルも可能でしょう(実際今回のテストはそのスタイルで実施しました)。それに、F8 で暗いといっても、望遠ズームだと 500 mm で F6.3 とか F6.7 あたりが定番ですから、実はそれほど大きくは変わりません。例えば SONY E マウント用だと、TAMRON から 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD というのが出ていますが、全長が 210mmで、重量が 1.7kg あります。長さが2倍弱、重さが3倍弱で、雲泥の差です。オートフォーカスと1/3段ほどの明るさとレンズ内手振れ補正と広角側が犠牲になりますが(←結構多い)、それでもどちらにより大きなメリットを感じるかは意外と微妙なところなのではないでしょうか。
ちなみに、念のため補足ですが、構造がガラスレンズであっても鏡であっても、一定の F 値を実現するためには原理的に一定の直径が必要ですから(F値 = 焦点距離÷直径)、レフレックスにしたからといっても、直径が細くなるわけではありません。
1983年発売のレフレックスレンズの写り
さて、スペックとサイズはこのくらいにして、肝心の写りについて考えましょう。
このレンズは1983年の発売です。来年で40年。そんなレンズが果たしてまともに写るのでしょうか。もちろん、いわゆる「オールドレンズの味」のようなものを求めるのもよいのですが、こういう望遠レンズは、そもそも遠くのものを大きく写したいから利用しているわけですから、どちらかというとやはり画質が重視されるのも仕方ないでしょう。
まず一枚。これは、フルサイズセンサーで撮影して、ノートリミングの画像です(リサイズのみ)。
レフレックスならではの玉ボケが独特の絵を演出しています。春ならではの活気づいたような浮足立ったような、そういう空気が感じられます(当社比)。
そして、ここでちょっと意地悪をしてみましょう。この写真の中央部分の 1920x1280 px の範囲をピクセル等倍で切り出して見てみます。
このカメラは 4200万画素ほどのセンサーを持っていますから、そのうちの 6% 弱くらいの面積を切り出したことになります。いかがでしょうか、この写り。40年前のレンズとは思えないシャープさと、色のニュートラルさだと思います。とりわけ色については特筆すべきで、ディジタル処理で色収差を補正したりは一切していないのに、全く色収差が見られません。原理的に有利とはいえ、恐るべしレフレックス。むしろ逆に、ファインダーを覗いた時の極めてあっさりした色味に驚いたくらいです。
もう一枚見てみましょう。枝に留まるモズを、まずはノートリミングで。(鳥なのに。)
この日は暖かく、小鳥や虫たちもせっせと飛び回っていましたから、モズたちも大忙しでした。これは、ちょっと枝で休憩しているシーン。
そして、同じく中央をピクセル等倍でトリミング。
さすがに現代のレンズのようなバキバキ感まではないものの、かなりのものだと思います。それに、背景が明るい悪条件下での一枚ですが、エッジの部分に大きなフリンジ等が出ることもなく(僅かに見えますが、これは4000万画素からのピクセル等倍ですからね)、非常にすっきりとした絵が得られています。正直なところ、40年前のレンズですから、そこそこは使えたとしても、まさか4000万画素で ”等倍鑑賞” ができるとは思いもしていませんでした。(驚いたので、敢えてそういう見せ方をしています。等倍鑑賞を推奨しているわけではありませんよ、念のため。)
作例をいくつか
等倍鑑賞はこのくらいにして、このレンズでテスト撮影した写真を何枚か掲載しておきます。
以上のように、思ったよりも断然使えるレフレックスレンズ、40年の時を経て、しばらく活躍してもらうことにします。
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