いわきアリオス開館15周年記念「アリオス・文化教養シリーズ2023/24未来応援オーケストラ:脳科学編」へのご来場ありがとうございました
コロナ禍中にあったの2021年度に、「文化芸術」や「劇場」の未来について市民の皆さんと一緒に対話しようと、浦久俊彦 さん(文筆家・文化芸術プロデューサー)にご相談して始まった「文化教養シリーズ」。3年目が終了しました。
ゲストは前回の林真理子さんに続いて、大物登場。
脳科学者・茂木健一郎 さんが「何を話すんだろう」という期待も高く、客席には、赤ちゃん連れの方から小学生、終演後回収さたアンケートを見ると80代の方も複数人ご来場のようで……過去最高にヴァラエティに富んだ皆さまに、予定時間を30分オーバーして楽しい時間をお過ごいただきました。
冒頭、浦久さんの「家族が囲炉裏端に集まるような感じで、みんなで語り合いましょう」という呼びかけたところ、茂木さんが「じゃあ、客電(客席への照明)はもっと明るくしてみんなの顔が見えるようにしようよ。もっと明るく……そう!こんな感じ」と提案してスタート。
第一部は、茂木さんと浦久さんによる対談で、テーマは「脳科学の最前線を語る」でした。
予定通り茂木さんの研究を語る上でのキーワード「クオリア」の解説から入りましたが、そこから茂木さんのスリリングこの上ない大脱線がスタート。「日本のテレビ番組(バラエティ・ドキュメンタリー・大河ドラマなど)」「お笑い」「アイドル」「文学」といったトピックを縦横無尽に行き来しながら、文字通り「ここでしか聴けない」鋭い本音を、全身全霊で客席にぶつけていました。そんな茂木さんの予期せぬ問いかけに即座に応える浦久さんの博覧強記ぶりも見ものでした。
実は茂木さんは前日からいわき市入りし、当日はいわき駅前から神谷(かべや)の「回廊美術館」までジョギング(!)しながら街を探訪されていました。
公演当日の朝も平三町目から二町目、一町目、松ヶ丘公園、小島、競輪場、アリオス、平中央公園を走る様子をYouTube上で中継。
走りながらつぶやくコメントからは、テレビやバラエティ番組では取り上げないられないだろう、「土地」そのものや、「市井の方々の人生・声」に耳を傾け、驚きたいという姿勢がありありと感じられました。そのため、第一部の最後に茂木さんが発した「皆さんが主役なんです。一度きりの人生、(くだらないものに時間を奪われることなく)大切なことを見つめてほしい」という強いメッセージには腑に落ちるものがありました。
第二部は、長野も登壇させていただき、「脳科学と、地域社会・劇場の未来」というテーマを想定して始まりましたが、第一部の茂木さん、浦久さんが本音で語りかけてくださったことで、客席の皆さんの心の扉も全開になり、「私も話したい!」というオーラが漂っていました。
客席からの質問は深かったですね。「日本の中学受験や偏差値教育」、教員に課せられる「“生徒に言ってはいけない”事項」が多すぎる問題、また知的障害のある子どもたちに効果的な芸術教育とは……、といった現代の日本社会を考えるうえで目を背けることができない本質的な質問が寄せられました。それらに対して、浦久さん、茂木さんが、ご自身の豊富な経験と知識に加え、それぞれの生き方・哲学を滲ませながら、丁寧に答えていきました。
「文化教養シリーズ」を始めてから3年。「文化芸術」「劇場」の「未来」を考えることは、「社会」や「日本という国」の「未来」を考えることであり、答えがあるものではありません。でも、このように心を開き、オープンな場で笑顔で対話することは、今後ますます重要になっていくと思います。
私も茂木さんのフリーダム加減に感化され、当日に勝手言って、客席からの質問のマイクさばきも、最後に著書のサイン本の抽選会なんかも好きにやらせてもらいました。こうした提案を受け入れたくれた本シリーズの企画担当・足立音楽学芸員ブラヴォー。
終演後にお客さまやスタッフの何人も「読んでみたいので本のタイトルを教えて」と訊かれました。浦久さんと私としては、してやったりの気持ちです。
今回も一期一会の素晴らしい心の交流の場をつくってくださった、茂木さん、浦久さん、そして来場者の皆さま、本当にありがとうございました。撮影の布施雅彦さんにも、なかなか決まらない当日の進行に対応してくれたスタッフにも感謝。
「文化教養シリーズ」。4年目も今年の秋に予定しています。分断の進む世界ですが、次年度は「ポーランド」と「ショパン」をキーワードに、歴史のなかで果たしてきた文化や芸術の役割を見つめ、音楽を聴き、未来についてみんなで考えてみたいと思います。詳細は2024年3月27日(水)発行のアリオスペーパーで発表します。どうぞお楽しみに!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?