総合医育成プログラム研修記録「仕事の教え方」研修TEAMS-BI
「教えた」ようで教えたことにならない「教え方」は、
言って聞かせるだけ
やって見せるだけ である。
これで学習者は成長できるのか?
答えはNO!
そのために、「教え方」を学ぶ必要がある。
「教え方」はスキルであり、修得することが可能。
TEAMS-BIとは
Training for Effective & efficient Action in Medical Service-Better Instructionの略である。これは、産業界で広く導入されているノンテクニカルスキルトレーニングTWI-JI(Training within Industry-Job Instruction)をもとに筑波大学で開発された方法である。
TEAMS-BIは、仕事自体の知識、技能だけではなく、学習者が「正確に、安全に、良心的に仕事をすることを素早く覚えられる」ように教えることが大事であると考えている。
TEAMS-BIの基本概念に
『相手が覚えていないのは自分が教えていないから』
というものがある。
これは、どんな学習者にもしどうにより確実に仕事ができるようになる、という考えでもある。
教える前の準備
「誰に」、「どの作業を」、「いつまでに」修得させるかを決める。
初期研修医への教育をイメージすれば分かる。
例)「1年目の研修医に」、「末梢静脈からの採血を」、「2か月の研修修了までに」修得させる。
例)「2年目の研修医に」、「中心静脈カテーテル留置を」、「救急部ローテ終了までに」修得させる。
可能であれば事前学習を準備することが望ましい。
ちなみに、手技であれば、procedures consultがある。
教え方の4段階
第1段階:習う準備をさせる
緊張をほぐす
なんの作業をやるかを話す
その作業について知っている程度を確かめる
作業を覚えたい気持ちにさせる
正しい位置につかせる
緊張は集中力を落としてしまうため、学習者の緊張をほぐすことが必要である。
「最終的に〇〇ができるようになりましょう」と作業の完成形を示すことで学習者はなんの作業をするのかを理解することができる。
学習者の事前知識を確認する必要がある。学習者の理解度に合わせて内容を変更することができる。理解度を確認せずに「こんなことも知らないのか!」とならないように!
この第1段階で最も重要なのは、作業を覚えたい気持ちにさせることである。なぜその作業が必要なのか、作業の目的・意義を共有する。
基本的に意味のないことをさせることはない。
その作業を習得することでどのような成長ができるのか、どんな仕事ができるようになるのかなどを提示できれば、学習者は覚えたい気持ちになるだろう。
以外に忘れがちだが、学習者が指導者を観察しやすい位置に移動させた方が良い。見えないところで学ぶことはできない。一見は百分に如かず。
第2段階:作業を説明してやって見せる
主なステップを1つずつ言って聞かせ、やって見せ、かいて見せる
キーポイントを強調する
キーポイントの理由を説明する
まず、作業ステップを言葉で説明しながら、動作で示す。場合によって描いて見せる。
次に、もう一度作業を見せながら、各々のステップのキーポイントを強調する。
最後に、もう一度作業を見せながら、キーポイントの理由を説明する。
一度に全部を理解できる学習者は多くない。
学習者に一度に多くのことを理解することを強いない。
本講義では、「3回やる」ことが大事、と話されていた。
学習者の事前知識や修得度に応じて短縮できるところは短縮しても良いようだ。短縮できるかどうかは、第1段階の「作業について知っている程度を確かめる」ところで判断できる。
第3段階:やらせてみる
だまってやらせてみて、間違いがあればその場で直す
やらせながら、主なステップを言わせる
やらせながら、キーポイントを言わせる
やらせながら、理由を言わせる
最初は学習者に黙って作業をやらせる。間違いがあれば、その都度訂正する。誤って間違った動作を覚える前に訂正することが大事。
「学習者が分かった」と指導者が確信するまで行う。これをしなければ、「さっき説明しただろ。なんでわからないんだ。なんでできないんだ!」と言う指導者になってしまう。指導している作業ができたか否かの判断は、指導者が行う。
第4段階:教えたあとをみる
仕事につかせる
分からないときに聞く人を決めておく
確かめ方を決めておく
質問しやすい雰囲気を作る
指導はだんだん減らし任せる
一度も間違わずに作業をし続けることはできない。
1人で作業をし始めて間違いが起こる。
この時期に指導者のチェックが必要になる。
分からないときに聞く人を決めておいたり、質問しやすい環境を作っておくとよい。
作業分解シート
作業を分解する理由は、学習者にとって一度に覚える情報に限度があるためである。作業分解シートを作る理由は、指導者が順序良く、分かりやすく、必要なことを抜け漏れなく指導するためである。作業分解シートは、指導者のマニュアルとして活用ができる。
作業分解の進め方
手技の動作を「学習者が確実に覚えられ実践できるサイズ」に分解する。
このサイズは学習者の力量(能力)によって異なる。
キーポイントの注意点
『キーポイントに、曖昧な言葉は使わない、否定形は使わない』
キーポイントは、熟練者にとっての暗黙知を形式知にする工程である。
例)しっかり消毒する
これでは漠然として分からない。
学習者は「どうやって?どんなふうに?」と疑問を持つ。
「中心から円を描くように20cmの範囲でイソジン消毒する」と書くと
分かりやすい。
例)患者を間違えないようにする
学習者は「どうやってすればいいの?」と疑問をもつ。
どうやってすればよいかを書いてあげる。
「ネームバンドを確認しながら」、「患者にフルネームをいってもらい
ながら」とすると分かりやすい。
『キーポイントは箇条書き、最大3個まで』
学習者は一度に多くのことを覚えられない。
もし、キーポイントが4-5個になるのであれば、主なステップを分解する方が良い。
キーポイントの理由の3条件
成否:主義の成功・失敗に関わる内容
安全:安全な実施に関わる内容
やりやすさ:勘やコツに関わる内容
例)汚染防止のために:成否
感染予防のために:安全
穿刺しやすいように:やりやすさ
※キーポイントの理由では否定形は用いてよい。
所感
本講義では、「教える方法」を学んだ。
学習者を特定し、どのような内容を教えるのか、具体性をもつほうが作業分解シートを作成しやすい。作業分解シートは、学習者に応じて主なステップが変わるが、初心者レベル(初期研修医くらい)のものを作成すると、学習者に応じて、ステップをまとめて教えることもできる。
作業分解シートは、熟練者が無意識で行っている動作を言語化していることになる。どうしても1人で作成するのは難しい。複数人で行うほうが気づきを得られる。
TEAMS-BIはACLSでも導入されいてる有名な手法である。
後輩が育たない、部下が成長しない、という場面で、「もしかしたら教え方が悪いかも?」と考える。その時にTEAMS-BIが役に立つ。知っておくことに損はない。