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地方のリアル_事業承継編Vol.2

こんにちは。
株式会社AIKASUの長田です。

前回の投稿もお読みいただきありがとうございました。
(https://note.com/nagata1111/n/nf0c767fc028f)

本日は、私がサポートさせて頂きました地方での事業承継事例についていくつかご紹介します。(実際に親族承継をした後のケースや、準備期間のケースなど多様なケースを知ってほしくご紹介させていただきます。)

ちなみに、私は一般社団法人日本金融人材育成協会認定の経営承継アドバイザーという資格を取得しております。

https://www.kigyou-keiei.jp/voice/ms_adv/264483


経営承継アドバイザーは、「小規模・中小企業の事業承継をどう支えるか」という目線に立って、技術やテクニックだけではなく、経営支援そのものを通じて、経営に伴走して支援できる人材を育成することを目的として創設された資格です。

色々と当時の取り組みを応援いただいて、資格の学校TAC日本金融人材育成協会の後ろ盾のもと、セミナーにも登壇させていただきました。

実際のセミナー内容のサムネイル画像


事業承継というのは、事業を持続、発展させることを狙いに、現経営者と後継者の意識をそろえていくことが何より大切です。

特に経営資源の中でも資産の承継(株式、不動産、保証)だけだけではなく、
ひと(人的資産)、しくみ(構造資産、組織資産)、つながり(関係資産)における承継面が今まであまり注視されてこず、専門の士業も不在の状態でした。

私自身この資格が世にでたタイミングで受講し、2022年1月17日に第4号として取得いたしました。
もちろん自分で全部何とかできるわけではないので、経営承継アドバイザーとして経営者と士業のハブになりながら支援をするシーンもございます。

関わった企業の承継を成功にリードし、私が離れても持続的に成長できるような仕組み構築をするご支援をしておりました。

この、ひと、しくみ、つながりというのは、経営承継アドバイザー資格の取得の際に学ばせていただいたことです。
今日はこの3つの要素で承継について分解しながら事例を解説していきます。


・ひと(沖縄県飲食業の事例)


ひと(人的資産)についてはほとんどの方がイメージしやすいかと思います。
沖縄県飲食業親子間での承継の事例です。あくまで経営承継アドバイザーの立場で、外から伴走させていただいた立場の目線で言葉を連ねていきますこと、ご了承くださいませ。

私が出会った時には、数年前から息子様が代表取締役社長として就任し、事業承継は終わっておりました。ただ、当時コロナ禍ということもあり、同業種はどこも悲鳴をあげておりました。

そんな中、息子様から相談を受けサポートを開始しました。
コロナ前と比較して、年商は75%ほど下落。想定よりも大きな赤字。
そんな中、社長がなんとかしようと様々な施策を思慮し、現場に指示をしております。ただ、会長に就任いただいているお父様が経営状況を心配して各店舗に自ら出向いて社長がいないときに指導をしておりました。

私も何度か似たような事象に携わらせていただいてきていますが、本当によくあるケースです。
親子ともに、会社経営を当事者として考え、なんとか打破すべく必死に向き合われている状態でした。

そんな中、当時の経営幹部はすべて会長のころからの幹部。
社長にとっては正直どこまで認められているかわからないような状況で、幹部メンバーにお願いをしながら経営を支えてもらっている状況のようでした。

早く成功体験を得て、自分の経営チームを組成し、会社経営を自分でコントロールできるようになることが急務な状況だと感じました。

まず、着目したのは幹部候補です。当時幹部ではない右腕候補の人材がいました。社長より少し年下で独立志向の高い人材です。一緒に面談をする中で、社長についていくかどうかを本当に悩んでいる状態だということが分かりました。

色々と話す機会を重ねる中で、「覚悟の問題。腹くくって、社長と一緒に良い会社を自分の意志を込めて創ったらどうですか?」と私からも強い言葉で話をしたのを覚えています。もちろん社長には事前に相談のうえで伝えていますが、正直イチかバチかでした。

その後、必死に食らいついて社長の右腕として立ち居振る舞いをするように努力をされるようになり、発言や行動が変わり始め、社長から大きな期待を得るように変わっていきました。現在は専務取締役として活動されています。

