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essay#15 バレンタインデーの思い出
年がら年中チョコやポテチや駄菓子を貪り食っているので、急に2月14日だけバレンタインデーでチョコを贈ろうとか言われましても…
むしろくれ!!!
そんな心持ちで生きております。
そんな、食生活も心も荒みきった私ですが、記憶を遡ると
小学校の頃は気が合えば男女問わずにガチンコでケイドロ?ドロケイ?やったり、
私ともう1人の女の子がメインボーカル、仲良しの男の子達はバックコーラスで【神田川】を熱唱したりして過ごしていて
この通りまあまあちゃんとおかしな小学生ではあったものの当時はそこそこの可愛げもあり、
その仲間内で『バレンタインにチョコちょうだい!』と言われれば普通に毎年お菓子を作って渡してました。
当時は、バレンタインだから云々というよりも、
仲のいい子に「美味しい!」って笑顔で食べてもらえることがただ嬉しかった気がします。
で、我が家でのバレンタインはというと母や私たち三姉妹で素人ながら毎年試行錯誤し何かしら作っては皆に振る舞い、
そして父からも皆に美味しいチョコレートをプレゼントする、
そんな【贈り合い】が習慣でした。
え、今思うとうちのお父さんめっちゃかっこよくない!?!?!?
欧米か!!
でも、当時は海外のバレンタインがどんなものかとか、世界基準で見るとどちらかといえば男性側が女性側に贈るのがバレンタイン…ということを知らなかったので、
うちの父が母のことを大好きすぎて、母にチョコを贈るついでに照れ隠しに子ども達にもお裾分けしてくれてるだけなのだと思っていました。
何ならその仮説は間違ってなくて、父も別に【海外では男性が女性に贈り物をする日だから】とか思ってない気がします。
今も昔も、父はただただ母のことが大好きなんでしょう。
そういう素直さ、すんごく素敵だなって我が父ながらほのぼのしてしまいます。
そして、毎年嬉しそうに父からのチョコレートを受け取ってひと粒ひと粒大切に食べる母もまた、素敵だなぁと。
そんな平和的バレンタインデーがしばらく続いたある年の2月14日夜、
突如として不測の事態が起こります。
同じ町内の、ひとつ年下の男の子がわざわざ家を訪ねてきてくれて「これ…」と、可愛く包装されたお菓子をプレゼントしてくれたのです。
え!?なんで!?
という驚きの次の瞬間には
食べていいの!?!?!?
さんきゅー!!!!
という思考に切り替わっていたがめつく卑しい私は
その、同じ町内のひとつ年下の男の子と仲良くしていたとはいえ、
そんなめちゃくちゃ一緒にケイドロ?ドロケイ?やったり一緒に【神田川】歌うほどの仲ではなかったのと
(多分仲良しの基準がおかしいですね、ええ今気づきましたとも)、
バレンタインデーに男の子からプレゼントをもらうという経験もその時初めてだったもので、好意がどうとか告白とかそっち方向に考えが全く及ばず、
その子の気持ちなど考えずに、
『ヤベェ今日全部配っちゃったから〇〇くんに渡してあげるものがない…!!申し訳ない…けど食べちゃう!』
とお返しもせずにただただ笑顔で受け取って美味しくいただいちゃったのでした。
(そもそも1ヶ月後にホワイトデーというお返しデーがあることも知らなかった…ので、後日母がその子のお母さんへ代わりにお返しのプレゼントを渡してくれていたそうです。不肖な娘でごめん…母よありがとう…!!!!!)
結局その子とはそれから何事も起こらず(ていうかそれ私のせいですね、ほんとごめん…)
数年後、私は中学3年生になりました。
中学時代は絶賛ブスキャンペーン中(栃木県内でも有数の治安がよろしくない地域の学校でしたのでブスっとした顔したブスでいれば変なことに巻き込まれないのではないかという母企画の3年間のキャンペーン)だった私はある日
『ねぇ知ってる?ひとつ下の学年に凄いイケメンがいるんだよ!』
と友人から聞かされ、へえそうなんだ…と適当に相槌を打っていたら、
私が小学生の頃バレンタインデーの夜にお菓子をプレゼントしてくれたその子のことでした。
小学生当時は同じ町内、同じ子ども会ということで弟みたいに思っていましたが、
気づけばいつスカウトされてもおかしくないようなとんでもないイケメンになってました。
うわぁぁぁぁぁああああああ
惜しいことをした!!!!!!!!!
(何様だよ)
とちょっとだけ身悶えつつ
結局小学4年生から高校に入るまで、
いや、
正確には別々の高校(姉妹校協定を結んでいる男子校と女子校)に進学しほぼ交流も絶たれたものの高校卒業するまでずっと同じ男の子を好きだった私は、
いつのまにか私より背が高くなり、声も低くなり、
ドロケイ?ケイドロ?もやらなくなり、一緒に神田川を歌うこともなくなったけれど、
でも当時からずっと変わらない笑顔で、
「今年もバレンタインちょうだい!ほんと美味しいから毎年楽しみにしてるんだぁ」
そう言ってくれる彼に、
義理だよ!
もうここまできたらルーティンだもん、
ていうかどうせ他にくれる子いるでしょ!?
なんて、全然可愛くない強がりを言いながら、
自分の気持ちを打ち明けることなくこっそり想いを込めて作ったチョコレート菓子を渡し続けていたのでした。
そんな、甘さと苦さが入り混じった懐かしい思い出。
あれから随分時が経って、その男の子ではない、今私が大切に想う人と食卓を囲める時、
ありがとうって、
美味しいねって、
自分の作ったものを笑顔で食べてもらえるのって、すごく幸せだなぁと思う私がいます。
あれ、
結局、根本は昔から変わってないですね。