空間除菌に効果があるのかないのか、とか
別に仕事じゃなくても(というか、むしろ日常生活での方が頻繁に)”治療法”の話になることが多い。
それは健康を維持するための運動だったり、食生活のことだったり、ドラッグストアで買えるお薬のこともあるし、がん治療の範囲まで、もしかしたら病院ではないからこそ話せる内容なんじゃないかと思う。
そんな話が始まったときに、自分の中で一つだけ決めていることがある。
それは「その人が選んだ治療法をできるだけ否定しない」ということだ。
はじめに言っておきたいのは、「人間は自分に都合のいい情報を無意識のうちに選り分けている」ということだ。
別のnoteでも少し触れたが、自分が信じていることについては、それを支持するデータばかりが目につくし、逆にやりたくないことについては、やらないことを支持するデータしか目につかない、そういうものだ。
まだ薬剤師になりたての頃は、「正しいことを言えば患者さんは納得してくれる」し、「きちんと説明すればきちんと服薬してくれる」と信じていた。
しかし、蓋を開けてみると、そうではないことがわかった。
薬を飲みたくない人は、飲まないでいい理由を探す。
それは副作用のことだったり、薬価のことだったり、週刊誌に『飲んではいけない』と書かれていることだったり、知り合いに薬を飲まずに直した人がいるからという理由だったりする。
まあこちらもお仕事なので、一つ一つちゃんと説明するわけです。
こういう副作用があるのは全体の何%くらいで、こういう対処法で軽減できますよ、とか。
その副作用が出た場合は少し作用が弱いんですけどこっちの薬に切り替えることも検討できますよ、とか。
お薬代が心配な場合は後発品にしてもいいですし、高額医療費の助成制度がありますよ、とか。
週刊誌に書いてあるものは偏ったデータ処理をしていますよ、とか。
でも薬を飲まずに直した知人の話は、「まあそういう奇跡的な自然治癒力をお持ちのかたもいますからね」としか言えないけど。
そんな説明をして「まあそこまで言うならいっぺんきちんと飲んでみるか」と言ってくれるのは、正直ごく一部だ。
残念ながら多くの人は、他の「飲まなくていい理由」を出してくるし、そこの押し問答でこちらが勝ったとしても、家に大量の残薬を抱えさせるだけなのだ。
(それを薬局に持ってきて「使ってないから返すので返金してくれ」と言われることが割とある)
結局のところ、処方された薬に対して「飲む」か「飲まない」か決めるのは患者本人しかできない。(自己管理の人はね)
じゃあどうすればいいのか、とずっと考えていたのだけど、飲みたくないと言うのはその治療法に「納得していない」と言うことなんじゃないかと思った。
病院で初めて会った医者に「あなたは〜〜病ですね」と言われ、帰りには薬をわんさか処方され、薬局に行けばまた初めて会った薬剤師に根掘り葉掘り聞かれて、長時間待たされる。持って帰ってきた薬は種類が多すぎて、袋には書いてあるけれどこれ毎日飲み方確認して飲むの面倒だし、ちょっと待てよ、友達も同じ〜〜病って言ってたけど全然薬なんて飲まずに元気でやってるし、なら自分はなんでこんなに飲むことを課せられて、お金だってたくさん取られて、おかしいじゃないか?
