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霜降り明星・粗品はマーケティングの天才である

最近、粗品のユーチューブを見たのだが、彼はマーケティング力がズバ抜ていると感じる。

粗品にお金を払うことが一種のエンタメ化するシステムを構築しているからだ。(例えば、粗品の配信に高額スパチャを投げる人のことを「太客」と呼び、単独ライブで「太客」に手を上げさせて粗品と会話させてみたり、最近の動画だと、太客を集めて、「粗品にお金を貸せる権利」をめぐって生き残りをかけたゲームをやらせたり)

マーケティングとは何か、という定義は人によって違う気がするが、私は簡単に言うと「売るための仕組みづくり」というのが一番分かりやすいと思っている。この売るための仕組みづくりが粗品は天才的にうまい。

一般的な商売の場合、「私の扱う商品が良ければ買ってくださいね」だとしたら、粗品は「俺に金を使え。使わない奴はとっとと帰れ」になるだろうか。そして粗品のファンは、そういう風に扱われることを心から楽しんでいる。このやりとり自体がある種の粗品の世界観であり、エンタメなのだ。

この書き方だと何か粗品がとんでもなくひどい人間のように感じるかもしれないが、彼はその辺りの塩梅がものすごく上手いというか、最終的に「でも粗品ってお金を払いたくなるくらい魅力的な奴だよな」と納得させてしまうような人間的魅力の持ち主だ。(恋愛と似ていると言えば、少し分かりやすいかもしれない。よく知らない相手のことを少しずつ知っていく中で、「素敵な人だな」と感じたりするような場面は、誰しも経験があるはずだ。それは、その相手といい塩梅で接することができ、最終的に「気になってしまうくらい魅力的な人だ」と納得させてしまうような何かを、その人が持っているからだ。粗品もそれと似た魅力を持っている。ただ、動かす対象が異性の恋心ではなく太客のお金というだけだ)

人の魅力を形成する一つの要素として「相反する極端な要素同士が合わさって、一つの統合された人格を形成している」というものがあるが、粗品はこれが特に強いタイプかもしれない。

お笑いでM-1とR-1ダブル優勝という偉業を成し遂げ、音楽の分野でも精力的に活動。大阪の有名な焼肉屋の息子で、同志社大学出身という知的な一面もありつつ、せいやとの熱い話で泣きだす人情味のある一面もある。なのに生涯収支マイナス3億円のギャンブル狂いで、結婚歴があるにも関わらず真性包茎かつ童貞。金にがめつい。こうして書き出してみると、いわゆる世間でいう「できた人」からは外れまくっている、相当破天荒なヤツである。「すごいヤツ」なのか「いかれたヤツ」なのかよく分からないけど多分、「イカれた部分」を凌駕するくらい「すごい部分」を持っている、そういうやつなのだろう。多くの人にそう納得させるくらい、バラバラな要素を一つの人格の中にまとめ上げていることが粗品の魅力だと思う。ねじれた人間力とでも言おうか。

まぁとにかく、粗品は今、一番気持ちよくファンにお金を使わせている人だと思う。彼のマーケティングの上手さは、例えば一見マイナスプロモーションになりそうな言動が逆に後になって高く評価されるとか、そういう言動がヤフーニュースのトップになって、回りまわって粗品の利益になるとか、見る人が見れば「これは粗品の立ち回りが上手い。マーケティングの成功例だな」と分かるような形で、より評価されていくだろう。


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