次に、幹部陣の皆さまです。
ひざを突き合わせて話をすると、社長の頑張りを心から理解しており、「自分が邪魔にならないようにしなきゃ」と気を使っていらっしゃることがわかりました。応援をしてくれていることがわかり、社長も元気をもらえたようでした。大先輩として、社長が進めたいことをどうやったら進めれるか?について沢山の助言やサポートをいただき、経営の改善に協力をいただきました。

そして社員の皆さまです。経営状況について社長から不安にさせていることのお詫びと、そんな中でも日々頑張って働いてくれていることへの感謝。そして代表としてどんなビジョンを実現していくのかの宣言。なんどもなんども社員一人一人に理解してもらえるように説明を続ける社長の姿は本当にご立派でした。あの本気が一人一人に伝染していったのだと思います。

その頃から会社の求心力が、会長ではなく、社長になだらかにシフトしていくようにお見受けしました。
もちろん、会長には力を借りたいことが沢山あるというのも本音ですので、会長には業界団体のような組織を立ち上げていただきその団体の会長に就任いただいております。
自社だけではなく、地域や業界の未来のために、歴史や文化を発信していただくようになりました。

プロジェクトの後半では、会長も、社長中心に会社が成長していく様をみていただき、喜んでいただきました。関わった身として、先代が安心いただいたのは本当に嬉しいことでした。

会長も社長も専務も、幹部の皆さんをはじめ、社員の皆様も、よくわからないよそ者の若造がいろんなことを社長と進めていく中で、本当に受け入れてくださったなと思います。

ご支援で携わらせていただいた2年間で350%ほどの売上向上に加え、しっかりと黒字体質の会社にV字回復を成し遂げられました。
もちろん、今回は「ひと」に着目しているので、その他は割愛しますが、税理士様と連携して月次決算の締めサイクルを短期化、レジシステムの統一、ABCを拝見してのメニューの削減、価格変更(UP)、MVVの再策定、人事制度の策定とリリース、目標設定、マネジメント研修などを幅広くご支援させていただきました。

結局は、社長や幹部、そして何よりも社員ひとりひとりの取り組みにより社長が狙っていたコロナ後のサービス品質(接客含め)の向上により、業績改善を行えるような会社の体質づくりが成功したのだと思います。また詳しい話を聞きたい方がいらっしゃいましたら、社長をお誘いして色々とオフ会でもやりましょう!

・しくみ(愛知県コンサルティング業の事例)

こちらは構造資産、組織資産に着目して再生を行った事例です。
愛知県に本社をもつコンサルティング業の社長から、今後の事業拡大に不安があるということで売却をしたい。
その為に経営の仕組み化で力を借りたいというお話でした。

実際に現場に入ると、この会社の強みは「社長の知財」や「タレント力」と言われていました。表面的にはそうなのだと思いましたが、色々と一緒にお仕事をさせていただくなかで、しくみ(構造資産、組織資産)に価値づけしていくことができることに気づきました。

同企業は、そもそも日本国内でBtoCで認知度が高いアプリケーションのツールを活用し、企業のPL向上を支援しております。構造上、アプリケーションがなくならなければ仕事は沢山ある状態。その中でも社長が日本で知名度はトップクラスでした。

市場の状況や競合、そして同社のビジネスモデルを把握するにつれて、これはビジネスモデルの構造に強みがあるからそのモデル化を進めれば社長が将来離れても事業拡大ができると確信できました。

そんな中で着目したのは組織です。
その時の組織は、ひとりひとりの社員が自ら営業し、受注した顧客を自らコンサルティングするようなプロフェッショナルの集まりのような集団でした。そのようなプレイヤーが豊富にいることも資産ですが、今後の事業拡大から逆算した場合組織の作り方を少し修正する必要がありました。

詳細は割愛しますが、簡単に述べると「プロフェッショナルはそんなにいないし、採用難しいし、コスト高になる」ということです。
そのため、営業職、コンサルタント職と組織を区分し、職種に求める能力要件をシンプルにし、育成ができる&育成スピードが早まるような組織に再編しました。

最初は軋んだ部分も正直あったのですが次第にその分岐により人材育成が進み、その後採用した人材たちからもハイパフォーマーがどんどん生まれてくるようになりました。

適性に合う業務に配置し、ひとりひとりの業務の複雑性を縮減することで、人材の育成スピードやサービスの提供品質を担保するようなゲームに変更したわけです。

また、ひとりひとりが業界の中でも顔が利く人材だったため、社員の力を借りながら中途採用を進めました。即戦力で、優秀な人材を採用コストをかけずに採用実現をしていきました。

