T&Aマイナーエマージェンシーを受講してみた
マイナーエマージェンシー。
マイナーエマージェンシー 原著第4版によれば、
「生命を揺るがさない緊急事態」のことです。
内科医としては、
『内科系医師には馴染みの薄い、でも救急外来ではよく見かける外科系疾患』
という表現の方がしっくりきます。
今回、眼科、耳鼻科、整形外科、皮膚科領域の救急疾患の初期診療のトレーニング「T&Aマイナーエマージェンシー」を受けてきました。
やっぱり大事「ABC+バイタルサイン」
大原則は『患部以外は元気』であること。
気道(A)、呼吸(B)、循環(C)の異常がありそうと思えば、すぐ数値化する。そのために体温、血圧、脈拍、呼吸数、SpO2を測定する。
こちらでもやったように、次は「OMI」を行います。
O:酸素
M:モニタ
I:静脈ルート
問診は5W1H+LAMP
例えば、眼科領域では、
When:いつ? 受傷からどれくらい?
Where:どこ? 場所は?自宅?工場?農地?
Who:だれが? 子ども?成人?老人?
What:何が入った? 金属片?化学物質?
Why:なぜ? その時の状況は?
How:どのように? 両目に入った?擦った?視力・視野は落ちた?
Last meal:最終飲食
Allergy:アレルギー歴
Medication:内服歴
Past medical history:既往歴
時間をかけずに端的に確認する。
各論:覚書
眼科領域
・成分を調べる。アルカリ性物質?酸性物質?
・眼表面pH測定しpHの変化を確認。
・アルカリ性物質
例)石灰、セメント、肥料・農薬、毛染め液など
・「目に入った!」は「眼球洗浄」を入念に!
点眼麻酔液(ベノキシール1滴で麻酔できる)
生食洗浄 最低でも2000ml
上眼瞼の裏が見逃しやすい
・基本的に眼科受診を勧める。
・アルカリ外傷では、輪部上皮の障害の程度が創傷治癒と予後に大きく左右する(角膜疾患への外科的アプローチ 1992. )
・突然、片眼が痛みなくほとんど見えなくなったら、網膜中心動脈閉塞症を想起して、眼科緊急相談する。同時に眼球マッサージして血管に圧をかける。Golden time 100分以内。
・緑内障発作は、閉塞隅角の方で生じやすい。
白内障手術後は閉塞隅角になることはない→緑内障発作はない。
・緑内障発作は、眼痛、視力低下、霧視、毛様充血、賛同、対光反射の消失・減弱などがある。
・ペンライト法
右眼:正常
左眼:狭隅角 虹彩の鼻側側側に影ができる
耳鼻科領域
・鼻出血は前方出血が多い。鼻鏡で出血点を確認する。
・下を向いて、鼻翼全体を、15分押さえ続ける
・ボスキシガーゼ
ボスミン®外用液0.1%:キシロカイン®液4%=1:1(2,000倍)くらいから1:10(約10,000倍)くらいの割合で作成。ガーゼに浸して鼻腔に詰め込む。
※本コースでは、10分程度して取り外して、軟膏ガーゼで再度パッキングして再出血を防止するように習いました。
・外耳道内異物:特に虫!
ベビーオイルを入れて動かなくなった昆虫を鉗子で取り除く。
・鼓膜穿孔、聴力低下・耳鳴り・めまいがある場合は耳鼻科紹介が良い。
皮膚科領域
・受傷から数日間は熱傷の深さが変わる
・大まかな深さを把握する。
Ⅰ度:発赤のみ
Ⅱ度:水疱形成
Ⅲ度:白色~黒色化
・軽度熱傷は、15℃程度の流水で20分あらう。
ワセリンたっぷりのガーゼで保湿する。
・動物咬傷
1%キシロカインの皮下注で局麻してしっかり洗う。
ごしごし洗う。ゾンデで深さも把握しておく。
抗菌薬:オーグメンチン+サワシリン
破傷風トキソイド+免疫グロブリン
整形外科領域
・X線撮影の原則
痛いところに近い関節を2方向撮影(正面・側面)
健側も撮影して比較すると分かりやすい
・X線の読影:骨皮質の連続性、骨端線の破綻の有無
・X線で分からない骨折はある。
受診初日に画像で分からない骨折はある。
できるだけ翌日に整形外科受診を勧める。
・舟状骨骨折:Snuffboxの圧痛、舟状骨結節の圧痛
・三角骨骨折:小指球の圧痛
・月状骨脱臼:手首を過伸展したときに生じる
・橈骨頭骨折:肘関節の伸展ができない
・足捻挫の部位:前距腓靭帯>踵腓靭帯>>後距腓靭帯
・Ottawa Ankle and Foot Rule
典型的な足関節の内反で、
①外果の後下方6cm
②内果の後下方6cm
③第5中足骨基部
④舟状骨
に圧痛がなく、
免荷せずに4歩以上歩行できる場合はX線撮影を省略できる。
参考書籍
「マイナーエマージェンシー はじめの一歩」
初期研修医はもちろん、(外科領域も診療する)内科系医師にとって始めて手に取る1冊です。眼科、耳鼻科、皮膚科、整形外科、泌尿器科、外科の6つの領域にわたる軽症の救急疾患に対する初期対応を、豊富な写真、イラスト、動画を用いて具体的に解説しています。実践的なスキルの習得:具体的な手技や初期診療の流れを視覚的に学ぶことで、現場で即座に役立つスキルを身につけることができます。
フローチャート 整形外科診療
若手整形外科医、救急や当直予定のある研修医、そしてプライマリケアを担う内科医に最適な一冊。整形外科的な痛みを訴える患者に対する初期対応を、痛みの部位ごとにフローチャートを用いて丁寧に分かりやすく書かれています。