民法改正と不動産業への影響 まずは全体像から
2017年5月26日に成立した民法改正が、いよいよ2020年4月1日から施行されることになり、不動産に関わる契約ルールも今後は改正民法を前提で処理されるようになります。
今回から連載で、不動産業における契約実務への影響を分かりやすく解説していきます。また、これから宅建試験を受験される方にも有益な情報となるように意識して書いていきたいと思います。
改正のポイント
今回の民法改正のポイントとしては、従来以上に「契約内容」を重視する方向性があり、不動産売買契約書、不動産賃貸契約書にて、契約当事者間にて合意された内容を詳細に落とし込んでおく必要性が生じてくるものと考えられます。
例えば、改正前の瑕疵担保責任の考え方が契約不適合責任に大改正されるなど、「当事者間において契約で何を約束したのか?」ということがより重要になってきます。契約目的によって、請求できる権利が変化していくことも想定されるため、契約書でしっかりと双方の認識のズレを無くしていくというスキルが当事者双方だけでなく、媒介業者にも求められてきます。
民法改正の分類
一方、今回の民法改正は、抜本的な改正とよく言われますが、従来の判例理論を踏襲して条文化したもの、新ルールを定めたもの、一部ルールを変更したものなど様々なレベル感のものがあり、今回の民法改正を分かりにくいものとしています。
今回の民法改正をカテゴリーに分けると大きく次の通りとなります。
【新設】 新たにルールが設定されたもの 例: 個人根保証の限度額、賃貸人の地位留保
【根本的改正】 従来の条文を根本的に変更したもの 例: 消滅時効、債務不履行、契約不適合責任
【一部改正】 従来の条文に一部修正を加えたもの 例: 賃貸借の存続期間、契約成立時期、危険負担
【判例明確化】 従来の判例理論を条文に取り込んだもの 例: 敷金、原状回復ルール
このように、今回の民法改正では、従来のルールが根本的に変わるものと従来のルールが単に明確化するものとが混在しており、更に、不動産業界の実務に大きく影響を与えるものと影響が軽微なものを考えると全体像が捉えにくいという側面を有しております。
そこで、今回の民法改正が不動産業へ与える影響について、「全般的なもの」「賃貸借実務」「売買実務」の3つに分類し、更に、それぞれのインパクト(重要度)をまとめてみると次の通りになろうかと思います。
この表で全体像をまずはザクっと捉えてから各論に入っていきたいと思います。
次回以降、一つ一つ解説していきます。