1年半一緒に取り組ませていただいたのですが、業績が下降トレンドであったプロジェクト開始前の状況を打破し、創業以来最高売上を更新することができました。
最終的に、集客面でシナジー効果の大きなパートナー企業との出会いがあり、グループインをさせていただく機会をいただきました。
創業社長は、経営ではなく自身の強みとするタレント力や知財の編集などの業務に集中する環境ができるようになりました。

ここからの学びは、会社の承継を行うにあたって、構造資産、組織資産を創り込むことの重要性です。

私はよく、純資産を厚くする/ビジネスモデルが成立している/社長不在で回る仕組みがあることが高値でバイアウトするための要素だと話しています。
まさに社長不在で回る仕組みづくりがこのあたりの話になるのです。

・つながり(佐賀県印刷業の事例)

最後の事例です。こちらは佐賀県で印刷業を営む事業者様の承継を見据えた経営の磨き上げの事例です。
こちらもいろんなことを行ったのですが、「つながり」という関係資産に着目をしてお話しできればと思います。

印刷業と聞いて皆さんが思い浮かぶと思いますがこの業界は業界再編が行われています。各社自社単体で事業を営み続けることが難しくなり、顧客リストと従業員の引き継ぎ先を同業種の中で探して引き継ぐケースが多いのが実態です。

同社も苦しい経営状態でして、直近5年間赤字が続いていました。

ブライダル業界はコロナ禍でシュリンク。その業界とのお付き合い金額も連鎖的に減少。学校法人のシラバスなどの印刷需要も、DXが進むにつれてなくなってきました。

事業、サービスの需要が減っていく中で資産価値があるものはなにか。
そこを考えた際に見出したことが、社長や専務を中心とする経営陣の地域内での繋がりでした。

顧問税理士の先生はとても一生懸命に指導いただき、金融機関と再生計画を相談しながら融資をいただくためのサポートを手厚くいただきました。
また、社長のお付き合いのあった大きな印刷会社の元社長(引退したばかり)に顧問に就任いただき、業務オペレーションのムリムダムラの削減をご一緒いただきました。

加えて、営業開拓を行うために息子様の知り合いの業者からWeb領域の制作やデザインを支援できるような機会をいただき業務提携をして商材を増やしました。
今までは印刷需要で商談をしていただけの顧客先に、あたらしくWeb領域の商材をご案内するための機会を創りながら追加で印刷需要を引き出すような営業を繰り返されました。

地場の金融機関の担当者も経営陣にサポートをいただき、共催でのセミナー機会で共同集客をしていただいたりしました。

印刷屋ではなく、情報発信屋として手段を問わず支援を行うことでじわじわと業績を改善して磨き上げが進んでまいりました。
また、同社に対する支援者のひとりに、ふるさと納税の中間事業者で有力な方との出会いもあり、ふるさと納税の紙印刷の発注をいただくようになりました。

もちろん、営業組織の再編や管理指標や管理帳票の仕組み化、経営会議の仕組み化なども進めたわけですが何より同社の経営改善にヒットしたのは、関係資産を整理することでした。
今後は息子様もしくはどこかの企業に承継を進めていかれることと思いますが、関係資産の見える化や、引き継ぎの準備もこの期間で一定できておりますし、5年ぶりに黒字で着地しましたので少しは安心できる状態になったことかと思います。

・まとめ

事業承継の前後ではひと、しくみ、つながりの3つの要素をもとに経営資産を捉え直し、ないなら磨いて作り上げていくことが重要です。
あくまで様々な角度からおこなった経営の磨き上げの中の一部分だけを切り取って書き起こしたものでした。

ひとつひとつ体系的にまとめると大変なのでニーズがあればオフ会や勉強会で色々とお話しさせていただきます。(各社の社長にもご一緒いただこうかな。。)

ただ本当に困っているのは、こういう手ほどきや実支援が必要な企業が地方に多いにもかかわらず、支援できるプレイヤーが少ないということです。
もしよければ、各エリアごとに担当いただくような組織を構築し、会社の枠組みを超えて連携して支援体制を創っていけたらいいなと思っています。

とはいえどう進めるか、どんな機関と手を取るかなども大事だと思いますのでそのあたりは私も手探りですが思考し、相談をし続けながら構築していきます。
同じようなご支援をされている方がいらっしゃいましたら、情報交換したいです!


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