旅の話.15 カンガルー島②
リトルサハラ
カンガルー島を訪れる観光客は、大体が1泊2日のツアーだった。毎日いろいろな人が来て、次の日に帰る。1週間もいた僕は、毎日出会いと別れを繰り返した。
ある日、出会ったばかりのしんさんと、ゆりさんと、僕の3人でレンタカーを借りて島をドライブしようって事になった。2人はまだ観光をしていないので、僕が案内をする。交代で運転する事にした。最初は免許取りたてのゆりさんの運転で、“リトルサハラ”を目指した。
この島の道路は、ほとんどが未舗装だった。街の周囲と、島の真ん中を東西に真っ直ぐ伸びる一本道だけが整備されていた。
“リトルサハラ”は、森の中の砂丘だった。
なぜかそこだけ、真っ白な砂漠になっている。裸足になって丘を登ってみると、砂の白、森のみどり、空の青、の3つの色しか存在しない世界だった。
コアラとの遭遇
次に向かったのは、フリンダーズ・チェイス国立公園だ。ここは、カンガルーやエミューやコアラが普通にいる。そのへんに落ちている葉っぱを拾って「はい」って差し出すと、「どうも」って感じでカンガルーが受取って、食べてくれる。コアラは普段、高い木の上にいるが、この日は目線の高さにいた。触ってはいけないので、近づいてよく見た。案外でかい。全く動かない。目が据わっている。
トイレから戻ると、コアラの前にゆりさんがいた。そして、コアラが動いていた。がしがしと木を登り、やがて木を揺らしながら「グオオオオ~」と雄叫びを上げた。猛獣のようだった。仲間を呼んでいるようにも聞こえ、コアラの大群がドドドドッと押し寄せて来るシーンを想像して怖くなった。
後で知ったが、ゆりさんがユーカリの枝を拾って、食べさせようとしたら怒ったんだそうだ。コアラだって怒るときは怒るのだ。
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