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【05】儚き君が灯した光

改めまして、舞台「嘘つき」ご来場誠にありがとうございました。
配信でご覧下さった方も、観劇は叶わずとも応援して下さっていた方にも、この場で改めてお礼申し上げます。

現状、次の出演は告知されていませんが、2月と3月は月末にイベント出演、その頃には4月後半と5月前半の舞台出演が告知されているかと思います。今年もついてきてください。

僕が演じた役は中村トオル、通称ママ。
女性として生きたい願望を持ちながら男性として生を受け、自分に嘘をついて生きた過去を持つことから、多重人格の立花ショウの心の拠り所となった人物。

ここ数年は何かにつけ「主人公を隣で見守りながら世界観を説明する人」や「不穏な空気をまとって意味深に干渉してくる人」を演じがちだったので、今回のような役は珍しくて楽しかったです。

演じる際に意識したことや僕の気持ちみたいなものは、皆さんが実際に客席で感じて下さったものが全て正解です。あなただけのお土産を僕の自分語りで上塗りしたくないので、僕からは言及を控えさせていただきます。どうか末永く大切な思い出にしてくれたら、それ以上に嬉しいことはありません。

しかし、去年10月の「笑わない君と笑う僕」のフクシマノリヒコといい、今作のママといい、田中彪くんから頂く役は何故か、透明な器に水を注ぐように僕の形に綺麗に収まってくれます。
「僕と役との対話」の時間よりも「自分の役と相手役との対話」に時間を割けるので、普段の稽古過程で歩んでいるステップをショートカット出来ているような感覚があります。
彼自身の人を見る力なのか、相性の問題なのか、その実は分かりませんが、僕も僕自身を知る機会になっています。若き才能に感謝です。

田中彪くんが与えてくれたママの台詞は本当に真っ直ぐなメッセージが沢山こめられていました。
「自分に嘘はつけない」「自分を大切にしてくれる人と恋をしなさい」
こと恋愛に関する言葉選びではありましたが、人生においてあらゆる場面で思い出せる言葉だなと感じます。

相手に合わせて自分に嘘をつくことに慣れてしまえば、相手の数だけ違う自分が生まれて、本当の自分がどれなのか分からなくなってしまう。
本当の自分を知らない人が自分の願望に気付けるはずもなく、そうなれば当然、自分も他人もその願望を叶えてやることは出来ない。
自分のことを大切にしてくれる誰かが現れても、その人にも自分の願いを伝えられない。
訪れた幸せに気付くこともなく手放したことは、きっと多くの人に覚えがあるんじゃないでしょうか。

自分を知り、自分を認め、その自分のままで一緒にいられる相手が周囲に集まってくれたらラッキー。
少しだけ歩み寄ったり、歩み寄ってもらったりしながら、感謝と謝罪だけは忘れず丁寧に伝え合えるような、そんな人付き合いが出来たらいいなと本作から学んだ僕です。

これからも皆さんの心が疲れたり弱ったりした時は、ママの姿と言葉を思い出して乾杯しましょう。
飲み物はなんだって大丈夫です。ショウとは水で乾杯して、あんなに仲良くなったんですから。

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