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「金融サービス仲介業」の新設  ~金融庁ワーキンググループ第3回傍聴メモ

10月30日に開催された金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第3回)を金融庁で傍聴してきました。

議事概要、配布資料(金融庁ウェブサイト)https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/kessaichukai_wg/siryou/kessaichukai_wg3.html

日本経済新聞の紹介記事https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51592970Q9A031C1EE9000/

現在の制度と課題

現状では、金融機関と顧客とをつなぐ仲介(媒介)サービスとして、次のようなものが金融庁の許可・登録を受ける必要のある業務とされています。

・銀行代理業
  銀行口座の開設の勧誘などを行う。
・金融商品仲介業
  証券会社が提供する商品の勧誘などを行う。
・保険募集人 (≒保険代理店)
・保険仲立人 (≒保険ブローカー)

ただ、これらの許可・登録を維持していくには、社内体制の維持、金融当局向けの事業報告などの対応が継続的に必要になります。
特に、複数の許可・登録を受けた場合には、それぞれ銀行法、金融商品取引法、保険業法のルールに従った対応が必要となり、必要な事務が許可・登録の数に比例して増えていくことになります。


さらに、これらの許可・登録については、「所属制」が採用されており、どの銀行、証券会社、保険会社のために業務を行うのかを特定しなければなりません。

例えば、A証券会社の金融商品とB証券会社の金融商品の両方から、顧客属性に合う商品を紹介するサービスを提供するとします。この場合、A証券会社、B証券会社の両方に「所属」するという内容で金融当局に許可・登録を申請する必要があり、追加・変更にも所定の手続が必要になります。

さらに、「所属先」となるA証券会社、B証券会社それぞれからも監督を受けることが前提となりますので、「所属先」への業務状況の報告なども求められます。

「媒介に至らない行為」とその曖昧さ

以上のような対応の煩雑さを避けるべく、実務上は、「仲介」(媒介)に至らない行為しか行わない、よって許可・登録は不要、という整理のもと、店舗でのパンフレット配布、情報提供サイトの運営などが行われることも多いです。
「媒介に至らない行為」として、例えば銀行との関係では、次の事務の一部を銀行から受託する場合は、銀行代理業の登録は不要となる場合もあるとされています(金融庁「主要行等向けの総合的な監督指針 令和元年9月」VIII -3-2-1-1(3))。

イ.商品案内チラシ・パンフレット・契約申込書等の単なる配布・交付
ロ.契約申込書及びその添付書類等の受領・回収
ハ.金融商品説明会における一般的な銀行取扱商品の仕組み・活用法等についての説明

ただ、新規ビジネスを行おうとする場合、この基準を満たしているのか、判断に迷うことも多いです。

「ここまで踏み込めたほうが顧客に分かりやすさ、利便性を提供できる」というビジネス上の要望があったとしても、許可・登録なく行うにはリスクがあるとして、踏み込むことを避けざるを得ないこともあります。

今回新設が検討されている制度では、新たな「金融サービス仲介業」の許可・登録を受けさえすれば、銀行、証券、保険すべてのサービスを取り扱うことができ、また所属に拘束されず複数社のサービスを勧誘できることができるようになりそうです。

ウェブ上での金融サービスなどで、金融サービスの紹介を自由度高く行うことができるようになることが期待されます。

今後の検討課題

今後の課題として、次のような事項をさらに検討していくことになりそうです。

(1) 「金融サービス仲介業」として顧客に紹介できる商品の種類
投資性の高いデリバティブ預金、変額保険などは対象外とすべきか
(2) どの程度の「財産的基礎」を必須とするか
顧客からの賠償リスクに備えて、「金融サービス仲介業」の許可・登録を受ける者に一定額の供託義務を課すべきか

おそらく年末を目標に報告書を公表するべく、11月、12月で議論や各種団体の調整を進めていくのだと思います。

既存の業態との調整も必要なので、それなりに大変だと思いますが、とかく分かりにくい、とっつきにくいという印象を持たれがちな金融サービスの理解が幅広い世代に広まっていくきっかけになるような制度になるといいなと思います。

いきなり第3回の記事から始めましたが

第1回、第2回の決済サービスの回も傍聴してます。

ワーキンググループの議論の状況も見ながら、よきタイミングで記事化していきたいと思います!

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