ストレンジャー『(4)ストレンジ覚醒』
*
十五分後。
僕はわりと無事だった。
「なんで、なんでよっ」
「なんでって、お前らがトロいからだろ」
「で、でもっ、二人がかりなのにっ!」
人形だけでなく、本人も大きなハサミで武装した。途中から。
でも素の僕よりどっちも動きが遅くて、どうしようもない。
「くーー、悔しいっ」
「もっと鍛えないと。どうやるか知らないけれど」
あ、空間の一角が割れて、両手を合わせて祈っている友莉が入って来た。
「靭さん!大丈夫!?」
「意外と大丈夫」
「……靭さんって強いんだね、素敵」
「そうみたいね。で、」
もうなんか聞くのも面倒だし、嫌だけれど。
「友莉、君の能力は?」
「私は女性の天使を操ることができます」
スゲーな。
「じゃあ、後は頼んだ」
「靭さん!」
「はい」
「それは無理です!私はあんまり強くないです!」
「いやでも、流石に僕も倒すことはできないと……」
「足手まといが増えたか!?」
実質、これで一体一。
友莉の前には天使がおり、そのこの世の物と思えない美貌と、長剣で、人形と戦ってくれている。で、僕は、またこの長身の女の攻撃を避けているんだ、が。
反撃の手段がないと、流石に疲れてくる。
「なぁ、友莉!」
「はいっ!」
「その能力みたいなやつ、僕にもできないのか!?」
「えっ!」
友莉が嬉しそうにこちらを見ている。
「巻き込んだら、駄目かなって。静かに出て行こうかなって。家事やりながら色々と考えたんです。でも――」
「ああ、もう御託はいい。疲れた!面白そうだしいいよ!巻き込まれてやるよ!」
「はい、じゃあ、アンちゃん!」
「そいつアンちゃんって言うんだ……」
アンは大きく人形を弾き飛ばし、その隙にこちらへ矢を向けて――
「えっ、避けていい?」
「当たらないと能力開花しません!ちょっと痛いらしいです!」
当たった。
おい、ちょっとじゃねえええええええええいてえええええええ
その痛みが走ったのは実質一秒ほど。
僕の記憶を辿ったようで、走馬灯が見えたあと、僕に相応しい力をくれるらしい。
乗り越えて来たものに思いを馳せながら、これからを憂う。
「おはよう!靭!」
「えっ、何、喋るの!?」
上から振り下ろされるハサミを避ける。
「あっ、そういうのもあるみたい!」
友莉が嬉しそうに言った。
「自立型とは厄介な……」
三本の足のあるカラスのような丸い鳥が肩に止まっている。
「喋ることができるよ!言うことも大体聞くよ!」
「全部じゃないのか!?」
「友莉さんにだけは歯向かえないよ!」
「まあそれはいい!って、いちいち聞かないと!」
今度は突きを避けた。
「こいつをなんとかするんだね!」
「そうだ!」
カラスは空気を吸い込んで、火を吐いた。
おおお、わかりやすく強い。
「やばい!」
長身の女は叫ぶ。しかし、変殺し能力は燃えてなくなった。
「きゃー、靭さん凄い!」
友莉はさらに喜んだ。
カラスが喋る。
「凄いでしょ!」
「まあ、確かにこれは……」
空間は戻らないが……。
「なんてストレンジだ……」
長身の女は戦意喪失していた。
「そんな風にも言うのか」
「ストレンジ、で、自身をストレンジャーって呼んでいるんです、みんな」
「みんな……やっぱりいっぱいいるんだな……」
「はい」
「もう駄目だ。私の負けだ」
高身長の女は座り込んだ。
「空間こそこのままだが、しばらく私のシーたんは出てこれない。相当なダメージを負ったからな」
「なんだっけ、ジョジョの奇妙な冒険って漫画のスタンドは、自身にダメージがいくけれど、これは来ないのか?」
「ああ、そこまでシビアじゃない。だから無事な私をどうにかするんだな」
体育座りで拗ねている。
うーん、何かをどうにかするつもりはないけれど。
「友莉、やっぱり色々と聞きたいことはあるんだよな?」
「はい、少しお話させてください」
「わかった」
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