児玉雨子のことをもっと知りたい
まえがき
皆様ごきげんよう。
最近は、ドライブ中も電車での移動中もジムで運動している最中もハロ曲しか聴いていません。テンション上がるアップテンポ系の歌が好きですね。“アドレナリン・ダメ”だったり、“マナーモード”だったり、“スキップ・スキップ・スキップ”は特にお気に入りの楽曲です。さて、ハロヲタの皆様ならお気づきかと思いますが、これらの楽曲には共通点があります。そう、全て児玉雨子さんの作詞によるものです。
歴代のハロ曲には多数の名曲があり、それぞれ違った良さがあります。その中でも、雨子さんが作詞したものは好きなものが多いですね。聴く人の心をグッとつかみ、曲の世界に引き込んでくれます。というわけで、今回は幾多の名曲の歌詞を生み出してきた児玉雨子さんにフォーカスして執筆していきます。彼女のどのような点に魅力を感じているのか、皆様に少しでもお伝えできればと思います。
どんな人?
・神奈川県横浜市育ち
・明治大学大学院文学研究科修了
・小説やエッセイ執筆も行う
・A-Sketch所属
雨子さんは高校2年生時に小説を執筆。集英社の“すばる文学賞”に応募し、二次選考まで進みました。ただ当時、小説家や作詞家になりたいという気持ちはなかったそうです。当時は学校が辛く、ストレス発散の方法を探していたんだとか。賞への応募理由も”締め切りが近く、賞金が他の文学賞よりも高かった”というもの。何とも意外なエピソードですね。
明治大学に入学した2011年、静岡朝日テレビで放送されている番組の主題歌の作詞を依頼されました。それ以降、“夢みるアドレセンス”を皮切りに、他アイドルやVtuber、アニソンなど幅広く作品を提供しています。時には作詞だけでなく作曲もするそうなので、いつか“作詞作曲・児玉雨子”と記されているハロ曲も見てみたいものです。
作詞家として
その時はたまたま渋谷のタワレコ近くを歩いている時だったそうです。一緒にいたラジオディレクターに“南波一海のアイドル三十六房をやっているらしいから見に行こう”と言われました。イベントでMCだった南波一海さんから、アップフロントワークスの橋本慎さんを紹介されました。その際、橋本さんから“作詞家なの?じゃあ一緒にやろうよ”と声をかけられ、楽曲提供するようになります。
当初はボツ続きだったそうですが、アンジュルムの“乙女の逆襲”とカントリー・ガールズの“愛おしくってごめんね/恋泥棒”が相次いで採用されました。ちなみに、“乙女の逆襲”に関しては、当時製作中の別の曲に力を入れていたのだとか。肩の力が抜け切ったような状態で、採用された際は“そっち⁉”と思ったそうです。
曲が先にできていて、そこに歌詞を合わせるというパターンが、雨子さんの作詞においてはほとんどです。メロディーを聴きこむことに時間を割き、そこから歌詞をあてがうのにはそこまで時間がかからないのだとか。特にハロプロにおいてはメロディーが曲のコンセプトを決めることも多い分、そういうスタイルはハマるかもしれませんね。ちなみに、早い時は2時間くらいで作品を完成させることもあるそうです。
雨子さんの考えとしては、次に出す作品が常に最高でなければならないというのがあります。喜劇王であるチャールズ・チャップリンも、同じ内容の発言をしたことがあるそう。“これが一番です”というと、他の作品を好きな方に手抜きだったと思われるのが残念とインタビューで語っていたのを知り、なるほどと思いました。一つの曲が完成しても満足することなく、常に自分の中の最高傑作を追い求める向上心の強さは、素直に尊敬します。
表現者として
雨子さんの歌詞には素晴らしいフレーズがたくさんあるのですが、その中でも私が特に好きなのがこちらです。
個人的に、雨子さんの歌詞において一番のストロングポイントだと思っているのは、比喩の使い方が上手いことです。ライターの古賀史健さんがインタビューにおいて、比喩を考えるにあたっての注意点をいくつか挙げていました。今回は“マナーモード”の歌詞と、古賀さんの提言を照らし合わせていきたいなと思います。
