【阿南】念願だった「新野の盆踊り」参加。
8月14日〜16日。阿南町新野地域にて「新野の盆踊り」が開催されました。
いつもなら三晩、21時から翌朝7時までの間踊り続けるというお祭りなのですが、今年は
14日・15日 21時〜24時
16日 21時〜翌朝6時
という時間短縮の形での開催となりました。
とは言え参加規制無く開催するのは実に三年ぶり。
昨年開催されず涙を呑んだ滞在アーティストの山田さんはじめ我々NOAチームも今年はようやく参加できる!ということで、16日、新野へやって来ました。
▲新野の盆踊りについてはこちらのサイトにわかりやすくまとまっていますので是非ご覧ください!▲
お盆も最終日ということで、新野に到着するとそれぞれのお家の前で送り火を焚いている様子が見られました。
盆踊り会場となる通りには提灯の飾り付けが。奥に櫓が見えます。
新野の盆踊りの特徴の一つが、櫓をぐるりと囲むように飾られた切子灯籠です。
初盆を迎える方(昨年のお盆以降〜今年亡くなった方)の数だけ毎年飾られます。
21時になると何か合図があるわけでもなく唄が歌い出され、祭りが始まりました。
一番最初に歌われる唄は「すくいさ」、『新野物語』内にも登場する唄であり、山田さんが物語の着想を得るきっかけとなった唄でもあります。
「ひだるけりゃこそ すくいさに 来たに (そりゃ)
たんと たもれや ひとすくい」
田畑が少なく貧しい周囲の村から物乞いに来た人々に、「たくさん持ってけ」と言う新野の人々の様子が描かれています。
ホストの金田さんから「盆踊りは必ず『すくいさ』から始まる」とお話しは聞いていたので、「ようやく本番のものが聞けた…!」と感慨もひとしおです。
ホストの金田信夫さん、渚さんとも合流。心から楽しそうで、三年ぶりに祭りが開催されたことへの喜びが伝わってきました。
振りや唄をほとんど知らなくとも、何度も同じ振りを踊るのでやっているうちに身体に入ってくるのが気持ち良い。
また、老若男女、振りは同じでもそれぞれに個性があって、それを眺めるのも味わい深い。
誰でも好きな時に入って、好きなだけ踊って抜けられる雰囲気なので、皆さんそれぞれの楽しみ方をされていました。
我々も休みたい人は休む、踊りたい人は踊る、呑みたい人は呑む(笑) と、散り散りに。
途中『新野物語』に出演してくださった小原さんや「うるぎHalo!」の赤土(しゃくど)さんも合流し、先月の阿南・売木公演の思い出話などして夜は更けていきました。
そして夜は明け午前4時。
「そろそろ祭りがクライマックスだ」との知らせを受け会場へ行くと、なるほど、人が増えている…!
このクライマックスの時にだけ踊られる踊りというのが決まっていまして、
「能登」という踊りなのですが、
輪の中で一緒に踊っていると、新野の方が「能登」にどれほどの思い入れを持っているかが伝わってくるようでした。櫓の上にいる音頭取りの皆さんの歌声にも熱が入っているような。
そこへ、初盆を迎える方々の魂と踊り神様を送るために新野の丘の上にあるお寺・瑞光院へ向かう、切子灯籠を持った人々の行列がやってきました。
この行列が通り過ぎると同時に、踊り子たちは踊りをやめなければならない決まりです。
行列の存在に気が付かないかのように踊りをやめない人々の輪。「意地でも踊りを止めないぞ」という一体感が自然と生まれていき。踊り子たちの熱が最高潮に達する瞬間を、私たちも肌で感じることができました。
例年だと、ここで踊りを「止めろ/止めたくない」という、身体がぶつかり合うほどの攻防があるそうなのですが、感染症蔓延防止の観点から身体の接触は避け、盆踊り保存会の皆さんの声掛けにより踊りの輪は解散となりました。
行列の後に付いて、皆瑞光院へ向かいます。
集められた灯籠は、一つ一つ潰されていきました。
丁寧に手作りされた灯籠を潰してしまうのは「もったいない…!」という気もしてしまいますが、これも毎年恒例のこと。
全ての灯籠が潰された後、火がつけられ、燃やされます。
初盆を迎えた人やご先祖さまの魂だけでなく、新野の地で亡くなった旅人、行き倒れ、その他動物や虫に至るまで、全ての魂をここで送ってあげるそうです。
灯籠が燃えるのを見届けた後、皆さん帰路についていきました。
決して後ろを振り返らないようにしながら。
この時に後ろを振り返ると「踊り神様に取り憑かれる」と言い伝えられているそうです。
私たちも帰路についていると、「昨年これ(盆踊り)を見ていたら『新野物語』は全く違う話になっていたかも」と山田さんがぽつり。
え、本当ですか、と返すと、
「初盆の人を送る儀式としての意味合いが強いよね」と。
確かに、切子灯籠の存在は大きなものでした。
一年の間にこれだけの方が亡くなったんだ、と、他所者の私たちでさえ考えさせられるのに、
新野の人たちは、この灯籠はあの人、あっちの灯籠はあの人、と指して言うことができるのでしょう。
その灯籠を、息子・娘や孫たちが担いで瑞光院へと向かう姿を見ていると、こうして命が受け継がれていくのだな、と思わずにはいられませんでした。
灯籠の一つ一つにきっと物語があるのでしょうね。
第二、第三の『新野物語』がここから生まれる…かも…?
ですが、新野の盆踊りに見られる独特の死生観に着目して山田さんが脚本を書かれた『新野物語』ももちろん面白いので未見の方は是非。
何より、『新野物語』ツアーのチームに再会できて嬉し楽しい時間でした。
もっと皆の写真を撮っておけばよかったなあと後悔しつつ。
「次は雪祭りも参加したいね」と言い合って解散しました。
後ろを振り返らないようにしながら。
(文:加藤亜弓)
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