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箸にも棒にも 【大物】
先日、雰囲気の良いカフェを見つけたので入ってみました。
店内を見回す限りでは、女性8割、男性2割といったところでしょうか。
メインのターゲット層は女性ですね。僕は一人ですから、少々浮いている感は否めません。
「コーヒーを飲み終えたら早々に退散した方が無難かな」などと考えつつ、隣のテーブルに目をやると、男性3人組がいらっしゃいました。
これは思わぬ援軍、僕よりも場違いです。いや、大変結構。
その3人組、会社設立がどうの、エネルギー政策がどうのと、なにやら高尚なお話をなさってました。これは日本を支えている方々に違いありません。教養の高さに思わず感心してしまいました。
ところが、です。店員さんが運んできたのは、まさかの巨大パフェ・・・。このご時勢ですから、男性だけでパフェを楽しむのもありでしょう。たぶん。
※ 画像はイメージです
コーヒーを飲みながら様子を眺めていると、議論を中断し、それぞれが黙々と食べはじめました。もちろん、ひとり1個です。
よくよく観察すると、男性(以下男A)の1人は、生クリームだけを丁寧に取り除いているではありませんか。
男Aは、パフェに盛られたアイスクリーム、プリン、フルーツ、フレーク等を幸せそうに食してらっしゃいました。
どうやら、お楽しみは最後に、という事でもなく生クリームは残すのが流儀のようです。
その様子を見ていたお仲間の男Bが声を掛けました。
男B 「食べないの?」
男A 「健康に悪い」
『はぁ?! 巨大なパフェを1人で食べながら、健康を語るんじゃねぇよ!!』と突っ込みたくなったのですが、なんとか自重に成功しました。
そして男Aはこう語ったのです。「シュークリームを食べる時も中身は必ず外に出す。カラダに悪いからね」。
いや、もうシュークリームにお詫びして欲しいです。意味が分かりません。
スイーツを食べ終えた3人組が会話を再開します。
先の堅苦しい話題から一転、男Bが奇妙な逸話を披露し始めました。
要約すると、「山の中で巨大な鹿に遭遇した。角を含めれば4Mに達する大物。もう死んだと思った」こんな感じですね。
4Mだと? 嘘をつけ。そこまで巨大なシカがいてたまるか!
西宮市は、イノシシ、アライグマ、ヌートリアまで出没するちょっと変わった地域です。それでも4Mの鹿など聞いたことがありません。
そもそも、鹿はそこまで大きく成長しないでしょう。
とはいえ、気になったのでネットで調べてみると、以下の画像を発見しました。あれ?でかいぞ?
好奇心には勝てず、ついうっかり話かけてしまいました。
僕 「あなたが遭遇したのはこの鹿ですか?」
男B 「これはゼビオにある剥製のヘラ鹿です。日本にはおりません」
セビオ?日本には・・・いないでしょうね。けど、これが剥製?歩いているようにしか見えないのですけれども。
て言うか即答かよ。無駄に詳しいな、おい。
本意ではありませんが、議論を吹っ掛けられたのですから受けて立たねばなりません。どこから突っ込もうかと思案し始めた矢先、まさかの横槍が入りました。
男C 「はりつめた~ゆみの~♪」
僕 「はい?」
男C 「ふるえるつ~る~よ~♪」
僕 「え?もののけ姫?」
男C 「月の光に~♪♪」
ダメだこりゃ。聞いちゃいねぇ。
先の会話にて、3人組の中で最も知性を感じさせたのが男Cです。なぜか唐突に歌い始めました。なかなかの度胸ですね。大物かよ・・・。
状況を整理しましょう。ここは客の大半が女性の洒落たカフェです。
その一角に、パフェ男、シカ博士、もののけ姫、そして僕。
これはいけませんね? このままでは、僕まで仲間だと勘違いされてしまいます。残念ですが撤収する以外に選択肢はないでしょう。さらばでござる。
なお、大鹿の件に関しましては消化不良です。有力情報をお持ちの方はご一報ください。記事として投稿してくださってもOKです。どうぞよろしくお願いします。
改めて考えてみると花見シーズンですから、本当は桜の下で、呑めや唄えやの宴会をしたかったのでしょうね。泣くなくお花見を自粛したのでしょう。
浮世離れした3人組に幸あれかし。
(おしまい)