ベテランが大切にされないのは日本だけかもしれない。(2010/12/1付)

記事の初公開日:2010年 12月 01日
エル・クラシコの映像を見ながら感じたのは、バルサは「バルサらしさ」に自信を持っているのに対して、レアルは最初から何かをなくしたように見えた。
あの純白のユニフォームが輝いて見えない。

レアルは今シーズン、カリスマ監督・モウリーニョにチームをゆだねて、レアルの象徴のような選手・ラウルゴンザレスとグティを放出した。
ラウル・33歳・下部組織時代も含め19年在籍。グティ・34歳・レアルの生え抜き、下部組織時代も含めると25年間在籍。二人とも輝かしい実績を持ち、レアルの象徴的存在だったと思う。
結果を残してより高い金額でのオファーに応え続けているモウリーニョは職業的にすぐれた監督だろう。しかし、彼の弱点はチームへの思い入れの薄さかもしれない。彼は自分のカリスマ性と力のある選手を揃えれば勝てると思っている節がある。その前の試合までに意図的にイエローカードをチャラにする汚い作戦まで実行したが、エル・クラシコには勝てなかった。
エル・クラシコやダービーマッチは「チーム愛」の闘いであり「誇り」の闘いでもある。
カリスマ監督が来ても、スター選手が来ても、チームの精神的支柱がいなくなったらそのチームは輝かないことが証明されたようなゲームだった。


横浜Fマリノスの松田直樹選手が、チームから来シーズン非契約の通告を受けた。
マリノスサポーターではない私だって、松田選手はマリノスの精神的な柱だと信じていた。
生涯マリノスにいるのが当たり前の選手だと疑わなかった。

海外に出る前の中村俊輔がいた頃のマリノスで、引っ込み思案な俊輔を引っ張ってくれていた頼りがいのある兄貴分。8年ぶりにマリノスに帰ってきた俊輔にとってもいい兄貴分でいてくれているのはゲーム中のゲーム後の、マツと俊輔の関係を見ていればすぐわかる。マツに手荒い祝福を受ける時の俊輔の特別な笑顔を見ても,マツがチームの精神的な柱だと実感していた。
マリノスは、そんな選手に来シーズン非契約を通達した。
他にも山瀬選手や清水選手など、今シーズン活躍してきたベテラン選手が軒並み来シーズン非契約となっている。

マリノスフロントの話によるとベテランの存在は、若手選手の出場機会を少なくしているから、新陳代謝が必要だということらしい。
こんなに若手に甘いチームがあるんだとびっくりさせられる。ポジションは挑んで勝ち取るもの。それがスポーツの世界ではなかったのか。
また、昨日チームの方針撤回とマツたちへの激励に訪れた400人に登るサポーターの声に、マリノスの社長は「サポーターの熱い思いを受け取った。来シーズンは絶対に優勝をめざす」などと、的外れで、事態をうやむやにするコメントを発している。
フロントのこんな態度がサポーターの不信感をつのらせるし、その不信感が、残った選手への謂れのない攻撃になってくることもある。
こんなゴタゴタもきっと選手達の大人な対応で、一応決着することになるのだろう。
心の中に傷とわだかまりを抱えながらも、表面的に納得したふりをしてサポーターをなだめるのは、日本ではいつでもどこでも選手達だ。選手達が、一番割りの合わない役割を背負わされてしまう。


チームの功労者やベテラン選手に対し敬意を表さず、若手選手に入れ替えるという風潮を作ったのは、W杯時の岡田ジャパンだと思っている。
南ア入りまでチームを引っ張ってきたベテランたちをはずし、彼らを「年寄りたち」と呼んだのは岡田さんだ。この「年寄りたち」という言葉にベテラン選手への敬意を感じる人がいるだろうか。岡田さんの”口罪”がマリノスフロントに及んだのだと思っている。

先週のバルサTVで、ジェラール・ピケがこんなことを話していた。
ピケは、マンチェスタ・ユナイテッドにも所属したことがある。

「マンUやイングランドサッカーの特徴として印象に残っていることの第一は、スペインでもそうだけど、それ以上にチームのレジェンドやベテラン選手に敬意をもって大切にしているところだ。
ロイ・キーンがいたときは、ロッカールームでのロイ・キーンの発言には、ファーガソン監督だって口を挟まなかった。」

ロイ・キーンに比べたら、松田直樹はまだ可愛い将軍様だろう。
でも、彼がマリノスのレジェンドであることは間違いないと思う。


お金がないなら、ないとはっきり言おうよ、マリノスフロント。
「かっこつけてると、ヴェルディみたいになるよ。」とは昨シーズン、浩吉監督のころからささやかれていたことでしょう。
俊輔の年俸で金がなくなったわけではないはず。俊輔は存在だけで十分年俸分は稼いでくれているはず。俊輔ファンとして、それは言いたい。

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