って、そう思ってしまったってことかも、と。
(多くの疾患には治療のガイドラインやそれに準ずるものがあって、基本的にはそれに沿った診察と処方が出るので、科学的根拠のない治療の提案はされない)
まあ、納得できないのも、わからんでもないな。
でも、この”納得する”ってことが、治療への第一歩なんだと思う。
自分で納得していない治療は、ぶっちゃけ続かない。
それはいつでも「続けなくていい理由」を探しているから。
(繰り返すようで恐縮ですが)
恥ずかしながら自分でも経験がある。
1年半ほど前に飲んでいた薬で
・重篤な皮膚疾患の報告があるもの
・食欲亢進作用の強いもの
・口渇が出やすいもの
があって(それぞれ別の薬)全部やめたかった。
なので、受診のたびに「痒い、太る、口が渇く」を推していた。
先生は色々とメリットを説明してくれたけど、納得がいかず、結局他の病院を受診することにした。
新しく受診した病院では治療方針について私の意思を尊重してくれて、「それでも最低これだけは飲まないと今は厳しい」ということを言われ、納得して治療を受けた。
もし、ここで納得できていなかったら、また別の治療法を探していたと思う。
少し脱線したけれど、この「納得する方法」が人それぞれなので難しい。
私は他の病院でセカンドオピニオンを受けることで納得できた。
漢方や鍼灸という治療法を検討するのもありだと思う。
でもそれは一つの選択肢でしかない。
もしかしたら、家族の説得によって納得できるかもしれない。
また、治療に関わる医師や看護師、薬剤師との関係性によって「あの人がそういうんだから」と納得できるようになるかもしれない。
そもそも病院で処方された薬を飲む、というような治療に納得できない場合、他の治療法に目をつける人もいるだろう。
それは日本ではまだ認可されていない薬を個人輸入する方法かもしれないし、代替療法とよばれるものだったり、少しオカルトチックな方法かもしれない。
でもその治療法に納得したということ、それも含めての『その人の命』ということなんじゃないかと、思うようになった。
医療従事者が持っている膨大なデータや実績よりも、友人の「そんな薬飲まなくても治ったよ」の方が信頼できる、そういうものなのだ、残念ながら。
ただ、忘れないで欲しいのは、どんな治療法を示してきたとしても、あなたに「治って欲しい」「少しでも長くいきて欲しい」と思って、向き合っている、ということだ。
だから、日常生活の中で治療法の話が出た時は、私はできるだけ否定しない。
その人にはその治療法を選んだ経緯と理由がある。
納得したから、治療に踏み出せたのだ。
もしかしたら別の治療法を選んでいたら、1ヶ月長く生きられたかもしれない。
でも、そこには「納得していない治療を受けて死んでいった」という後悔が残る。
(できれば、家族の人も納得できる治療法を話し合って決めて欲しい)
ただ、はじめに「できるだけ」と断りを入れたのには理由がある。
金儲けのためのトンデモ医療が蔓延っているからだ。(この人たちが真摯に向き合っているのは患者さんじゃなくてお金)
それは”先進的”に見えるかもしれないし、著名人がこぞってやっているかもしれない。
日本では”まだ”認可されていないだけで欧米では普通などと謳っているものもある。
トンデモ医療の中にも
・特になんの意味もないのに治療といっているもの(ネットワークビジネスの匂いがする)
・治療と言いつつ逆に体に害をもたらすもの(お前は医者なのか? って思う輩がやってたりする)
があって、前者は目くじら立てて否定するほどでもないかなと思っているのだけど、後者については積極的に否定している。
(頑張っている)
もちろん話している相手との関係性も考慮しつつ、の話になるので、真っ向から否定するのが難しい場合もあるけれど、少なくともこういう危険性が高いので、それを承知の上でやってくださいね私は絶対やりませんし家族にもさせませんけど! くらいは言っていると思う。(これからも言っていきたい)
余談だけど、よく出てくる『陰謀論』。
(ワクチンとか多いよね)
この薬が認可されたのは製薬会社と厚労省が結託しているからだ、みたいなの。
嫌だっていうなら、いいと思う、それも。
ただ、リスクとベネフィットを考えた時に、「やったほうが得」ならやる、私は。
たとえそれで製薬会社の利益が多少上乗せされていても、私に得ならそれでいい。
(癒着がないほうがいいとは思ってるけど、命は1回しかないからさ)
HPVワクチンについては、まだ議論され尽くしてないけど、真っ先に打ったよ。
(ガンの薬は先進国に遅れをとっている、と言われるのに、本当に遅れているHPVについては陰謀論で潰しにくる、ねじれ現象が展開中の日本)
なんか、薬剤師ができることって、本当に少ないな(と現役でやってもいない私がいうのはおかしいけれど)と思うのだけど、できることは「正しい情報」「客観的データ」を示していくことだけだな、と感じている。
検索する時には『#インスタ医療団』のタグをつけると、参考になるデータにたどり着ける可能性が高いと思う。
自分としては、個々の事案について「あれどう思う?」的な意見を求められた時にも、一応答えるようにはしている。
(プラセボの話はまた別の記事で)
まあ私自身への信頼みたいなものがある程度ないと、その治療法について信じてもらえないっていうリスクがあるから、何事も疎かにしてはいかんな、と思っております。
以上、いつまで経っても母にリウマチの薬を飲んでもらえない薬剤師のお話でした。
(ちなみに空間除菌については湿度30%以下と低い条件下において効果が認められていない、らしいです)by消費者庁