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拝啓、チバユウスケ様

あなたがこの世界から居なくなったと知り、驚いています。あなたはお若いでしょう、この世界で音楽を奏でてくださることが、まだまだ続くと思っていました。それが当たり前だと思っていました。

昨日は、実感が沸かぬままひとり会議室で「暴かれた世界」を聞きました。多くの人が「世界の終わり」を聞いていると思いますが、私はなぜかこの曲を選んでいました。

あなたはとてもロックンロールで、甘くロマンチックで、私の青春でした。

最初の出会いは、某国ロシアのタトゥー事変。翌日にはあなたがたの話題で持ちきりだったのをよく覚えています。

TMGEに心酔したきっかけは、映画「青い春」です。松田龍平さん演じる九條の陰鬱としたどこにもはけ口のない高校生活と不安しかないその先の未来と、TMGEの楽曲が見事にマッチしていました。『ブギー』のギターリフが頭から離れなくなり、心の土台がじわじわとTMGEの色に塗り替えられるような、そんな感覚に陥りみるみる虜になっていきました。

哀しいことに、TMGEはその頃既に解散してしまっていたけれど。

それ以来、しばらくはTMGEばかりを聞いていました。今はなきレンタルビデオショップTSUTAYAでTMGEとROSSOのアルバムをすべて借り、貪るように聞きました。(買ってなくてごめん…)

あなたの事が知りたくて、ネットや雑誌でインタビューや伝説めいたエピソードを片っ端から読みふけっていました。(奥様との結婚の決め手は、酔ったあなたの吐瀉物を素手で受け止めたから、というエピソードは素敵だと思っていました。当時は。)

そして念願のフェスライブでの対面。その時はROSSOというバンドを組んでいましたね。「ハロー」と「センキュー」しか喋らなかったあなたには本当に頭の先からつま先まで痺れました。この時に買ったROSSOのリストバンドは、もう絶対に捨てられません。
奇しくも、今年そのフェスに行きました。25周年記念ということで歴代ポスターが飾ってあり、あの時を懐かしく思い出していました。
本件含め、今年はあなたを思い出すことが多かったように思います。

チバと初対面したRUSH BALL2005



あなたのように格好良くなりたくて、歌詞を熟読し覚え、言葉選びや言い回しをちょっと真似したり、「ロックはスーツか革ジャン」というあなたの名言をモットーにスーツ着用時はあなたの音楽を聞いて士気を上げたりしていました。

メールアドレスを「sabrina.no.heaven」にしていました(今は違います)。

衝動的に高瀬川の桜を見に行ったら、TMGEラストライブの写真展最終日に偶然出会いました。流石に運命だろと思いました。

こんな風に、私にはあなたとの思い出が沢山あります。ライブでしか会ったことはないけれど、あなたの存在は私のアイデンティティを構成する重要な要素でした。あなたと出会っていなければ、ジャパニーズロックが格好いいことや、恰好いいとは何たるか、甘さと恰好良さが共存する甘美な世界を、知らなかったことでしょう。

あなたに夢中になっていた時期の日記(mixi)を見返しました。当時の私は、ひたすらにあなたのことが大好きで大好きでたまらない様子でした。幼い文体が恥ずかしいですが、あなたへ憧れる思いが溢れていて微笑ましかったです。こんなに早く別れの日がくるなんて、思っていなかったでしょうね。

日記にこんなことが書いてありました。

「一番好きな曲は、難しいけど『暴かれた世界』かなあ」

ああ、私は変わっていませんね。

一番好きな曲を聞いて、あなたに思いを馳せたかったんだな、私は。

アベフトシは元気にやってますか。
こんなに急がなくても良かったじゃないですか。
本当に居なくなったんですか?悪い冗談だって言ってくださいよ。淋しいし哀しいですよ。

しかし私もあなたの最新動向は追えてませんでした。だから、あなたをこの世界に繋ぎ止める資格はないかも知れませんね。

でも、あなたへの想いは嘘ではありません。あなたの生み出す音楽やあなた自身に胸を焦がし、その経験は今の私を形成しています。だからこの淋しさや哀しみも、嘘ではないのです。だから、資格はなくても少しくらいは、呟かせてください。

最後に、このこともあなたに報告したいです。昨日久しぶりに古い友人に連絡しました、あなたのことで。短いやりとりでしたが、哀しみを共有する中で「私がチバさんが好きなのは姐さんの影響ですから」と言ってもらい、なんだか嬉しくなりました。

ありがとう、チバさん。
私の青春でした。
ありがとう。

またどこかで、お会いしましょう。

解散ライブ写真展にて

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