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ナポリ・カプリ島

(6) 水彩スケッチで巡るイタリアの情景

ナポリ・カプリ島

 カプリ島はナポリの南西約30キロのところに在り、高速船で40分ほどかかる。5月下旬の朝10時ころ、快晴のカプリ島に着いた。
 早速、中型のモーターボートで「青の洞窟」に向かった。モーターボートは、洞窟に入るための小舟を曳航して行く。この絵の舟がそれだ。

 洞窟の前には、もう大小の船が集まって来ていた。やっと順番が来て、洞窟の中に入る。入り口は非常に狭く、思い切り身を屈めなければならない。「青の洞窟」は、入り口から差し込む太陽の光が、白い石灰質の海底に屈折反射し、それで海面が青く輝く仕組みになっている。したがって、波穏やかな晴れた日でないと観光には適しない。運よくこの日は好条件に恵まれ、洞窟は、透明感のある、神秘的な深い藍色に満ちていた。

 すると、私が乗った小舟の船頭さんが、いきなり唄を歌い出した。ナポリ民謡だ。若い男性の歌声は、狭い洞窟内に反響し、圧巻だった。終わると、あちこちから、ブラボーの声が飛んで来た。
 洞窟を出て、小舟からモーターボートに乗り移るとき、その若い船頭さんに、ブラボー!グラッチェ!と言って、気持ちばかりのチップを渡すと、日焼けで真っ赤になった顔をクシャクシャにして、グラッチェ!グラッチェ!と言って、気持ちよく受け取ってくれた。真っ白な歯が印象的な好青年だった。

 港に戻り、小型バスに乗り換え、アナカプリへ行った。断崖沿いの道を走る。カーブを曲がるたびに高度が上がっていき、眼下に絶景が展開する。青い海の向こうにイスキア島が見える。アラン・ドロン主演の映画『太陽がいっぱい』はこの島で撮影された。

 アナカプリのレストランで昼食。手長エビのパスタと海鮮リゾットを食べ、食後に、カプリ島名物のレモンチェッロ(レモンのリキュール)を飲んだ。その後、街を散策する。街のはずれまで来ると、遠くの断崖の上に、ヴィラ・ジョヴィスが眺められた。ローマ帝国第2代皇帝ティベリウスの別荘跡だ。

 ティベリウスは、初代皇帝アウグストゥスの再婚相手リヴィアの連れ子で、皇帝在位は23年に及んだ。そのうちの最後の10年ほどは、このカプリ島に定住し、ローマとは書簡のやり取りで種々の指示を出していた。
 元老院に全く顔を出さないティベリウスの評判は、当然、悪かったが、さすがに、海が荒れる冬場は対岸に居を移し、万が一の事態に備えてはいた。
 ティベリウスは、この島で、西暦37年3月、病死した。77歳。

(参考)

カプリ島の港
「青の洞窟」前で順番待ち
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アナカプリへの道
カプリ島から戻りナポリの高台から見たナポリ市街
同高台から見たヴェスビオ火山
ナポリが本場のピッツァ(超塩辛くて半分しか食べられなかった。)


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