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夢の中の話をきいてよ

どんな夢をみていたのか、完全に忘れた。
強い風が吹いて、霧が散らされるように。
とっかかりを思い出そうとして手を伸ばしても逃げてゆく。

残っているのは何となくの雰囲気と不安で心細い気持ち。
先ゆきがあやうげな、胃がかすかすになるような気持ち。

夢をみている時は、それが夢だとは思わない。
現実世界と同じように、
ただ自分がそこに存在していると感じている。

夢をみている間は現実世界のことは完全に忘れていて、
これが現実だと思い込んでいる。
そして、夢特有のふわふわた設定とか、
ご都合主義なイベントにまどわされ、悲しくなったり不安になったりする。

どっちが夢なのか、と考えた過去の偉人がいたようだけど名前を忘れた。

夢でみていた世界が現実で、
いま覚醒していると思って見ている世界が、
ほんとうは夢の世界なのではないか、という話だ。

しかし、二つの世界は並列ではないとぼくは思う。
現実の世界が、夢の世界を内包している形になっている。
現実に生きている人間が考えた、いわば空想の産物が夢なのだ。

いや…


それも逆なのだろうか。

夢の世界が、現実を内包しているのかも知れない。

そもそも私たちが五感を駆使して認識しているこの世界は、
われわれが認識しているような形をしていないという説もある。

この世界を「現実」ととらえることが果たして正しいのか。

現実世界は脳の中にある。

それを包みこむ夢の世界。

そして更にそれを内包する大きな世界がある。

体の外側に世界が広がっていると考えがちだが実はちがう。
自分の内に入っていくのだ。

世界は、自分の中にある。
どんどん奥に進んで自分の根幹たる中心のところに、
いちばん大きな世界がひろがっている。

世界は内側につづいている。

(了)

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