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天皇杯JFA102回全日本サッカー選手権大会 長野県代表への道程 【決勝マッチプレビュー】

 さあ、いよいよやってきましたこの時が。絶対に負けられない戦い、絶対に負けてはならない戦いが5月8日サンプロアルウィンにて開催されます。松本山雅FCvsAC長野パルセイロ、2011年以来の公式戦における信州ダービーです。今大会においては、両チームともスーパーシード扱いでパルセイロは準決勝から、松本山雅FCは決勝からの参加となります。
 当然、この大会で長野県代表の座をこの2クラブが争っているということはどちらもJ3クラブということ。どちらのクラブにとっても望まない形、もっと言えば長野県全体のクラブにとっても望まない舞台での対戦になります。しかし、パルセイロにとって松本山雅FCにだけは負けたくありません。長野県のサッカーを盛り上げる2クラブとして、J2昇格を争うライバルとして、長野県に拠点を置くクラブとして、どうしても負けるわけにはいきません。
 私がパルセイロを応援したのは2014シーズンからで、その時既に松本山雅FCは常に上のカテゴリーでした。2014年より前のいざこざを体験してないため、歴史的背景に関してどうこう言える立場ではありませんが、個人的に信州ダービーを目の当たりにできることが嬉しくてたまりません。「信州ダービー」には欧州にも負けない熱気があると認識しているので、日本中のJサポが注目するような熱い熱い戦いになって欲しいです。
 もちろん、勝つのは我らがパルセイロですが!

①通算対戦成績

 今回の記事は長野県サッカー選手権大会決勝のマッチプレビューのため、パルセイロと松本山雅FCの対戦カードで行われた決勝について注目してまとめていきます。
 パルセイロと松本山雅FCの対戦カードで行われた決勝の数は6試合ありました。PK戦までもつれた試合を引き分けとカウントせずに明確に勝敗として捉えると松本山雅FCの6戦6勝。何と決勝での同対戦カードでは松本山雅FC全勝、パルセイロは前身のエルザ時代も含めて1勝もできていません。6試合のうちPK戦までもつれたのは2試合、延長戦で決着がついたのは1試合、つまり半数の試合は90分で決着がつきませんでした。年月が経ちチームが変わってもDNAは脈々と受け継がれているはず、今年の決勝戦もお互いにとって熱く厳しい戦いになるでしょう。
 パルセイロとしては松本山雅FCがJ2以上に行って以降は19回大会、25回大会を除いて10大会で8回優勝しています。"松本山雅FCが戻ってきたら結局優勝できない"なんて評価になってしまったら、いつでも松本山雅FCに追いつき、追い越すことは敵いません。久しぶりの信州ダービーだからこそ、新たな歴史の1ページを刻むために是が非でも勝利が欲しいです。

②松本山雅FCの予想システム

3-4-2-1

 松本山雅FCは今シーズンのリーグ戦で4バックと3バックの両方とも採用して戦い分けています。スカッドが厚く、監督も名波さんということで読みづらいところではありますが、3バックで戦うことを予想します。
 今季の松本山雅FCの試合を見ましたが、4バックよりも3バックの方が後方の安定感がある印象を受けました。撤退守備の時は5バックで割り切って戦うことができますし、相手を引き込んでおいてのカウンターの鋭さを発揮するなら3バックかと思います。

【攻撃】

3-4-2-1ビルドアップイメージ

 3バックと言っても中盤より前の形は様々であるため、今回は前節のギラヴァンツ北九州戦と同様の形である3-4-2-1で想定していきます。
 3バックとダブルボランチで中央のビルドアップ配置を整えつつ、WBが高い位置をとりMFの守備ラインを越えてこようとするでしょう。また、後方からの確実なビルドアップが苦しいと判断すれば、前線の選手に対するロングボールも使ってくるはずです。前線の配置が三角形であれば、DFライン前のスペースを2シャドーが制圧するべく、セカンドボールの回収をしてくる配置になるかと思います。

【守備】

5-2-3撤退守備

 こちらも3-4-2-1で想定すると、5-2-3の撤退守備を固めることが予想されます。5バックで危険なスペースを確実に埋めて、ブロックの内側に入れば入るほど密集を作ってシュートを打たせない守備組織になります。5バックを組織する速さは一級品で、ネガティブトランジション時の状況が相当悪くない限りは整頓された5バックがしっかりと中央の危険なスペースを埋め、相手の攻撃を外へ外へと追いやっていきます。

