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父との思い出

五の段

うちは市場の中で魚屋でした。
昔の古い市場。
自動ドアなんてものが無くて風がすーすー通る、あけっぴろげな市場。
入口はお菓子屋さんと野菜屋さんでした。
中には乾物屋さん、お総菜屋さん、肉屋さんとか・・・
古き良き時代でした。
二階で生活している家族も結構いました。

私は時々帰りの遅い両親を迎えに行っては、いろんなお店でおしゃべりしたり、二代目のお兄ちゃんと遊んだりしていました。
一軒だけ「絶対通ってはダメ」っていうお店以外はうろうろしていました。

いつものように市場に行って、お菓子屋さんで駄菓子を買って、入口で小さな白い石を拾って何か書いていたと思います。
ふと学校で習っていた九九を書いたらすごい発見をしたと思ったんです!
5×1=5
5×2=10
5×3=15
なんと!
下一桁は5と0の繰り返し!
これは覚えられそう!!すぐに!!!
と書いて書いて覚えました。
そうしたら授業参観があることがわかりました。
そうだ、もしこれが出たら手を挙げて発表しよう、と。
翌日も、翌々日も小さな白い石を探しては駄菓子屋さんの前で書いていました。
時折白髪頭の駄菓子屋のおばちゃんが「へ~勉強しよると?」とか話しかけてきてくれました。
おばちゃんはほぼおばあちゃんでしたが、今の私からしたらちょっと上くらいの年齢だったのかもしれません・・・
おっと話を戻します。
おばちゃんに「聞いて、5×1=5・・・」とひとしきり言い終わるとほめてくれました。
お得意様ですから(笑)
褒めてくれなくては商売に差し障りますw

褒められて~結構暗記でイケる、と思いました。

授業参観の日は珍しく、というか最初で最後だったかも・・・父が見に来てくれました。
想定通り先生が九九を・・・
「言える人~」
それまで自己主張なんてしたことなかったのでためらいましたが、なんのために夜市場の入り口で時間を過ごしたのでしょうか。
思い切って手を上げました・・・
先生も「え?まじ?あ、そう?」みたいな・・・
で、発表しました。
暗記していた五の段。
練習通り全部言えました(^^)/
やりぃ!
なんか静けさが漂い、ぱちぱち拍手されて私の舞台は終わりました。
父は教室の後ろでもともと小さいのに、もっともっと小さく小さくなっていたのでした。

家に帰ると、父が家族に「びっくりした!まさか手を挙げて発表するなんて思ってなかったから・・・わちゃ~って後ろに隠れた。心臓が止まるかと思った」って(笑)

まず思い出第一弾(´∀`*)ウフフ

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