「そして、行ってきます」

記事の初公開日:2016年 12月 13日

佐藤寿人オフシャルサイトより「皆さんへ」(http://www.hisato-sato.net/?p=2488)

Jリーグを見続けるきっかけとなり、いまでもそのプレーにワクワクsる選手が2人いる。
中村俊輔選手と佐藤寿人選手だ
俊輔選手はデビュー当時からずっと気になる選手で追いかけている。
寿人選手に惹かれたのは京都との入れ替え戦だった。
J2降格が決まった試合後、泣きはらした顔で「このメンバー全部で必ず1年でJ1に戻るから信じて応援した欲しい」みたいなことをハンドマイクでサポーターに訴える寿人選手の姿が焼き付いている。
日本代表候補でもある寿人選手は降格したら真っ先にJ1チームに移籍だろうしそれは仕方ないと思われていたのに、その彼が真っ先にJ2に落ちたサンフレッチェで来シーズン戦うと意思表示した瞬間だった。
それからは、サンフレッチェの試合を見続けた。ミシャのサッカーはまだ出来上がってなかったけれど、魅力的だし、寿人選手もイキイキと戦っていた。あれから12年になるんだなあ。
ミシャが浦和に去って、森保監督になっても佐藤寿人はサンフレッチェにいた。生え抜き選手ではないけれどサンフレッチェといえば佐藤寿人というくらいの看板選手であり歴史の一部を象徴する選手になっていた。
その寿人選手がサンフレッチェ広島を去るという。
ここ2シーズンくらい、チームの若返りやミシャスタイルから森保スタイルへの変換もあってだろうが、寿人選手が出る場面が少なくなっていた。先発してすごく調子が良くてもルーチンみたいに後半から浅野選手に交代した昨シーズン、今シーズンも怪我があったり、ワントップにウタカ選手をすえるという方針もあって、最後頃はベンチにすらはいれなくなっていた。他のFWより劣るわけではないのに戦術上のことやチームの方針などで、若手にその席を譲るように促されている風に見えていた、
ファンとしては本当に悔しかった。寿人を越えるほどでもない若手FWが出ている理不尽さに耐えきれなくてサンフレッチェの試合を見たくなくなった。それでも今日はでるかなとスターティングメンバーはチェックする。今シーズンはそんな1年だった。
そして、心の中で思っていたのは「寿人、移籍しろよ」という願い。
でも、それもとっても冷酷な願いだということはわかっていた。寿人選手は広島が大好きでサンフレッチェが大好きで、骨をうずめるつもりでいることが手に取るようにわかるからだ。
それでも、やっぱり佐藤寿人は佐藤寿人らしい道を選んだ。
レジェンドとなって尊敬される道より一匹のストライカーの道を選んだ。
ものすごく悩み抜いたことだろう。その悩む姿が手に取るように想像できる。千々に乱れた気持ちを1つづつ整理して出した結論がオファーをもらった名古屋への移籍だ。

そして「佐藤寿人」がサンフレッチェ広島に関わる全ての人に残した言葉が彼のオフシャルブログに書かれている「皆さんへ」という挨拶だ。
すばらしい文章だった。圧倒されてしまった。
そして、なにより愛している場所を離れるけれど愛は繋がっているよという気持ちを最も的確に表す言葉を見つけ出してくれた。この挨拶の最後にある

「サヨナラは言いません。
ありがとう。
そして、行ってきます。」

これだけで、広島のファンも、佐藤寿人個人のファンも、これから行く名古屋のファンも納得できる。

どうしても残って欲しい選手が他のチームのユニフォームを着ることが許せないという人もいる。なぜうちで引退してくれない。うちのレジェンドになって欲しいと思う人もいるだろう。でも選手は自分の可能性や才能を目一杯使ってさらに次の可能性に挑みたい人たちなのだ。すでにものすごい努力をして選ばれてきた人たちは私が思い描くことができない自分との戦いをして確かな可能性を見出しているのだし、可能性があればチャレンジするという気持ちを持ち続けるから選手でいられるのだろう。
私たちが見たいのは選手として活躍する姿だし、彼らが見せたいのも選手としての自分なのだ。
来シーズンの佐藤寿人選手をしっかりと見て応援し続ける。それは長崎のチームの敵になることだからおかしいねという人もあるだろう。でも私にとっては中村俊輔と佐藤寿人はそんなことをはるかに凌ぐ存在なのだ。致し方ないよね。

振り返って、私の地元長崎のチームでも、契約満了になったが、他のチームを探して選手としての道を選ぶ選手もいる。彼の中で、まだまだ自分の技に磨きをかけ、戦えるという気力と可能性を見出しているからだろう。
またVファーレン長崎の歴史とともにあり、それこそ長崎のチームのスピリットを象徴する人が長崎をはなれることになった。サポーターに最も信頼されていたヘッドコーチも長崎を離れることになった。
経緯はわからない。
ただこう思う。
信頼し、未来を託したいと思っていた人たちだから「いってらっしゃい!」と送り出したい。彼らには「行ってきますね」という気持ちで旅立って欲しい。
そんな信頼関係をクラブは構築できているのか?
移籍や人事にはファン、サポーターは無力だ。だからこそ 「いつかぜひこのチームに帰ったきたい」と思ってもらえるクラブであってほしいと切実に思うし、願っている。
そんなクラブに成長していくという希望が見えればファン、サポーターは小さな力を振り絞って大きな力にまとめあげていく努力を惜しまないのだと思う。

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