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死を考える

死について考える。
そんなことを考える人なんて、そんなにいないだろう。
でも、人の死亡率は100%と確定しているので、誰しも向き合わなければならないのは事実である。

スティーブ・ジョブズも
『人は生まれた瞬間から死に向かって歩き始めている』
とスピーチで言っていた。
(これは、「自分の人生は限られているから、無駄に過ごさないで。自分の心と直感を信じる勇気を持って」という内容に繋がります。)

今回、死の臨床研究会に参加して、改めて死について考える機会を得たので学びをまとめようと思う。

ペコロスの母に会いに行く

岡野雄一先生の著書。2013年には映画化もされた作品。
母親との生活、死別、その後自分の闘病生活などの話をしていた。
その中で、

 癌で苦しい時もあった
 生きていることがリハビリ
 生きていることが財産
 生きるとは老いること
 老いる先に死がある
 生きている人にその人は蘇る

岡野雄一 先生

という言葉があった。

深い言葉ですね。

ONE PIECE好きとしては、ふと、ヒルルクを思い出す。

https://one-piece ヒルルク .com/news 

人は いつ 死ぬと思う?
心臓を銃で撃ち抜かれた時… 違う
不治の病に犯された時… 違う
猛毒キノコのスープを飲んだ時… 違う
人に忘れられた時さ…!!

ONE PIECE ヒルルク

この考えは、普遍の真理なのだろう。

私たちは、
本当は目の前に死があって,
でも遠い未来だから見ようとしてなくて、
自分の人生をどう生きるかなんて考えなくて、
今を過ごしていて、
でも、目の前に死が見えた時、受け入れられるのか、恐れ慄くのか、
その人次第で…。
死ぬときが、自分の人生の答えになるのだろう。
最期まで側にいてくれる人は誰?多くは家族なのかな。

と考えてしまう。

演題からの学び

1例目は、20代のスピリチュアルペインへのリハビリ介入
2例目は、家族が予後告知をしてほしくないと言われたとき医療者は?
という内容(だいぶぼかして書きましたので、意味がわからないかもしれません。)

スピリチュアルペイン

スピリチュアルペインとは「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」と定義され、将来の喪失(時間性)、他者の喪失(関係性)、自律性の喪失(自律性)から生じる苦痛です。

「ここまで頑張って、治療してきたのに、どうして悪くなっていくの」
「こんな姿になってまで生きたいと思えない」

という言葉からスピリチュアルペインを察します。

日常生活でもスピリチュアルペインはあります。

「彼女と一緒の大学に行きたくて一緒に勉強したけど、自分だけ落ちてしまった。」

 彼女との関係性の喪失(幸せな大学生活が消滅、将来性が消滅)
 頑張ってきたけど報われなかった(将来の喪失)
 これからどう進めばいいのか?(彼女という支えが消えた)

極端ですが、こんな感じのこともあるでしょう。

スピリチュアルペインへの介入は「付き添う」ことです。

人生の「意味」を見出すまで付き添う覚悟が必要です。本人が「意味」を見出すことができれば、スピリチュアルペインが軽減します。本人に代わって「意味」を見出すことはできません。だから、「覚悟」が必要なのです。

今回の演題では、
作業療法での介入例
 時間性…生きる意味を見出し、目的を持って関わる
 関係性…リハビリを通じ関係性を維持する
 自律性…患者が考え行動できるように促す 
  受動的…景色を見ながらマッサージ
  能動的…簡単なADL練習(small Goleを作る)
  ※医療者から見て可能な行動を目標にして成功体験を
   積み上げる
とまとめていました。

アドバンス・ケア・プラニング

アドバンス・ケア・プラニングACPは知られている言葉ですね。
今回の演題では、「もうちょっと前から話をしておけばよかったかもね。」という意見がありました。後々考えると、「早く話をしておいてよ」というケースもあるのは事実です。

よく、「余命を言わなくていいんですか?」という医療者がいる。
これは何を目的にしているのか?
‘予後告知’を目的とした説明を求められることがある。
実は、これは意味がない。
というか患者・家族を傷つけているだけ。

本当に大事なのは、「予後を伝えた先に何を求めているのか?何を変えたいのか?」である。

予後告知だけでは、患者・家族をいたずらに傷つけるだけになってしまう。
亡くなる時期が迫っているからこそ、「本人の希望に沿ってケアしたい」、「本人は家で過ごしたい、といていたから、その支援をしたい」と思うのである。

注意したいのは「死に際でも家に帰ることができた!」という医療者だけの満足になってほしくないこと。家族の本当の気持ち(話せなかった気持ちも含む)もくみ取って、方針を決める必要がある。

最後に

参加者の言葉を書き留めておきたい。
「医師も変わる時代になった」
「話してもらえるような人になりたい」

緩和ケアについてPEACE研修をほとんど受講している。治療医もACPを行う必要がある。少しずつ変化しているのだろうが、まだまだ変化が足りない、という在宅医の意見。病気を治療する、だけが医師の役割ではない、と改めて伝えたいのだろうと思った。

患者・家族に「気持ちを話して」と言っても、話せる人にしか本当の気持ちは話しません。だからこそ、医療者も‘人’として成長し、「話してもらえる」存在になる必要があるのだ。

患者・家族と医療者との関係だけでなく、その根底には「人と人の関係」があることは忘れたくない。

参考図書

ペコロスの母に会いに行く
禿げた息子がボケた母親の入所している施設に会いに行く日々を描いた漫画。認知症、介護の話をライトに読める本。気楽に読んでください。共感できる部分があります。

看護に活かす スピリチュアルケアの手引き 第2版
緩和業界ではレジェンド級の存在である田村恵子氏が編集しています。看護師にとっては必要なアイテムと言っても過言ではない。医師向けの本ってなかなか難しいから、医師も読んで、看護師と共通の感覚をもってケアができるようになるための本ですね。


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