① 具体的・映像的であること
古賀さんによれば、比喩が想像力を補助するとすれば、できるだけ具体的であるほうが望ましいとされています。文章に挿絵を添えるように、具体的な映像を思い浮かべさせることが重要とも語っています。上記の歌詞においては、思いを寄せる男子になかなか気持ちを伝えられず、もどかしさを抱える女子の様子が具体的にイメージできます。
② 普遍的・一般的であること
比喩の対象は具体的であることが望ましいものの、局所的・限定的であってはいけないといわれています。ここで問われるのが“書き手の親切心”。コアな表現ばかりでは、なかなか言いたいことが伝わりにくいのは想像に難くないでしょう。自らの技巧や感覚に頼り過ぎず、相手に“見える映像”や“聞こえる音”が重要だとされています。
③ 遠距離であること
対象物の距離が近すぎると、どうしても平凡で安直な表現に落ち着きがちです。比喩の面白さは、組み合わせる対象の距離によって決まると言ってもいいと古賀さんは話しています。一般的に、“マナーモード”は携帯電話の着信音抑制機能のことを指します。これと“恋心”の距離が近いとは言えないでしょう。それをあえて同列に並べることにより、曲の聴き手に訴える抜群の比喩が創り出されているのではないでしょうか。
アイドル曲においては、当然ながらダンスも重要な要素です。しかし、デバイスで曲を聴く際は、どうしても音声が主体となります。音声の中のフレーズの意味を理解するために欠かせないのが想像力ですが、それを補うのが比喩です。比喩は作詞者の技巧をひけらかすものではなく、読者の理解を促すものでなければなりません。雨子さんの歌詞を見ると、私たちの想像力を掻き立て、曲の世界に引き込まれてしまいます。聴く人に響く歌詞には、いつも元気と勇気をもらっています。
比喩には2種類あり、2つのものを直接に比較する“直喩”と、そのものの特徴を直接他のもので表現する“隠喩”があります。雨子さんの歌詞で特に素晴らしいと思うのは、“隠喩”ですね。隠喩表現の際には、使い古された表現を用いると、どうしても味気ないものになってしまいます。ただ、彼女の歌詞にそんな心配はご無用。新鮮で手垢のついていないフレーズで、親しみやすいものになっていると感じます。
心理描写
雨子さんの歌詞が、誰にとっても聴きやすいものなのはこれまでお伝えした通りです。それに加え、心理描写が本当に上手いなと感じています。曲中では、登場人物の精神の移り変わり、心の中で考えていることが的確に描き出されています。女子の恋心を歌った曲なんかでも、男である自分ですら共感できる部分は多いですね。
こちらにおいてもそうですね。”逆らった喧騒”とさりげなく倒置法を差し込んでいるのも良いんですが、“愛しいあの人に会いたい”という気持ちがしっかりと描写されています。整ったロジカルがしっかりと組み込まれており、味わい深さを備えたものとなっています。改めて、雨子さんの技術の高さは素晴らしいなと感じます。
レコーディングでは“歌いづらいから”とその場で歌詞を変更することがあるそうですが、ハロ曲のレコーディングではほとんどそれがないんだとか。もちろん、ハロメンの実力も高いのでしょうが、歌詞に共感できるからこそ、パフォーマンスにも力が入り、作品が完成されると思っています。
あとがき
いかがでしたでしょうか。雨子さんについて知れば知るほど、作詞家としても人間としても尊敬できる部分が数多く見つかりました。そして、今まで知らなかった魅力も知ることができました。これからも、きっと数多くの楽曲に歌詞で命を吹き込み続けることでしょう。曲の世界観を壊すことなく、その中にそっと差し込まれる素敵なメッセージが見られることを、これからも楽しみにしています。
それではまた。
p.s.雨子って名前は本名なんですかね?