【小海】最終滞在・映像撮影とフィールドレコーディング
1月20、21日に蓮沼執太さんが小海町での最後の滞在に訪れました。2日間かけて小海町高原美術館で映像2作品の撮影を行い、最後には近くの松原湖でフィールドレコーディングを行いました。
初日は「Walking Score」という、蓮沼さんがマイクを引きずって歩きながら録音し、その様子を撮る作品の撮影を行いました。まずカメラマンの安徳希仁さんと美術館内のルートを確認します。一発撮りなので、体を慣らしたり、カメラと建物の干渉具合を確認したりするために、安徳さんは早速カメラを手に美術館内を歩いてみることに。冬季休館中のため、この日は作品の展示がなく、普段とはまた違う美術館の様子が味わえます。
ぐるっとひと回り歩いてみて、ルートを確認したらすぐに撮影へ。程なく撮影が完了し、映像をチェックします。安藤忠雄氏によって設計された小海町高原美術館。室内への影の入り方は素晴らしく、細いガラス張りの廊下は改めて映像で見てみると「なんだここは?」と思うような不思議な印象を受けます。音と建築の美しさを堪能できる映像になりそうです。蓮沼さんの引きずっていたマイクの録音も、問題なく出来ていたとのこと。
「Walking Score」は無事撮影完了ということで、翌日に撮影する「Unseen Sea」のロケハンに移ります。当初この映像作品では、雪の積もった小海町高原美術館で、蓮沼さんが録った海の音を大音量で流す様子を撮影することを想定していたのですが、あいにく雪が積もらず当日を迎えてしまいました。そこで今回は、美術館の建築と、建物の周りにある木々や芝、遠くに見える八ヶ岳などの自然の調和するさまを捉えた画にしていくことに。
傾斜のある場所に建っているこの美術館は、いくつかの違った高さで味わうことができます。今回は特別に普段は立ち入ることが出来ない屋根上にも入らせていただき、ベストな撮影スポットを探していきました。
撮影スポットが決まったので、ひとまず1日目の作業は終了。翌日の撮影時に大音量で音を流してくださる音響の中島水さんも合流し、夜は滞在最終日に向けて、今回のNOA小海町のメンバーで交流するひとときを過ごしました。
2日目は雪はないものの、冷たい風の吹く厳しい寒さのなかで撮影準備に取りかかります。複数のカメラや大きなスピーカー、録音機材が設置され、すでに普段と違った不思議な雰囲気。
準備が完了したので、早速6発のスピーカーから大音量の海の音をループ再生し始めます。大音量に不慣れなスタッフは、つい展望台の近くで見守ってしまっていましたが、「耳がおかしくなっちゃうので、離れた方がいいですよ!」と蓮沼さんに促していただき、美術館敷地内やその周りを歩き周りながら、色々な場所での音の聴こえ方を味わう時間を過ごさせてもらうことに。蓮沼さんは安徳さんと一緒に、前日確認したスポットでカメラを回していき、無事に撮影完了。片付けをした後は、以前の滞在で蓮沼さんが近隣のレジデンス施設に残しておいた立体作品を回収し、松原湖へフィールドレコーディングをしに向かいます。
この時期の松原湖は、湖面が15cmほどの厚さの氷で覆われており、たくさんの人がテントを張ってワカサギ釣りを楽しめるようになっています。今回の録音を心待ちにしていた蓮沼さんをはじめ、NOA小海町スタッフも慣れない氷上歩行にワクワクしながら、少し人の集まっている場所から離れたところまで歩いて録音スポットを抑えます。
ワカサギ釣り用の氷削り器で湖面に穴をあけ、氷の下の水の中へ耐水マイクを降ろしていきます。しばらく録音を続け、作業完了。今回の蓮沼さんの小海町での活動はこれで終了となりました。
海のない小海町ではありますが、この地域だからこそ味わえる様々な水の音の表情を見つけていただけた滞在であったと思います。蓮沼さん、ホストの小海町高原美術館の皆さん、お疲れさまでした!
(文:鈴木彩華)