低画素機は高感度特性が良いというのは本当か?(手持ちの機材で手抜き検証)
デジタルカメラに搭載されているセンサーのサイズが様々であるのは周知の通りであるが、概ね、
センサーサイズは大きい方が良い
画素数は多い方が解像度は高いが、少ない方が高感度の特性は良い
基本的に新しい製品ほどノイズは少ない
とされている(ことが多い気がする)。このうち、1. のセンサーサイズについては、大きいほど良いというわけではなく犠牲になっている部分もあるから適材適所だよね、という話は既に書いた。
このたび、何故か古めのフルサイズ機が4台ほど手元に揃っていることに気付いたので、2. の画素数の影響と 3. の発売時期についてをごちゃまぜにした手抜きの検証(というか自分で使うためのテスト)を実施したのでメモを残しておく。
メインテーマは、「低画素機の高感度画像 vs. 高画素機の高感度画像を低解像度にリサイズした画像」で、本当に前者が優れているのか、である。(リサイズせずにオリジナル解像度でピクセル比較したら当然ながら低画素機の方が良いに決まっているのでそれは見ない。)
検証の環境
手元にある35mmフルサイズのデジカメ4台。時代もメーカーもバラバラなので、まともな “検証” ではない点にはご注意を。
カメラ本体
Nikon D600:2012年発売、2400万画素
SONY ILCE-7S(α7S):2014年発売、1200万画素
SONY ILCE-7RM2(α7R II):2015年発売、4200万画素
Canon EOS 5D:2005年発売、1300万画素
(ご覧の通り、最新のものでも7年も前のカメラであることにも注意。)
レンズ
Nikon AI AF DC-Nikkor 105mm f/2D
ボケ味コントロールは 0(中央)に設定
マニュアルフォーカス
絞りは F5.6 固定
SONY 機および Canon 機にはマウントアダプターを介して装着
撮影条件
マニュアル露出
ノイズ比較用:ISO 3200、1/250 s、F5.6
解像度比較用:ISO 200、1/15 s、F5.6
自動ホワイトバランス
RAW撮影
三脚を固定(従って、三脚穴とセンサーの位置関係によってカメラごとに構図は少し変化する)
セルフタイマー撮影(ミラーレス機はサイレント撮影、一眼レフ機はミラーアップ等はせずに通常撮影)
現像方法
Zoner Photo Studio X ビルド 463
以下を除き、デフォルト設定で現像(ノイズ除去等は無し)
ノイズ比較時(ISO3200)のみ、ダイナミックレンジの調整:光 -100、シャドウ +100(すなわち暗部を持ち上げる処理)
ノイズ比較時(ISO3200)のみ、横幅 4240 px にリサイズ(1200万画素機である α7S と揃えるため)
以上により、
ノイズ比較:同じサイズにリサイズする場合にも、低画素機の方が有利なのか
解像度比較:低感度の場合、高画素機ではどのくらい解像度が高いのか
が確認できる(はずである)。
結果
撮影した写真はこんな感じ。
もう一度おさらいだが、この記事では、このような画像に対し、
ノイズ比較:ISO3200 の画像の暗部を持ち上げた後、同じサイズにリサイズして比較
解像度比較:ISO200 の画像を同じくらいの範囲に拡大して比較
した結果について記している。
ノイズ比較
まずは画像を(ISO 3200)。暗い場所を適当に2カ所選んで拡大している。(どの部分だかわかりますか?)
ご覧の通り、古い 5D(右下)は流石に苦しい(しかも、5D は通常の感度は 1600 までで、3200 というのは拡張感度)。だが、これが比較対象のものと比べて10年も古いカメラであることを考えると、極めて健闘しているとも言える。信じがたいことにこれは18年も前のカメラであり、スゴい製品だったことがわかる。(モードダイヤルのゴムが劣化してベトベトになっていて実際には使用に耐えないことは今は言うまい。)
そして、最も気になる α7S(右上)と α7R II(左下)の比較。仮説に反し、ほとんど差は無いように見える。よく見ると α7R II の方が暗部の階調の出方が少しだけ悪い気がするのと、若干色味が緑寄りに傾いているというのはあるが、重箱の隅を突かなければ、4200万画素の画像を1200画素にリサイズしたものと、最初から1200万画素だった画像で、それほど大きな違いは見られない。
トータルの受光面積は低画素機の方が優れているのだろうが(メーカー他もそのように主張しているのだろうが)、高画素の画像を小さくリサイズすることで各ピクセルのノイズが相殺(アベレージング)されて低減され、結果として同じくらいの SNR に落ち着いた、ということだろうか(未検証)。なお、これらの2機種は発売年は1年だけの違いだが、α7R II のみが裏面照射型のセンサーであるのでそこに起因する差はキャンセルできていない点は指摘しておく(手抜き検証なのでスミマセン)。
なんにせよ、1200万画素に揃えて比較するならば大差ない画像が出て来ているわけで、高画素機はノイズという点でも大きく失っているものはない、と言えるだろう。もちろん、RAW画像のファイルサイズが巨大であることから保存や現像などの取り回しは非常に悪いのでそこの部分の差はあるが、画質を大きく犠牲にしているわけではないということは間違いないだろう。
解像度比較
次は、リサイズしない状態での解像度比較である(ISO 200)。3.5倍の画素数というのがどのくらいの威力なのかを確認しよう。
一目瞭然である。左下の 4200 万画素の画像だけが、被写体の毛並みを見事に再現している。もちろんこの状態で ISO 感度を上げるとノイズが増えてくるわけだが、その場合も 1200 万画素機と同じくらいまでしかノイズが増えないことを前節で確認したわけで、それを指摘しても今は意味は無い。
なお、1200万画素機の α7S(右上)と 1300万画素機の 5D(左下)がほぼ同じくらいの写りなのは妥当だが、2400万画素機の D600(左上)もほとんど変わらないように見えるのは不思議である。ピント位置はズレてはいない気がするので、もしかしたらローパスフィルターの設定(≒メーカーの思想)によるものなのか、あるいはミラーショックの影響なのかもしれない。このあたりは全く未検証なので、理由は不明である。
なんせ、4200万画素、恐るべし、である。ストレージもすぐいっぱいになるし、画像処理ソフトなどでもかなりモタつくわけだが、そこは仕方あるまい。
なお、1200万画素機の初代モデルである α7S は、かなり軽量かつコンパクトである(α7Cよりも軽い ← あれは、手ブレ補正付きとしての最軽量を謳っている)。この機種は、生成されるファイルの軽量さに加えて、本体の取り回しの良さについても非常にポイントが高い。もちろん手ブレ補正や4K録画はあるに越したことはないのだが、それを捨てることでこのコンパクトさが手に入るなら、発売から間もなく10年になろうという2023年現在でも充分に実用機として使えるだろう(実際使っている)。
最後に
画素数および年代の異なるフルサイズ機のノイズと解像度の比較をおこなった。結果、
低画素機であってもそれほど高画素機よりも高感度特性が良いわけではない(リサイズしてしまえばほぼ一緒)
新しいセンサーはやはり良さそう(だが、10年分の差があるかというと疑問)
ということがわかった気がする。(手抜きの検証なので、「気がする」以上のことは言えない。)
それはそれとして、ファイルサイズのことが頭をよぎって撮るのが億劫になるような高画素機ではなく、軽くて小さくて気にせずシャッターを切りまくれる低画素機を積極的に使っていこう、という意思表明を最後のまとめとしておく。