学校に行きたくない、と泣きさけぶ子を前に何が正解かなんてわからない
いまだに忘れられない光景がある。
登園するのが嫌で幼稚園の門にしがみつくウエノコを、後ろから近づいてきた知らないママがさっと抱き上げる。驚いてギャン泣きするウエノコ。興奮して泣き声はどんどん大きくなる。ウエノコを抱えたまま走り出したそのママは、怯むことなく全速力で走り続け、先生にウエノコを引き渡した。そしてまだ門の近くにいた私を振り返り、ニコッと笑いかけた。
困り果てた私たちに手を差し伸べてくれた親切な彼女は、その後も折に触れて私たちのことを気にかけてくれた。私はとても感謝している。
それでも、いまだに同じ問いかけをしてしまう。
「あれはセイカイだったんだろうか」
子育てに正解なんてないって言われているし、私自身、もう経験として十分実感している。それでもまだ、どこかにセイカイを探している自分がいるのも事実。
そして時は流れ、今まさに目の前でデジャブのような光景が繰り広げられていた。学校に行きたくないと泣いているウエノコ。何がイヤなのか「わからない」。説明できないという。「置いていかないで、お願いだから。」泣きながら精一杯に伝えてくる。私だって、できることなら抱きしめてそのまま連れて帰りたい。
一転して、お迎えの時はケロッとした表情で現れる。まるで朝の惨事がなかったかのようだ。
何が正解かなんてわからない。でもいまひとつ言えることは、ウエノコにはウエノコなりに心の準備が必要なんだろうなということ。
うまく説明できなくても、ウエノコの中で、「まだ、ちょっと待って」、「怖い」、「行けそう、でもまだちょっと待って」というような心の動きがあって、それを整理することがまだ上手くできないのかもしれない。そしてもう一つ、気持ちの切り替え。これがなかなか上手くいかないのかと。
大人も難しいよ、それは。