③松本山雅FCの要注意選手

 松本山雅FCの中で特に注意しなければならない選手を2人紹介します。ただ、前述したように松本山雅FCはスカッドが厚いため、リーグ戦でない県予選決勝にその選手を起用してくるかは不透明です。一応、参考までに紹介します。
 1人目は横山歩夢選手です。今季の松本山雅FCの勝ち方を見ていく中でこの選手の活躍は避けて通れないでしょう。世代別の日本代表候補合宿にも呼ばれ、若手ながら着実に力をつけている選手の1人です。特長はその足の速さとシュートテクニックの高さ、相手DFラインの裏に一瞬で抜け出し少しの隙でもあればその脚を一閃。対戦相手のDFラインとしては、どれだけ自分達が攻め込んでいても常に警戒しておく必要がある選手です。
 2人目は菊井悠介選手です。先に紹介した横山選手と同様に、この選手の活躍も語らない訳にはいかない素晴らしいルーキーです。最前線で活躍すると言うよりは、ストライカーの1列下で輝くという表現の方が的確かと思います。足元のテクニックと身体の使い方に優れ、サイドレーンでも中央のスペースでも相手の嫌がるプレーを常にできる選手です。
 横山選手との相性は抜群で、横山選手が押し下げたDFラインの前のスペースは菊井選手にとって格好の活躍の場。カウンターの時でも、ビルドアップの時でも彼にボールが入れば、何かしてくれるそんな雰囲気が出る非常に怖い選手です。

④パルセイロはどう戦うか

 ここまで松本山雅FCの攻守の特徴と要注意選手をまとめてきました。これを踏まえてパルセイロはどんな点に注意して戦うことが予想されるかをまとめていきます。勝負の分かれ目になるポイントであり、見どころとも取れるかと思います。

【攻撃】

・安定感が出てきた守備をどう崩すか
・先制点を奪えるか

 リーグ戦で第6節まで毎試合失点のあった松本山雅FCですが、第7節、第8節はホームで連続無失点を達成しています。また、アスルクラロ沼津をシュート数を4本に抑え、ギラヴァンツ北九州をシュート数1本に抑えています。シュートまで完結させない、得点を奪わせない守備に関してはJ3の中でもトップレベルな組織ができていると考えています。

4-1-2-3vs5-2-3

 5-2-3の撤退守備は全体の重心が後方に偏るため、普段通りの4-1-2-3を採用して試合に臨んだ場合、ボールを握れることが想定されます。ボールを持つことができますが、そこから如何にして相手の急所に刺していけるかが大きな攻撃の鍵になります。アスルクラロ沼津、鹿児島ユナイテッドFC、アルティスタ浅間というように直近で対戦してきたクラブは4バックを採用していたチームが多く、松本山雅FCが5バックを組織してきた場合、Y.S.C.C.横浜戦以来の対5バックになるかと思います。
 Y.S.C.C.横浜との試合ではボールを握り、主導権を持ちながらもシュートまで完結し切る攻撃が前半は少なく、相手のカウンターでシュートまで持っていかれる場面の方が目立ちました。対戦相手によって守備組織の強度は変化しますが、過去の試合を生かして思い切りの良い攻撃ができることを期待しています。
 また、リーグ戦では2試合連続で先制点を奪えていません。自分達に傾いた試合の流れを得点という形でものにできれば、直近の試合以上にパルセイロの考えるゲームプランが実行できるかと考えます。堅い守備の相手だからこそ先制点が非常に重要になります。宮阪、山本は古巣対戦になりますから、恩返しコンビ弾があったら最高の展開かと思います!

【守備】

・被カウンター組織整備
・被先制点を許さない

 鹿児島ユナイテッドFC戦、アスルクラロ沼津戦と前半途中で先制点を奪われており、1点ビハインドを背負うことで受動的なプランBを使わざるを得ず、難しい展開になってしまう試合が続いています。試合の流れを掴みかけている段階での失点が続いているため、一瞬の隙ではあるのですが、その隙を1mmでも削っていかなければ、厳しい戦いでは勝つことが難しくなります。
 おそらく、松本山雅FCはカウンターの鋭さで言えば第6節のY.S.C.C.横浜を上回る攻撃力があると思います。よりシビアに隙をなくしていくことが、勝利のためには求められます。
 また、ボール保持ができることが予想されるため、被カウンターに備えたリスクマネジメントを整えていくことは今後のリーグ戦を戦い抜く上で必要になっていくはずです。

まとめ

 ここまで松本山雅FCvsAC長野パルセイロ、天皇杯長野県予選のマッチプレビューをしてきました。
 負けてはいけない理由を理詰めで考えるのではなく、パルセイロのDNAが松本山雅FCには負けてはいけないということを強く意識させるはずです。分析をしていくという立場でありながら、こんなことを言うのは野暮かもしれませんが、接戦の行方を左右するのは最後は勝利への執念だと思います。
 お互いにとって負けられない一戦、5月8日、日本で1番熱い場所にしましょう!
 勝つのは俺たち長野だ!

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