【小説】その永久機関

 エナジーが視認できる種族がいるというのは、御伽噺で聞いたくらいに思っていた。本来、目というものは受動的な機能を持っている。光を受けることで、物理的なものが見えるようになる。

 何か特殊なエナジーを受けることで開眼するのかもしれない。

 レーザービームの嵐をかいくぐって目前を飛んでいく戦闘機のパイロットには、そのレーザーの軌道を少しだけ早く認識することができる。だから避けられる、そういった理屈だ。

「あとどれくらいで着くの!?」
 私が無線で尋ねると、
「もう少しみたいだ。このまま着いて来れる?」
「誰に言ってるの! この銀河最強のパイロットの私よ!」
「オーライ」

 こんなところで撃墜されるつもりは毛頭ない。
 彼の縫った隙間を、うまく利用して避けていく。砲台からのレーザーが減って来た。

「そろそろ自滅する領域まで来れたね」
「レーザー撃つとってことね」

 着陸する。だだっ広い鋼鉄の足場。
 入口を見つけてその中に入る。
 大きな輝いている球体がある部屋に繋がっていた。

「これが……?この兵器の動力源なの?」
「そうみたいだね、核融合している小さな星みたいだ」

これが私の求めていた永久機関なんだろうか。
これさえあれば世界のエナジー不足を解消し、平和をもたらしてくれるのか。

「これは君が求めていたものじゃないみたいだよ」
「えっ? なんで? すごいエナジーなんでしょう?」
「そうだね、でも、これは――」

 彼はそう言いかけて、一呼吸置き、

「一つの銀河を圧縮して作った、怨念のエナジーのかたまりみたいだ」

 それはつまり、屍の上に作られたエナジー。

 でも、生き物はそういったものの上で生きている。

「持って帰るかい?」
「そうね、でも」
「?」
「私はこんなものより、君が欲しいかな」

 きっと私からは、愛のエナジーが見えているんだろう。
 赤くなって俯いた彼は、
「君がこれを悪用する人じゃなくて、本当によかった」
「あなたを悪用するつもりだけどね」
「ははは」

 きっと私たちの心の中にも、永久機関はある。

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