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こどもと地域をつなぐ〇〇〇~最近発行されたブックレットを読んで

1月末発行のキッズ☆アリペvol.149のために、最近読んだブックレットの紹介を試みたら文字量が大幅超過、加えて子育て層を想定した書き方じゃないと思ったので、こちらに残しておきます。本紙には短縮版を掲載。

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「こどもをつなぐ、まち(地域)とつなぐコミュニケーションペーパー」という合言葉のもと、いわきアリオスが子育て情報中心の広報紙「キッズ☆アリペ」を創刊したのが2012年。
以来13年間、「こども」と「まち」をめぐる環境も大小さまざまに変化し、親御さんの抱える「悩み」「こまりごと」も個別化、細分化、潜在化したように思います。

 このキッズ☆アリペも、いわきアリオスのこどもプロジェクトも、いわきで子育てをする方のために少しでも役に立ちたいと、市民の方の声をお聴きしながら始めたもので、イベントとしてはまず幼児から小学校低学年を主な対象とした無料のあそび場「あそび工房」を2011年8月に開始しました。東日本大震災のあと、外あそびできない状況のなか、屋内あそび場も足りていないときでした。
 またコロナ禍2年目に入った2021年以降、子育て支援の専門家の皆さまに名乗りを挙げていただき、おもちゃや絵本が撤去された空っぽのキッズルームのなかで、マタニティの方から未就学の親子までを対象とした「アリオス キッズルーム・プログラム」を試してきました。「生まれる前からアリオスライフ」という目標へ、一歩近づいた取り組みです。
いずれの事業も長い間、こどもたちが笑顔で過ごせる社会になる応援をしたい、そしていわきアリオスに可能性を感じているという、たくさんの市民の皆さん(NPO、団体、個人)のお力に支えられ、成り立っています。ありがとうございます。

年末年始、私は、未読のままj自宅に積まれた書物を整理しながら、たくさんの冊子をつまみ読みしました。そのなかで、地域、こども、といったキーワードにいくつか興味を引いたものがあったので、今回はそれを紹介したいと思います。

本屋でもらったままスキャンしたのでテープが貼ってあるままですみません

 集英社のPR誌『青春と読書』を開いたら、劇作家・演出家の平田オリザさんが「シン芸術立国論」という連載を持っていました(2024年2月号~)。読書人を主なターゲットとした一般人に向かって、文化芸術や、それをとりまく劇場、ホール、芸術家、担い手、そしてそれらが切り拓く地域社会、ひいては日本という国の未来像について、事例とともに解説している記事といえばよいでしょうか。
 2024年11月号の第10回のタイトルは「一人ひとりを社会につなぎとめる」。
 平田さんはこう述べます。「これまで劇場や音楽ホールは、演劇を楽しむところ、音楽を聴きに行くところとして存在したが、これからは個人と社会をつなぐ、あるいは社会的弱者をどうにかつなぎとめておく機能が期待されることになる」とし、(いわきアリオスのような)公立文化施設が、「居場所」作りと、それを支える人たちの「出番」作りをつなげるために果たすべき役割は大きい、と。
 また、「そのとき行政に要求されるのは、様々なジャンルの活動をきめ細かく用意しておくことだ。人々の生活も、価値観や嗜好も多様化している。音楽で救われる人もいれば、美術で目覚める人もいる。演劇でつながる人々もいるだろう。もちろん行政が、そのすべてを用意することは出来ないので、民間のNPOなどの力を借りて、多様なプログラムを用意することだ。(改行)大事なことは、その多様なプログラムのいずれかに市民が必ず参加し、誰かが(何らかのアクティビティを通じて)誰かを知っているという社会を構成してくことだ」
 それを読んで、すくなくともいわきアリオスは、そうした潮流のなかで10数年、市民のパートナーの皆さんが活躍する子育て支援事業をつくれてきたなと、少し自信をもつことができたと同時に、これまで携わってこられた無数の皆さんに感謝の気持ちを強くした次第です。

 少年少女センター全国ネットワークとNPO子どもと文化のNPO Art.31が発行している『ちいきとこども』第36号(2024年10月)の特集は「ひとりぼっちを考える」でした。
 幼児も小学生も高校生も、そして子育てしている保護者も、多様な「孤独」を抱えて生きています。そうしたさまざまな孤独のありようを受け止め、丁寧にアプローチをしている、全国各地の団体の取り組みや現場担当者の思い、考え方を紹介しています。
 ひょっとして、わかりやすい“正解”はありませんが、ヒントはいっぱい。
 いわきアリオスで「あそびしょくどう」を行っているNPOあそび環境Museumアフタフ・バーバンの平川恭子さん(きょんちゃん)も、三鷹市の事務所で行っている子育てひろば「てくてく」を運営するなかで出会った、親子やスタッフ、そこに集う人たちの関わり合いから紡がれたことばや行動を、丁寧に拾って解説しています。
「てくてく」のコンセプトは「ノールール」。「お世話し合うのでなく、サービス的でも教育的でもなく、関心を寄せ合い、思いを共に、あそび合う関りがうまれることを目指して」という一言に、こどもとともにある地域の居場所の、ひとつのあり方が凝縮されているように思います。

 いわきアリオスで月に1回、小学生たちと行っている放課後のあそび場「あそびしょくどう」。こどももおとなも、初めて出会った人たち同士でも、「あそび」を通して、毎回必ずみんなの想像力/創造力が一気にスパークする瞬間が訪れます。でもその醍醐味は、そこに居た人にしか体感できないもの、質感があり、そのことをもどかしく思っていました。

 昨年10月に発行された『アフタフ・バーバン あそびのススメ② 子どもとつくる遊びたち!』(発行 Art.31)では、こどもと大人とが本気で関わり合いながら、「いま、この瞬間」にオリジナルの「あそび」が誕生する過程を追体験できるようで、わくわく、ぞくぞくします。
 執筆者のひとりが、アリオスの「あそびしょくどう」を引っ張ってくれているさとうりつこさん(りっちゃん)。それぞれのあそびが生成する過程でりっちゃんたちが大事に思ったことを、「※バーバン・ポイント」としてまとめていて、これからこどもたちとオリジナルの「あそび」をつくっていく際の大きなヒントになります。

 どこかでふと思い出したい考え方が満載のブックレットは、いわきアリオスのキッズルームに置いておきます。よろしければパラパラとめくってみてください。

 スマホや、SNS、動画サイト、携帯ゲームなどで簡単に情報にアクセスでき、検索すれば困りごとへの「答え」もたくさん溢れているはずの現代。でも、いろんなことがこんがらがっていくのはなぜでしょう。そんななかで、こどもたちや地域の方々が生身の関わりあいを続けるなかで、抱えているものごとが少しでも温められ、ほどかれ、溶け、心地よさへと導かれる瞬間がありますように。ある時はお風呂のように。またある時はハンモックのように……。
 そしてキッズ☆アリペも、これからも、ささやかながら読者の皆さまの「困りごと」と「なにか」をつなぐ存在でありたいと思います。

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