旅の話.16 カンガルー島③
リマーカブルロック
この島で一番、僕が行きたかった場所で、見たかった岩だ。そこは高まり過ぎた期待を、軽くその何倍も上まわる、すごい場所だった。
長い長い年月をかけ、風と雨に削られてこうなった。見る距離や角度によって、様々な印象を受ける。人の手がいっさい加わっていないオブジェだ。自然の中に神が存在するならば、これは神の作品って事だ。
だいぶ日が傾いてきた。この下にある岩場の海岸は、荒々しく打ち付ける波のしぶきで霧がかかったように見えた。それは太陽の光で黄金に輝いて見える霧だった。幻想的な美しい風景だった。
もっと近くまで行って見たい。あの辺は濡れてないから、あの辺までなら行っても大丈夫だろうと目星を付けて、行こうとした直後、今までと比べものにならない大波が来て、あの辺どころかこの辺までが波をかぶった。
もし行っていたら、波にさらわれていた。死んでいたかもしれない。自然に対して畏敬の念を強く感じた出来事だった。