#見返したい名試合~2020.12.6 潮崎豪vs杉浦貴~
まえがき
皆様ごきげんよう。
今回は、noteスポーツが主催している“#見返したい名試合”に参加させていただきます。
※選手名は基本的に敬称略とさせていただきます。
現在、プロレスリング・ノア(以下ノア)では、毎年恒例のリーグ戦「N-1 VICTORY 2023」が開催中。各地で熱戦が繰り広げられています。
9月3日の大阪大会では、潮崎豪が優勝決定戦で拳王と対戦。悲願の初優勝となるか、期待は高まるばかりです。
さて、そんな潮崎と、これまで幾度となく名勝負を繰り広げてきた一人が杉浦貴です。その中でも、3年前の12月6日、代々木で行われたGHCヘビー級選手権試合は別格。今回はその一戦について書いていきたいなと思います。
潮崎、杉浦はそれぞれどんな選手?
潮崎豪(しおざき・ごう)
ノアの創設者である三沢光晴氏の最後のパートナー。2009年、三沢氏がリング禍に倒れた翌日にGHCヘビー級王座を初めて戴冠しました。
その後2012年にノアを退団し、翌年全日本プロレスに入団。2016年にノアに復帰した後も、タイトル戦線で活躍を続けています。
ラリアットや逆水平チョップ、ムーンサルトプレスなど、師匠である小橋建太氏の現役時代の技を多く使用。ちなみに、デビュー翌日に初めてシングルマッチを行った相手は杉浦です。
杉浦貴(すぎうら・たかし)
かつては自衛隊に所属し、レスリングで活躍。全日本選手権で優勝した経験があります。
全日本プロレスに入団後、デビュー前に団体が分裂。三沢氏が旗揚げしたノアに練習生のまま移籍しました。
得意技のオリンピック予選スラムは、かつての自身の経験から名づけられたもの。1996年のアトランタ大会出場にあと一歩及ばなかったことが理由です。
なお、女子サッカーの杉浦華穂選手(大和シルフィード)は実娘です。
ココを語りたい
本稿では、以下のポイントから語っていきたいなと思います。
・試合までのストーリー
・傷だらけの王者
・強くてたくましい
・最終盤の打ち合い、死闘の終焉
試合までのストーリー
11月22日、横浜武道館大会では自らを裏切った中嶋とタイトルマッチで対峙。「横浜裁判」と銘打たれた一戦は、42分35秒の熱闘の末、潮崎が5度目の防衛に成功しました。
その試合後、杉浦がリングに上がり「今年最後、俺が行くぞGHC」と挑戦表明。12月1日の後楽園ホール大会では前哨戦で対戦すると、潮崎が豪腕ラリアットで杉浦を下しました。
2020年はノア旗揚げ20周年。その記念すべき年の総決算に、潮崎と杉浦が交わることに意味があったんです。
“三沢イズム”を継ぐ2人のタイトルマッチを控え、当時プロレスを見始めたばかりな分本当にワクワクしていました。
杉浦がGHCヘビー級王座を初戴冠したのは2009年の日本武道館大会。今回と同じ12月6日で、相手は潮崎でした。
そしてそこから14度の防衛(現在も最多記録)に成功。これもまた、ファンになりたてだった自分の胸を熱くさせるエピソードでしたね。
傷だらけの王者
当時、王者の潮崎は腕と肩を負傷している状態。翌年の3月から長期欠場に入ったように、“傷だらけ”でした。
入場時も、緑のガウンからのぞくテーピングが痛々しくて…苦しさと切なさと心もとなさが混同し、なんとも言えない気持ちになっていました。
実況を務めた塩野淳二アナが「もういいじゃないか潮崎、そんな気持ちになる」と実況したのには、激しく同意してしまった。
それでも、どれだけ厳しい攻撃を浴びながらもすべて受け切り、耐えに耐えた末に勝利をつかむ。
ボロボロになりながらも最後まで戦い抜く姿は本当にカッコいいし、今でも勇気をもらっています。
強くてたくましい
固い握手からスタート。
杉浦がマットのないむき出しの床へネックスクリューで叩きつけたり、エプロンに立つ潮崎へリング内からスピアータックル。
ここまでやるのは勝利への執念もそうだけど、潮崎がどれほど強い選手か分かっているからこそ。半端な実力の選手に対してはこれほど攻め込むことはないはずです。
潮崎の方も得意のマシンガンチョップを容赦なく胸に叩き込み、杉浦の胸板は真っ赤に。35分過ぎには体力も消耗する中、場外の杉浦へトペコンを発射。
さらにはフロントネックロックを力ずくで担ぎ上げゴー・フラッシャー。これを受け切る杉浦も50歳とは思えないタフネスっぷりだ。
潮崎は正調と雪崩式でそれぞれオリンピック予選スラムをもろに食らい、「もうダメだ」と思ったなかでも肩を上げる。ボロボロな中でもカウント2.99で返し続けるチャンピオンが、どこまでもカッコいい。
遺恨も一切なく、お互いの技を極限まで受け切り、お互いの全てを出し尽くしていた。チャンピオンもチャレンジャーも強くてたくましかった。
本当に“レベルの高いプロレス”がそこにありました。
最終盤の打ち合い、死闘の終焉
試合時間は50分を超え、両者とも疲労困憊。限界はとっくにオーバーしていた。杉浦は分厚いエルボーをぶち込み、潮崎も渾身の逆水平チョップを放つ。時折足がもつれながらも、声にならない声をあげ、最後まで相手に向き合う。
試合中にもかかわらず、すでに目頭が熱くなっていた。
実家の湯船は完全に冷え切っていました。
よく風邪ひかなかったな(笑)
最後は潮崎が渾身の豪腕ラリアットをぶち込み3カウント。GHCヘビー級王座6度目の防衛に成功しました。
お互いに全てをぶつけ合い、全てを出し尽くし、真正面から向き合って語り合った。この2人でないと紡げなかった、至高の51分44秒でした。
退場時、杉浦は潮崎に向かって親指を立てた。自らの結果に貪欲でありながら、相手へのリスペクトも忘れない。スポーツマンシップの美しさを感じた瞬間です。
見ているこっちも清々しい気分になれたし、レスラーは自らの力を最大限発揮する。ただただ「最高」という言葉しか出てこない。
間違いなく、今まで見てきたプロレスの中で一番のベストバウトです。
そして何がすごいかって、この最高の試合をYouTubeで無料で見られること。約1時間、時間を費やす価値は十二分にあります。是非一度、2人の意地のぶつかり合いをその目でご覧ください。
あとがき
いかがでしたでしょうか。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。これをきっかけに、皆様が少しでも「ノアを見てみようかな」とか「会場に行ってみようかな」とか、そう思うきっかけになれば嬉しいです。
プロレスには長い歴史があります。様々な団体で、数え切れないほどの名勝負が繰り広げられてきました。その中でも、この一戦は一際輝きを放つ存在です。ノアに出会えてよかった、心の底からそう思える試合です。
今年の12月6日も、思い出を振り返りながら試合を観たいなと思います。
それではまた。
p.s.10月の福岡大会行けない…